「幸せ感」のあるビジュアルで、最先端の家庭用燃料電池をアピール

 2009年、家庭から出るCO2排出量を抑えることのできる家庭用燃料電池「エネファーム」が、東京ガスより発売された。燃料電池は発電効率が高く、排気がクリーンで、アメリカNASAのスペースシャトルにも搭載されている最先端のエネルギー技術だ。同社は、ハウスメーカーと連携して広告活動を展開し、低炭素社会の実現に向けて「エネファーム」の普及に努めている。

エコに取り組むハウスメーカーとメッセージを共有

東京ガス 小林直樹氏 小林直樹氏

 「エネファーム」は、都市ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と化学反応させて電気をつくる。また、発電時に生まれる熱を有効活用し、給湯や暖房に利用できる画期的な装置だ。2008年3月に経済産業省が策定した「Cool Earth エネルギー革新技術計画」では、2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を現状の半分にする目標を達成するための「重点的に取り組むエネルギー革新技術」の一つにも選ばれた。

 エコに取り組むハウスメーカー各社の採用も進む中、2010年6月、朝日新聞紙上で積水ハウス、ミサワホーム、住友林業、大和ハウス工業、パナホームとのコラボレーション広告を展開した。

 「ハウスメーカーとの連動広告は今年2月にも出稿しましたが、各社の商品説明にかたより、肝心のエネファームの特徴を伝えきれなかったという反省点がありました。ハウスメーカーにエネファームをご採用いただき、そのお客さまに導入を検討していただくという販売の構図もあるので各社のアピールは不可欠ですが、一方、エネファームに対する一般の理解が進むこともハウスメーカーにとっては重要で、開発者として分かりやすく説明していかなければならないと考えました」 と語るのは、広報部広告グループ課長の小林直樹氏。

 商品特性として掲げたキーワードは、「ダブル発電」。エコ住宅というと、太陽光発電を最初に連想する人が多いかもしれないが、太陽光とガスを併せて活用したほうが経済性もCO2削減効果も高く、広告ではそれを強調した。展開したのは5日連続の全15段シリーズで、環境月間にあたる6月を選んだ。

 「新聞広告は説得力があり、短期間に連続して掲載することで、『そういえば昨日も見たな』と、読者の意識にとどまりやすい。大手ハウスメーカー各社に採用いただいている商品の信頼性を伝えるのにも適していると思いました。朝日新聞を利用したのは、メディアリテラシーを持った知識層の読者が多いイメージがあり、環境対策への関心も高いと期待したからです」

※画像は拡大します。

5日間連続で掲載された東京ガスとハウスメーカー各社の連動広告

2010年6月21日付 朝刊 東京ガス 2010年6月21日付 朝刊
2010年6月22日付 朝刊 東京ガス 2010年6月22日付 朝刊
2010年6月23日付 朝刊 東京ガス 2010年6月23日付 朝刊
2010年6月24日付 朝刊 東京ガス 2010年6月24日付 朝刊
2010年6月25日付 朝刊 東京ガス 2010年6月25日付 朝刊

「ダブル発電」のメリットを分かりやすく紹介

 シリーズ共通のキャッチコピーは、「ダブル発電の家。」。続くボディーコピーでは、エネファームの特徴を分かりやすく説明。さらに各ハウスメーカーのセールスポイントを紹介し、エネファームとの相性の良さをアピールした。

 「ビジュアルのポイントは、紙面を開いた時の『幸せ感』です。住宅購入や新築という人生の大きな出来事を『ダブル発電の家』で支えたいとの思いを、各世代の男女が笑顔で手をつなぎ、Wのマークを作っている姿で表しました。写真のロケーションは、『家の近所』を意識しています」

 出稿前には、広報部から営業担当者に広告のPDF原稿を発信し、営業現場と情報を共有。営業担当者から「ハウスメーカーとの話題づくりに役立てたい」「掲載紙を販促活動に活用したい」といった声が多く届いた。また、ハウスメーカーからは、「紙面をパネルにして住宅展示場に展示したい」「お客さまに商品の説明がしやすくなった」といった反響があった。とはいえ、300万円台の高額商品ということもあり、販売促進は容易ではない。実際に使用して快適な暮らしをしている人の声を届けたり、国の補助金制度があることを伝えたりするなど、購入を検討している人の背中を押すコミュニケーションを打ち出していく必要があると、小林氏は気を引き締める。

 「購買に結びつけるにはどうしたらいいか、B to BだけでなくB to Cまで意識し、効果的な宣伝方法を模索していくつもりです。朝日新聞読者の反響も大いに参考にし、今後の活動に生かしていきたいですね」