浅田真央選手のソチ五輪 感動を読者と共有し、ブランディングを展開

 2011年よりブランドアンバサダーとして浅田真央選手を起用しているエアウィーヴ。ソチ五輪の際、浅田選手への応援メッセージとともに、製品ブランディングを各メディアで展開した。朝日新聞デジタルの特設ページ「浅田真央 ラストダンス」にも同社のCMを掲出し大きな反響を呼んだ。今回のキャンペーンについて、エアウィーヴ 代表取締役社長の高岡本州氏に聞いた。

浅田選手のフリー演技 現地で受けた感動を広告で表現

高岡本州氏 高岡本州氏

 マットレスパッドを製造・販売する当社のブランド戦略としては、実際に製品を愛用している方々をブランドアンバサダーに起用し、彼らの姿を通じて、製品の良さを伝えていくことを柱にしています。寝起き感の良さを重視して開発しているのですが、製品の性格上、消費者が購入する前に売り場で実際に寝てもらうことはできないからです。

 睡眠を重視するアスリートに実際に当社製品を試してもらい、評価が高いことがわかりました。そこで浅田真央選手はじめアスリートの頂点にいるオリンピック選手にブランドアンバサダーを依頼してきました。浅田選手とエアウィーヴの出会いは2009年。睡眠に強いこだわりをお持ちだったことが印象に残っています。

 私は今回ソチ五輪の会場まで足を運び、浅田選手に声援を送ってきました。競技前から朝日新聞を活用した広告キャンペーンを準備し、フリー競技翌日の朝刊に広告を掲載する計画も進めていました。事前にコピーやデザインを決めておき、フリーの演技が終了次第、浅田選手の写真を入れ込むだけで済むようシミュレーションしました。

2014年2月22日付 朝刊 全5段 2014年2月22日付 朝刊 全5段

 ところが、ショートプログラムの成績がふるわず、フリーの結果がいったいどうなるのか、不安がよぎりました。そしてフリー当日。浅田選手の演技は観客を魅了し、私の感想はとにかく一言、「感動をありがとう!」でした。演技を終えた後の表情がとても印象的で、「これしかない」と思い、直ちに「浅田真央選手、感動をありがとう!」のコピーと演技直後の写真を掲載することにしました。競技翌日の広告掲載は、スケジュール上、非常にタイトでしたが、興奮が冷めぬうちに多くの読者と感動を共有することができたと思います。

デジタルコンテンツともタイアップ 速報性と動画の持つ表現力を生かす

 朝日新聞デジタルでは、浅田選手を特集したページ「浅田真央 ラストダンス」に、15秒動画CMを掲出しました。「ラストダンス」は、浅田選手を丁寧に取材していた朝日新聞だからこそ実現したクオリティーの高いコンテンツです。表情が素晴らしい彼女の魅力をうまく伝えていました。デジタルの強みは動画を入れられることで、紙面と併せて立体的な展開が可能となりました。

 浅田選手の帰国後には、朝刊に全面広告を掲載しました。米国をはじめ国外5カ国のオリンピック委員会とスポンサー契約を結び、エアウィーヴを愛用している選手が世界に広がっていることも訴求ポイントに加えました。広告に使用した浅田選手の写真も、演技後の涙顔から笑顔のものに替え、両手を広げて声援に応えている姿にしました。エアウィーヴを世界へ広めていきたいという思いを込めています。

朝日新聞デジタル特設サイト「ラストダンス」 朝日新聞デジタル 特集ページ 「ラストダンス」
2014年3月5日付 全15段 2014年3月5日付 全15段

メディアの特性を駆使 今後の目標はグローバル展開

 メディアの使い方としては、まずテレビCMで広く製品のリコグニション(認知)を獲得し、さらに新聞広告で製品の機能について詳細や製品に込めるストーリーを紹介するという展開を進めています。また、デジタルでは即時性のある情報を配信し、詳細な製品情報を掲載している自社サイトへの誘導も期待しています。

 製品が認知されないと購入にはつながりませんが、重要なのは消費者にとって製品が関係性を持ち得るか、という点です。「浅田選手が使っている」という点から関心を持ち、新聞広告やウェブサイトで調べると、「いろんなところで使われている」とわかり、自分に近いところに存在していると「使ってみようかな」と思うようになる。多様な分野で活躍するアンバサダーを起用するのは、製品との関係性を消費者に近づけるためです。浅田さんはじめアンバサダーの皆さんは透明感があり、まじめで人格的にも生き方としてもすばらしい方ばかりです。

 今後は、グローバルでの認知度を高めていくことを目指していきます。ソチ五輪のメダリストの1/3がエアウィーヴを使用していたことが当社の調査で明らかになり、それをきちんと伝えていきたいと思います。坂東玉三郎さん、国立パリ・オペラ座バレエ学校の生徒たちを起用した広告展開も始めており、人々に感動を届けるアスリートや芸術家たちの姿を通じ、ブランド価値を伝え続けていきたいですね。

高岡 本州(たかおか・もとくに)

エアウィーヴ 代表取締役社長

1960年愛知県生まれ。名古屋大学工学部卒。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。85年日本高圧電気入社。87年スタンフォード大学大学院経済システム工学科修士課程修了。98年日本高圧電気 代表取締役社長。04年中部化学機械製作所(現 エアウィーヴ)設立。07年ウィーヴァジャパン(現エアウィーヴ)代表取締役社長就任。