146年の歴史を持つ本国版のDNAを踏襲 新しい「大人のモード誌」を創刊

 米国で最も歴史のあるモード誌『ハーパーズ バザー』が9月20日、日本でも創刊された。国際的なモード誌が日本市場に打って出る。その編集方針について、編集長の森 明子氏に聞いた。

年齢を重ねても変わらない好みや 普遍的な価値を伝えるメディアに

2013年9月20日付 朝刊 2013年9月20日付 朝刊

――創刊の背景、経緯を聞かせてください。

 2011年7月、当社が米国のハースト社の傘下に入ったのをきっかけに、同社が刊行するタイトルを日本でも発行しようと、新プロジェクトが発足。そのうちの一誌が『ハーパーズ バザー』でした。同誌は1867年に米国で創刊、世界で最も歴史のあるモード誌です。実は2000年から10年間、日本でも発行されていましたが、ライセンスビジネスとしての展開でした。今回はハーストとしてあらためて創刊することになったのです。

 新プロジェクトの責任者になり、ラグジュアリーブランド、百貨店、代理店の方々に会い、消費動向などについてリサーチをしました。各方面に取材をしていくうちに、『ハーパーズ バザー』には根強い応援団がいることもわかりました。
『ハーパーズ バザー』は本国ではもちろん、各国で成功しています。同誌のDNAをしっかり踏襲した編集を、本国との密接な連携で実践する方針を決め、9月20日の創刊が決まりました。

――コンセプトはどのようなものですか。

 「大人のための本格派モード誌」。これがコンセプトです。大人のモード、そしてそれを作り上げているブランドやデザイナーを、きっちりと伝える媒体を目指しています。ターゲットも、年齢でセグメントするのではなく、感性や求めるものが合っていれば実年齢は問いません。

 象徴的なのが、本国版で長く続く「Fabulous at every age」という企画。20代から70代まで、実際にその年齢の女性のファッションを取り上げるおしゃれ研究です。これは、他の女性誌やモード誌ではなかなか見られないページです。年齢とともに置かれているオケージョン(状況)や社会から期待されることは変化しますが、好みや本質的な価値観は何歳になっても変わらない。それは、私自身が年齢を重ねてきて感じていたこともありますが、実はラグジュアリーブランドの方からも「普遍的なバリューをストレートに伝えられるメディアやスポークスパーソンが必要だ」という声が多かった。暦の年齢にはとらわれず、女性が自分らしく美しくなることをバックアップしていきたい。その思いも、編集の大きな軸になっています。

 また、『ハーパーズ バザー』は新しい才能を発掘することにも力を入れていて、世界的に活躍するデザイナーやフォトグラファーも多く輩出しています。創刊号でもデザイナーとフォトグラファーとのセッションや、話題のデザイナーを取り上げた読みごたえのある記事などを充実させました。

ますます厳しくなる読者の「選択眼」その姿をとらえながら時代性を発信していく

森明子氏 森 明子氏

――朝日新聞で、創刊を大々的に宣言しました。

 創刊の宣言に新聞は欠かせない、と思っていました。理由は二つあります。
一つは、新聞という媒体のバリューを知り、その中で朝日新聞を選んで読んでいる読者と、『ハーパーズ バザー』を読む読者とは、共通している点が多いと感じたからです。もう一つは、広告会社やクライアントの担当者が、新しく創刊する雑誌をどの媒体でチェックするかを考えた時に、新聞、それも朝日新聞だろう、と。

――今後の展望について聞かせてください。

 創刊号は、売り上げ、反響とも順調な滑り出しと見ています。意外だったのは、想定していたよりも購読者の年齢層が幅広く、20代の若い読者も多かったことです。「かっこいい」と感じてくれたこともあるようですが、自分たちが読みたい雑誌がない、物足りないと感じている状況もあるととらえています。

 「雑誌が厳しい」と言われていますが、単なる売り上げだけではなく、それはユーザーが雑誌に求めるものが厳しくなっている、という側面があると思います。また、ウェブメディアの普及によって、ウェブで済むことと紙の媒体でなければならないことの選択眼が非常に厳しくなってもいる。雑誌はなくならないと思いますが、雑誌で成功するためには、5年前、10年前の努力では通用しない。私たち作る側も、販売する側も、努力と知恵が必要になってきます。今後もマーケティングなどで読者の姿やニーズをとらえつつ、『ハーパーズ バザー』ならではの大人のモード、時代を作り上げるクリエーションを発信していきたいと思っています。

森明子(もり・あきこ)

ハースト婦人画報社 ハーパーズ バザー 総編集長

『WWDジャパン』を経て『フィガロジャポン』創刊に副編集長として携わる。『エル・ジャポン』編集長を15年務める。その間『エル・ガール』『エル・マリアージュ』の創刊を手掛ける。2013年から現職。

◆ハーパーズ バザー: http://harpersbazaar.jp/
◆ハーパーズ バザー公式フェイスブック: https://www.facebook.com/HarpersBazaarJapan