立教大学と取り組む最先端のICT教育を記事体でアピール

 日本ヒューレット・パッカードは、2014年4月30日付の朝日新聞朝刊に、立教大学経営学部と共同で展開しているICT教育(情報通信技術を活用した教育)を紹介する全15段広告を掲載した。背景には、世界で活躍できる次世代のリーダーを育てたい、ICTによって教育に変革を起こしたいという、同社の強い思いがある。

日本のリーダーシップ教育を強化したい 3年にわたる取り組みに手応え

甲斐博一氏 甲斐博一氏

 日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)は、「テクノロジーの力で、より便利で豊かな環境を提供する」ことを掲げる、世界最大のIT企業の一つだ。プリンティング、PC、タブレットなどデバイスから、ワークステーションや、サーバー、アプリケーション構築などITインフラに至るまで幅広いポートフォリオを提供している。

 同社は2012年から立教大学経営学部とパートナーシップを組み、同学部のコア・カリキュラム「ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)」に協力している。このプログラムはグローバルで活躍できる人材の養成を目的とし、4年間を通じて真のリーダーシップについて段階的、体験的に学ぶ。

 産学連携の教育プログラムに協力しようと考えた背景について、プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括PPSマーケティング部の甲斐博一氏は次のように話す。
  「以前から日本のリーダーシップ教育に疑問を抱いていたのですが、日本はもちろん先進各国においても、本当に社会で通用するリーダーシップ教育に本格的に力を入れている大学はなかなかありません。その中で、立教大学経営学部の日向野幹也教授が唱える『権限なきリーダーシップ』という考え方に非常に感銘を受けました。
  これまで日本企業で重用されてきたトップダウン型のリーダーシップは、一つの価値観で人々をまとめ上げる『大量生産・大量消費時代』では有効でした。しかし、新しい価値創造が求められる現代では、自分の責任範囲にとどまらず、部署や組織、業界を横断して、多様な価値観、スキルを持つ人々と上手にコラボレーションしなければ、イノベーションは生まれにくくなっています。そんな中で求められるリーダーシップの形態が大きく変わってきていると感じていたのです。もちろん、採用活動のためにIT業界や同社に興味を持つ学生を増やしたい、あるいはビジネス面で当社のデバイスのファンを増やしたいという目的もありました」

2014年4月30日付 朝刊 全15段 2014年4月30日付 朝刊 全15段

 この広告で紹介したのは、4月5日に東京ビッグサイトで行われた「ウェルカムキャンプ」の模様だ。これは経営学部の新入生約400人が参加する合宿形式の授業で、パートナー企業が出題する課題にグループワークで挑む。
  日本HPが出題したのは、「大学生がタブレットを欲しくなるような、新しい使い方を考えてください」という課題。4~5人ずつの班に分かれて2時間にわたって議論を交わし、プレゼンテーションを行う。選考の結果、最も優秀なアイデアを提案した班が表彰された。

 授業では同社のデバイスをフル活用。スチューデント・アシスタント(SA/注)役の上級生には、米軍基準をクリアした堅牢性の高いタブレット端末「HP ElitePad 900」が一台ずつ渡された。また、世界最速カラーデスクトップ・プリンター「HP Officejet Pro X576dw」を駆使して、わずか30分ほどで400人分2,400枚の資料が印刷された。
「セキュリティー(安全性)、マネジャビリティー(管理しやすさ)、そしてモビリティー(機動性)の面で圧倒的な強みを持つ当社のテクノロジーによって、これからの時代に通用するグローバルリーダーの育成に貢献したいと思っています」(甲斐氏)

日本HPのテクノロジーが授業を劇的に変える

 商品やそのスペックを前面に打ち出したビジュアル主体の広告ではなく、あえて記事体広告でこうした取り組みを取り上げた理由について甲斐氏は、
「テクノロジーが教育の劇的な変化をリードできるということを、教育関係者や生徒たちに伝えたかった。ICT教育の重要性が叫ばれて久しいですが、デバイスを導入しただけで満足しているケースが多いのが実情です。教師や生徒がデバイスを使いこなし、教育の現場に大きな変革を巻き起こしてこそ、ICTの意義があります」という。

 実際に授業では、それを運用するSA自身から、
「授業中に作成した手書きの模造紙をタブレット搭載のカメラで撮影」
「それをブルートゥースでつないだプロジェクターへ即座に転送して投影」
「プレゼンテーションしながらタッチペンでメモを書き込み」
「その場でモバイルプリンティングをして参加者に配布」など、
生徒やSAによって、これまでにないデバイスの活用方法が次々と編み出された。
そこで広告では、テキストでBLPの内容やデバイスの使用感を伝えたほか、写真とキャプションで授業風景や授業で生まれたデバイスの新たな活用法を、臨場感を持って伝えた。

 この取り組みを始めてから3年、1期生が3年生になって就職活動をするようになり、立教大学から同社への応募は4倍以上に増えた。広告紙面を経営学部の新入生全員に配布したところ、父兄から「朝日新聞に掲載されるような、最先端の教育をしてくれる大学に入れてよかった」という評判も多数聞かれたという。

 甲斐氏は新聞広告に感じる価値として、保存性と信頼性を挙げる。
「紙という形があり、保存できることは信頼性につながります。それが広告の影響力を増大させるのです。今回、朝日新聞というブランドを活用したことによって、当社のバリューも高まりました。教育に関する問題意識が高く、数々の特集を組んでいる朝日新聞はICTを広めるために最適。これは他のメディアではできないことです」
  今後、教育を多角的な側面でとらえる記事やICTの事例を掲載して、教育改革について周知してほしいと、甲斐氏は期待を寄せる。

(注)スチューデント・アシスタント=BLPの各授業で教員を補佐している学生