利便性の向上とサービスの質の高さを、リーチの広い新聞で訴求

 観光に、ビジネスに利用され、ハブ空港として全世界にネットワークを結ぶ香港国際空港。その香港に本社を置くキャセイパシフィック航空は、10月の羽田空港国際化に伴い、毎日2便の直行便を飛ばし、好評を得ている。同社日本支社マーケティング部部長の細川純代氏に聞いた。

グループ会社、アライアンスの連携でより利便性の高いネットワークを提供

細川純代氏 細川純代氏

――羽田からの就航便をはじめ、日本の発着便の動向について聞かせてください。

 当社が1959年、日本に初就航したのは羽田空港でした。今回の羽田の国際化で羽田―香港直行便を毎日2便飛ばすことになりましたが、私たちとしては「再就航」と位置づけ、当社にとってエポックになるうれしい出来事として喜んでいます。

 ほかにも、日本全国から香港へと結ぶ便を、このウインタースケジュールから週91便から120便にと、一気に拡大しました。羽田からのビジネス客が増えるだろうと予想して2便を増設するにあたり、成田便を毎日6便から5便へと変更し、東京から毎日7便体制で運航しています。

――羽田便が増えたことによる利用者のメリットは。

 利便性が何より高まったと思っています。羽田からの便は10時45分発と16時25分発があるので、夕方前に現地に到着したい場合や、午後も仕事をしてから出発したい場合など、スケジュールやニーズによって選んでいただくことができます。成田からの便も組み合わせれば、さらに便利に利用することが可能です。もともと成田からの便もビジネスユースのお客さまに好評でしたが、羽田便を合わせると東京-香港間を毎日7便、週49便運航していますので、ますます便利に使っていただけると見ています。

 また、香港では日本に旅行することがちょっとした“ブランド”になっていて、現地からの顧客の利用も非常に多いのです。東京や札幌だけでなく、福岡や沖縄、仙台などにも観光客が訪れています。日本通の間では避暑地の軽井沢、湯沢でスキーなども人気で、それらが東京から近いこともよく知られています。羽田に飛ぶことで、香港からの需要もさらに高まるだろうと見ています。

 利便性だけでなく、羽田-香港便は長距離用のジャンボ機が飛んでおり、ファーストクラス、ビジネスクラスはフルフラットになる心地よいシートでくつろいでいただけます。エコノミークラスもパーソナルスペースが確保できるよう開発されています。快適な旅へのニーズにも対応できるものと自負しています。

――航空自由化によって、格安航空会社(LCC)の参入なども話題になっています。

 LCCについては、経営モデルやサービスに対する考え方がまったく違うととらえています。実は、姉妹会社の香港ドラゴン航空がLCCと勘違いされる向きがあるのですが、違います。ドラゴン航空は中国17都市のほか、アジア、東南アジアの中小都市に飛んでいます。キャセイパシフィックは主要都市に飛んでいるので、お互いに補完し合い、香港をハブに乗り継ぎの利便性を高め合っています。グループ会社全体で実現するネットワークは圧倒的な強みですので、そこは前面に打ち出していきたいと考えています。

 さらに、LCCとの大きな違いは、やはりクオリティーの高いサービスです。出発前、到着後に食事やお酒を楽しんだり、リラックスしたりしていただく快適なラウンジが、香港の空港にはキャセイパシフィックと香港ドラゴン航空合わせて5つあり、大変好評です。当然、機内の設備やエンターテインメントを充実させ、すべてにおいてスタッフがぬくもりのある対応をさせていただく。旅全体の快適性という点でもLCCとの差別化を図り、そうしたサービスを享受したいと考えるお客さまを、しっかりとターゲティングしていきたいと考えています。

高品質なサービスを利用したい層に的確に訴求するコミュニケーションを

――朝日新聞に9月に2回、広告掲載しました。新聞広告をはじめ、コミュニケーション戦略について聞かせてください。

 9月28日の広告は、主に運賃についての告知広告ですが、香港をハブ空港として利用すると非常に利便性が高い、という弊社のネットワークの強さを訴求する目的もありました。また、オンライン予約をしていただくことで、非常に便利にスムーズに旅ができます。それを一度体験していただきたいと伝える狙いもありました。

 その10日前に出稿した広告のクリエーティブは、グローバルで展開している「People and Service」と呼ばれているコミュニケーションのテンプレートで、弊社スタッフが登場しています。プロダクトへの投資は当然行っていますが、それは他社も同様で、やはり一番差別化ができるのは「人」だろう、 と。そこで、キャセイパシフィックのスタッフが提供するぬくもりを感じてください、という意味を込めて作られたクリエーティブです。そのクリエーティブを使い、タイムリーなニュースである「羽田―香港便」を告知しました。

 グローバルでのキャンペーンは、当然海外の主要メディアでも展開するので、弊社便を頻繁に利用してくださる日本のお客さまが海外で目にする機会も多いと思います。そのとき重要なのは、日本で見る広告やメッセージの一貫性です。ローカルで展開するコミュニケーションについても、基本的にはグローバルのそれにきちんと沿う形で取り組んでいきたいと考えています。

2010年9月18日付 朝刊 キャセイパシフィック航空 2010年9月18日付 朝刊
2010年9月28日付 夕刊 キャセイパシフィック航空 2010年9月28日付 夕刊

――新聞広告に期待されることは。

 やはり「リーチ」です。たとえば羽田国際化の話題は、地方に住んでいるお客さまにもぜひ知っていただきたいことです。私は福井出身なのですが、地元には空港がないので、両親が海外旅行をするときなどは、成田より近い関空か名古屋のセントレア空港まで出ることになります。前の晩に泊まったり、午後便しか使えなかったりするなど、大変な行程です。今回の羽田国際化によって、最寄りの小松空港を朝の便で発ち、羽田でスムーズに乗り換えれば、大変便利に海外に行けるようになりました。こうしたアクセスが不便な地方から非常に期待されているので、より多くの人に知ってもらいたい。そういうときには、やはり新聞広告が一番力を発揮するととらえています。

 また、当社のクオリティーサービスに対してニーズがある層と、新聞の読者層は、比較的重なっているように思います。的確なターゲティングも、新聞を利用するねらいのひとつですね。

――今後の展望について聞かせてください。

 さきほどグループ会社によってネットワークや利便性を高めていきたいとお話しましたが、今後は、さらにアライアンスの連携が強まっていく時代になっていきます。アライアンスで手を組み、利便性を補完し合いながら大きな将来像を描いていきたいと考えています。

 香港をハブ空港としてワールドワイドに広がっていくことは引き続き訴求しますが、日本支社としては来年以降、香港の観光キャンペーンに改めて取り組んでいきたいと考えています。広告だけでなく、PRにも力を入れ、香港の露出を増やし、魅力をお伝えしたい。政府観光局などとも協力しながら盛り上げていきたいですね。