潜在的な悩みをとらえ薬の提供を超えた情報サポートを

 がん治療における医療情報発信の現状について、アストラゼネカのオンコロジー事業本部長・桂淳取締役にお話をうかがった。

桂 淳氏 桂 淳氏

── がんに対する生活者の意識変化は。

 今や2人に1人ががんになる時代。インフォームド・コンセントの定着などもあり、以前よりも身近な疾患として認識されている印象です。

── 医療情報の発信について。

 オンコロジー(がん)領域のリーディングカンパニーである当社は、がんになっても、希望と、あたりまえの生活ができる社会の実現に貢献したいと考えています。そのためには、患者さんや家族、医師など、がんに関わるすべての方々のリテラシー向上に貢献する情報が必要だと強く感じています。

 がんに対する認識も変わってきたとはいえ、まだまだ医師とのコミュニケーションの取り方が万全でなかったり、がんの苦しみを家族が十分に理解できなかったりと、依然として情報は不足しがちです。そこで、「正しく病気を知る」「病気の悩みを共有する」ことで、患者さんとその家族に安心感を持っていただこうと、情報を発信しています。

 例えば、乳がんの患者さんの「自分の病気を小さな子どもにどう説明すればよいのか」や「治療後の性生活とどう向き合えばよいのか」といった、医師にも相談しづらい悩みのヒントになる冊子を作成しています。患者さんにとって、どんな情報が不足しているかを的確にとらえ、薬の提供を超えたところにまで関与できるのも、長年日本のがん治療に携わっている当社の強みです。

2007年 12/26 朝刊 2007年 12/26 朝刊

 また、広く一般市民に向けてがんフォーラムを開催しています。後日、新聞採録紙面でその模様を紹介するのですが、会場に来られなかった多くの方々にも我々の思いをじっくり伝える、対話できる媒体として役立っています。

 このように広く情報発信できるマスメディアを始め、詳細情報を発信できるウェブや冊子、さらには、人と人をリアルなコミュニケーションでつなぐMR(医療情報担当者)、それぞれをミックスすることによる相乗効果には大きいものがあります。新聞紙面をきっかけに医師とMRの会話がはずみ、そこで得られた情報をウェブや冊子に反映、さらにその情報を生活者が受け取るなど、好循環が生まれています。

── 今後のコミュニケーションの方向性は。

 患者さんの潜在的なニーズを解決できるコンテンツを提供していくことです。新薬開発のみならず、医療現場ではできない部分を補っていくことこそが、リーディングカンパニーとしての当社の責務なのです。