「詰め替えの日」をいつか当たり前に 高品質・適正価格を守るちふれの挑戦

 「6月25日は、詰め替えの日。」と打ち出し、同日に朝日新聞朝刊に広告を出稿したちふれ化粧品。今でこそ詰め替え化粧品を展開するブランドは珍しくないが、同社が日本で初めて詰め替え化粧品を世に送り出したのは、実に43年前の6月25日だった。正式に記念日として登録してからは、4年目。今後も長く周知活動を続ける意向だ。

価格維持のために生まれた詰め替えの発想

2017年6月25日付 朝刊2.0MB

 いつもと変わらない朝、家族で食事を終えたテーブルを片付けて、ひと息。窓を開けて外の空気を入れたら、買っておいた詰替用の化粧水をボトルへ移し替え。さあ、出かける支度をしなきゃ、そんなストーリーが浮かびそうな、等身大がすがすがしい印象のビジュアルに、大きく添えられた「6月25日は、詰め替えの日。」の言葉。ちふれ化粧品が出稿した、詰め替えの日が記念日に認定されて4回目となる新聞広告だ。

 「今回の広告には、詰め替え化粧品が自然とお客様の生活の一部になっていくという願いを込めました」と、コミュニケーション推進本部宣伝広告部副部長の浅井哲也氏は話す。

 同社は1974年、詰め替え化粧品の販売を開始した。当時、化粧品の容器は使い捨てしかなかったが、そこへ日本で初めて詰め替えを提案したのだ。以後、詰め替えられる製品のバリエーションを着々と増やし、店頭を通して顧客へも浸透。40年目を迎えた2014年、6月25日を「詰め替えの日」として日本記念日協会に登録し、以降4回にわたり毎年新聞広告を出稿、またテレビCMも活用しながら周知と啓発に取り組んでいる。

 実際に、今では年間で同社の化粧水ボトル940万本分もの資源節約が実現している。ちなみに、この数値も大事なファクトとして、今年の新聞広告にしっかり記載されている。

 現在は省資源や環境への配慮という観点で語られることの多い詰め替え製品だが、同社が詰め替え化粧品を発売した1970年代は、まだそうした意識が日本にほとんどなかった時代だ。「化粧品を詰め替えるという発想は、あくまで『高品質なものを適正な価格で』という企業理念に基づいて生まれたものでした」と浅井氏。詰め替えを始める前年の1973年にオイルショックが起こり、容器の資源を入手するコストがかさむことが予想された。そこで、どうすれば値上げせず価格を維持できるかを検討した結果、編み出された解決策が「詰め替え」だったのだ。

 同社は元々、創業者の島田松雄氏が、欧米では1ドルで化粧品が販売されていることを目の当たりにし、日本でも安心で安全かつ高品質だが価格を押さえた「100円化粧品」を展開したのが事業の発端となっている。その後、消費者団体「全国地域婦人団体連絡協議会」が、消費者にとって適正な品質と価格だと「100円化粧品」に賛同し、ちふれ化粧品という名称で会員への販売を開始した。これがちふれブランドの原点だ。

 「高品質・適正価格という考えは、昔も今も当社の活動のすべてに徹底しています。詰め替えもそうした方針から生まれたひとつの策でしたが、全国地域婦人団体連絡協議会自体には当時から省資源や環境意識が根づいていたので、詰め替え化粧品も自然と、環境への配慮を促す活動としても推進するようになった、という経緯があります」

キャンペーンタグラインを刷新、思いそのものが品質

浅井哲也氏

 以降、1990年代にかけて社会的に環境保護の意識が広がり、他のメーカーや他業種からも省資源の観点から詰め替え製品が販売されるようになった。いわば時代を先取りして詰め替え化粧品を推進してきたちふれブランドは、今では全製品の大半を占める41商品で詰替用を販売。化粧水などだけでなく、口紅のような他社がほとんど手掛けていない種類までカバーしている。浅井氏によると、製品の特性などからどうしても詰替用の販売が難しい商品もあるが、商品開発では基本的に、まずは詰替用とセットで考え始めているという。

 いいものを手ごろな価格でお求めいただき、かつ、お客様とともに環境保護にも寄与できれば。そんな同社の姿勢は、40年以上を通して着実に顧客に浸透している。「詰め替えの日に際した広告出稿は決して派手なものではないのですが、日々の広報活動と合わせて、当社の考えが伝わっているのだなと一定の手応えを感じています」

 広告に対する考え方も、極めて明確だ。過度に広告を出稿すると、その広告費は商品単価に跳ね返ってしまう。そのため同社では、長らく広告をほとんど出してこなかったが、2003年に「広告をしない『ちふれ』が広告をします。」とのメッセージを打ち出し、テレビCMの広告を開始した。

 「その頃までは、さほどネットの拡散力もありませんでしたし、知る人ぞ知るブランドという印象でした。でも、やはり私たちがずっと提供し続けてきた、手ごろな価格だが質は高いという商品をもっと多くの方に知ってもらいたい、知ってもらう必要があると思ったのです。会社として年間の広告費を決めて、その範囲内で展開することで、絶対に商品価格に影響しないようにしています」と浅井氏は強調する。

 それから現在まで、商品力とともにその企業姿勢でも、ファンを増やしてきた。来年のブランド誕生50周年を目前に、この春からキャンペーンのタグラインを刷新。「想いから、生まれた品質。ちふれ Since1968」と銘打っている。「単なるスペックとしての品質だけでなく、高品質・適正価格の商品を届けたいという思い自体も、私たちの考える品質の一部です。詰め替えの日の新聞広告は、打ち出し始めたばかりのこのタグラインの傘の下にもしっかりそぐう、一貫した姿勢を示せるものになりましたし、社内からもそうした声が上がっています」

 今後は、詰め替えの日を「バレンタインデーと同じくらい皆さんが当たり前に想起する日になれば」と浅井氏。「私たちの商品や取り組みを知っていただければ、必ず詰め替えの日も知っていただけると思うので、今後も事業活動と並行して、息の長い啓発活動を続けていきます」

3つのポイント

新聞社に期待したこと
新聞には信頼性があり、当社は他の化粧品メーカーと比べて特に顧客と信頼で結びついている部分が大きいと思っている。こうした当社の思いを知っていただく場として新聞は最適だと捉えており、今後もそうした場として活用したいと考えている。

朝日新聞のイメージ
広告を積極的に出稿していなかったころから、朝日新聞には記事として当社の環境への取り組みなどを非常に多く取り上げてもらっていた。その点から、当社との親和性が高い印象があり、また本質的にものを見極める目を持つ読者が多いと感じている。

コミュニケーション上の課題
事業において、「高品質・適正価格」、「積極的な情報開示」、「環境への配慮」という3つの柱を徹底しており、顧客にも「ちふれ=この3本柱」と想起いただけるような取り組みをしていきたい。ブランド50周年、その先に向けて、この活動を強化していく。