水兵、リーベ、僕の船――。
元素周期をそんな語呂合わせで覚えた記憶のある人は少なくないだろう。理系が得意でないと「元素」と言われてもピンとこないかもしれないが、身の回りのあらゆるものは元素が集まってできている。人間の体も例外ではない。
そんな元素の面白さを楽しみながら体験できるイベント、特別展「元素のふしぎ」が、7月21日から東京・上野の国立科学博物館で開催されている。特別協賛の東京エレクトロンはこのイベントに関連した広告を、朝日新聞に4月から4カ月にわたって掲載した。全30段広告に、テレビ面の小型広告シリーズを切り取って貼り付ける企画は、読者の強い関心を集めている。
小型広告の「元素カード」を全30段の大型広告に貼り
「マイ元素周期表」を作り上げる
「当社は半導体製造装置を開発・製造、販売するB to B企業ですが、実寸大の会社の姿を知ってもらうために一般消費者とのコミュニケーションの必要性を感じ、どんなコンテンツが最適かを検討していたところ、イベント協賛の話が持ち上がりました」
そう話すのは、東京エレクトロン コーポレートブランド推進室室長の安原もゆる氏。さらに、このイベント協賛をきっかけに、イベントを主催する朝日新聞紙上での広告展開を実施した。4月から8月まで朝刊テレビ面に小型広告を不定期に出稿、毎回2種類の元素を、性質や用途をかわいらしいイラストとともに解説した。5月3日には全30段の「元素周期表」を掲載。テレビ欄に載った小型広告を切り取り、「元素カード」として周期表の同じ場所に貼り付ける、という仕掛けだ。
「予想以上というより、もはや『想定外』とも言える大きな反響に、驚くばかりでした」と、安原氏は相好を崩す。「見逃したので送ってほしい」「学校の授業の教材として使いたい」と、紙面の送付を請う問い合わせが殺到。8月末日現在で2,000件以上、送付紙面は4,000枚を超えた。急きょ特別サイトを立ち上げ、元素カードの更新情報を伝えるメルマガをスタート。このサイトから元素カードのダウンロードもできるようにした。また、台紙となる全30段の広告を見逃してしまった人などのために、返信用封筒を同封すれば紙面を送るなど細やかに対応した。さらに、過去に掲載された元素の広告が見たいという要望も多く、それに応えるため、掲載済みの元素を集めた全7段広告を追加出稿した。
「『兄弟それぞれが自分の周期表を仕上げたい、と競っています』『全部貼ったものを孫にプレゼントしたい』などメッセージやエピソードが書いてあったり、広告に登場する「げんそ博士」のイラストが描かれていたりと、周期表作りを楽しんでくれている様子が伝わってきて、うれしかったですね」(安原氏)
紙面を請求してきた人は、下は4歳から上は85歳。実に幅広い年齢層に届いていた。
新聞広告の反響からウェブ、ソーシャルメディアへ
時間を追うごとにコミュニケーションが進化した
「毎日配達される」「保存できる」「紙媒体なので切ったり貼ったりができる」という、新聞ならではの特性を最大限に活用した今回のコミュニケーション。さらに新聞広告から専用サイトでの情報発信にもつながった。広告の評判はツイッターやブログなどのソーシャルメディアでも広まった。
「当初はワンウェイコミュニケーションと考えていたものが、双方向で、かつ複数のメディア(新聞と自社サイト)での多面的な展開につながった。さらに、新聞広告ではそれらの反応や反響に合わせて、その都度、適切なメッセージを発信できた。出稿を続ける中で、読者とのコミュニケーションが日々進化していく過程を肌で感じられました」 また、長期間にわたって一般紙にシリーズ広告を出稿したことで、この取り組みが社員やその家族にも広く伝わり、インナー効果も高かったようだ。
今後の展望について聞いた。
「工夫さえすれば読者はしっかりと広告を読んでくれる、と今回の取り組みを通じて実感することができました。この経験を生かし、今後も機会があれば当社が生活者により身近に感じてもらえるようなコミュニケーションを手掛けていきたい」
そして、最後にこう締めくくった。
「当社は日本で初めて半導体の製造装置を扱う専門商社からスタートして、ものづくり企業に成長した会社で、だれもやらなかったこと、考え付かないことに果敢に挑戦する姿勢にこだわってきました。コミュニケーションにおいても同じです。読者や生活者の皆さんが、びっくりしたりワクワクしたり楽しいと感じたり。これからも、そんな広告を展開していきたいですね」
特別展「元素のふしぎ」
- 開催期間
- 2012年7月21日(土)~10月8日(月・祝)
- 開催時間
- 午前9時~午後5時(金曜日は午後8時まで)
※入館は各閉館時刻の30分前まで - 休館日
- 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)
ただし、7月23日、7月30日、8月6日、8月13日、8月20日、8月27日、10月1日は開館 - 主催
- 国立科学博物館、朝日新聞社、TBS
- 特別協賛
- 東京エレクトロン
- 公式ウェブサイト
- http://www.tbs.co.jp/genso-ten/
朝刊 テレビ面小型 元素記号シリーズ 全59回