豊富なアメリカ、アジア、リゾート路線を武器に「ネットワーク、プロダクト、サービス」の充実を訴求

 66カ国358都市に運航している、世界最大級のネットワークを擁するデルタ航空。来年2月には、羽田空港から米2都市に就航する。激動の航空業界においてどのような戦略に打って出るのか、同社日本地区コンシューマー・マーケティング部部長の三好敏文氏に聞いた。

質の高いサービスを提供し「選ばれる航空会社」を目指す

三好敏文氏 三好敏文氏

――「羽田空港国際化」に対する戦略と具体的な展開について聞かせてください。

 来年2月20日に羽田空港から米・デトロイト、翌21日からロサンゼルスに毎日2便、就航します。米系の航空会社として本土2都市に飛ばすのは弊社だけになります。いずれの都市もすでに成田からの便があり、ビジネスおよびレジャー目的のお客さまから非常に好評ですが、さらに羽田-ロサンゼルス便は午前1時という出発時間を有効活用して、より効率的にご出張に出かけていただくこともできます。

 これまで通り成田空港をハブとしたオペレーションを中心に展開していきますが、羽田からの就航便を、さらにお客さまの利便性を高めるオプションとして位置づけています。ロケーションや時間帯、お客さまのニーズに合わせて、より多くの選択肢をご提供することを目指しており、羽田からの就航便が加わることが弊社にとってはさらなる「強み」になるととらえています。

――航空自由化などで、業界は今後、大きく変動することが予想されます。そうした潮流をどう受け止めていますか。

 話題のひとつに、格安航空会社(LCC)の参入があります。アメリでは飛行機が“バス感覚”で利用されるなど「身近な交通手段」として位置づけされていますが、日本では、特に海外へのフライトにはまだ特別感を持たれているように感じています。日本のお客さまは、価格と質・サービスが比例していると考える傾向があるので、LCCがそこに向けてどのような手を打ち出していくのかは注目していきたいです。いずれにしても、競争の時代に突入し、選ばれない航空会社は淘汰(とうた)されていくだろうと、個人的には見ています。

 デルタ航空としては、LCCと目指すところが違うととらえています。弊社は幅広いネットワークをはじめ、プロダクト、サービスなどに業界をリードしており、今後もさらなる投資をしていくことが決まっています。お客さまに提供するサービスの質をさらに向上させていくことで、低価格で売るLCCとは差別化を図っていく考えです。

 また、航空会社がコードシェア便やマイレージプログラムなどで連携する「アライアンス」も、お客さまが航空会社を選ぶ大きな基準となっています。デルタ航空を含め13社が加盟する「スカイチーム」は、国内の航空会社を擁していませんが、日米路線ならば当社単体でのシェア、便数でも他アライアンスに引けをとっていません。ですから、スカイチームの中では私たちが日本をはじめとするアジア市場をけん引していくポジションという意識を持っています。「国内の航空会社だから選ぶ」のではなく、「サービス、マイレージ、プログラム、ネットワークがいいから選ぶ」と言っていただけるよう、日本のお客さまの考え方をさらに重視していきたいと考えています。

日本での認知度を高めるブランドキャンペーンを展開

――広告展開について聞かせてください。

 羽田空港の国際線旅客ターミナルオープンは、羽田から就航便を飛ばす航空会社としては記念すべきことです。そこで、大きな広告展開をしたいと考え、オープン当日の10月21日には朝日新聞の羽田空港広告特集に出稿しました。アメリカ本土2都市への就航の詳細をはじめ、ビジネスクラスのシートや機内食、マイレージプログラムなど、デルタ航空の魅力をお伝えしました。クリエーティブは朝日新聞で作成していただいたものでしたが、訴求したいポイントがコンパクトにまとめられており、社内でもとても好評でした。

 12月からは大々的なブランドキャンペーンを展開しています。キャッチフレーズは「Keep Climbing」。「上昇し続ける」という意味で、デルタ航空が継続的にネットワーク、プロダクト、サービスの拡充に努めていくという姿勢を表現しています。ひと足先に11月30日から東京・六本木ヒルズのメトロハットにおいて広告を展開、12月中旬から新聞、雑誌、オンライン、交通広告や屋外広告などで順次実施しています。9月にアメリカで始まったキャンペーンで、日本での実施を経て、来年以降グローバルに展開していきます。日本は弊社にとって大変重要なマーケットで、実際、米国系航空会社では最多の日本発着便を運航しているものの、まだ「デルタ航空」という社名の認知度は高くないというのが実情です。今回を機に改めてブランディングに力を入れ、認知向上やイメージアップを進めていきたいと思っています。

2010年10月21日付 朝刊 デルタ航空 2010年10月21日付 朝刊
2010年12月17日付 朝刊 デルタ航空 2010年12月17日付 朝刊

――様々なメディアがある中で、新聞広告に期待することは何でしょうか。

 10月の広告特集、12月からのキャンペーンでは全面広告で展開していますが、これだけの大きさでインパクトを持って見てもらえるのは新聞だけです。特に航空会社は飛行機のデザインやイメージが会社のブランドイメージに直結するので、ビジュアルに訴えかけたいという広告では、新聞は不可欠な媒体と考えています。

――今後の展望について聞かせてください。

 2月の羽田就航開始に向け、12月からのブランドキャンペーンに力を入れていく考えです。また、弊社のウェブサイトや電子メールなどのサポートメディアでも同じようなメッセージ性を持って、頻繁にコミュニケーションを図っていきます。まずはデルタ航空という航空会社を理解していただき、親近感をもってもらいたい。そして、本国との意識の共有も密にして、世界どこでも同じイメージを持ってもらえるようなグローバルな戦略につなげていきたいと考えています。