キャンペーンリポート

数理科学を応用した「変身立体」 ハートマークでステークホルダーの心をつかむ

明治大学

 志願者数が右肩上がりに増え、女子高生の「志願したい大学」ランキングトップ3にも入っている明治大学。かつての「バンカラ」なイメージから大きく変貌(へんぼう)を遂げた。その背景には、長年に渡る緻密(ちみつ)で戦略的な広告・広報活動の積み重ねがある。この冬、明治大学は受験シーズンに合わせ、3回にわたって朝日新聞朝刊に全15段広告を掲載した。

数理科学の研究を応用し、ロゴマークがハートに変身

 明治大学のロゴマークが、鏡の向こうではハート形に・・・・・・思わず「どうなっているの?」と目を凝らしてしまう全15段広告が、2017年12月16日の朝日新聞朝刊に掲載された。

2017年12月16日付 朝刊0.5MB

 これは「変身立体」という数理科学の研究技術を応用して、3D設計された立体を鏡に映し出したもの。とがった部分は丸みを帯び、全く違う形として映る。「Math Everywhere:数理科学する明治大学-モデリングによる現象の解明-」という事業だ。

丸山郁太郎氏

 明治大学 経営企画部 広報課 課長の丸山郁太郎氏は「この事業は2016年に私立大学の特色ある研究として、文部科学省の研究ブランディング事業に選定されました。2013年4月に創設された総合数理学部をはじめ、錯視や折り紙工学など数理科学の最先端研究を行っている先端数理科学インスティテュートを設立するなど、国内屈指の研究者がそろっています。受験生が進路を決める最後の三者面談が11月下旬から12月に行われるため、そこに合わせて大学の誇れるこの事業を広告ビジュアルにしようと考えました」と話す。

 「ロゴマークを鏡に映すとハートになる」というアイデアは、広報課スタッフと総合数理学部の杉原厚吉特任教授が考えたものだ。同課の森 直之氏は、「2016年同時期の新聞広告では、同心円の錯視技術を用いたビジュアルを掲載しました。そこで2017年も数理科学の原理を応用した人目をひく広告をつくれないかと頭をひねりました。ハートマークで親しみやすさや愛校心、愛情を持って授業をしていることなどを表現しています」と制作秘話を明かす。

森 直之氏

 撮影時はもちろん本物の立体を鏡に映しているが、平面である新聞広告で見ると、イラストやCGではないかと誤解されるリスクがある。そこで杉原教授の著書『だまし絵の描き方入門』を置いて錯視であることを強調したり、ライティングで影の落とし方を調節したりするなど本物だと気づかせる工夫を随所にちりばめた。

 より理解を深めてもらうべく、研究情報発信サイト「メイジネット」とも連携。サイト内に広告の種明かし動画や、その他の変身立体動画を多数掲載し、ステークホルダーの知的欲求を刺激した。「広告を見て、『もっと知りたい』と探究心を芽生えさせることが、研究と社会を結びつけるために必要だと思いました。そして、広告効果を最大化するため、ウェブとの連動を企画しました」(森氏)

「メイジネット」でも紹介している、広告の種明かし動画

 丸山氏は「一般的に新聞広告からウェブへ流入させるのは難しいと思っていましたが、この新聞広告からメイジネットへの流入が非常に多かった。2年連続で同じ時期にインパクトのある広告を展開すると、大学業界関係者の注目度も上がります。本学と数理科学を結びつけることができました。今後も毎年同じ時期に錯視技術を使った広告をシリーズ展開していきたいですね」と意欲的だ。


パブリシティにつながる「伝わる広告」を目指して

 2回目の広告はウェブ出願開始日である2018年1月4日に掲載された。地方出身の学生に、受験当時の自分へ手紙を書いてもらう仕立てだ。ウェブ出願を開始した2015年度から3年連続で広告出稿している。

2018年1月4日付 朝刊1.2MB

 その背景について丸山氏は「本学は『方言の聞こえる大学』と言われてきましたが、いまや約7割の学生が首都圏の出身。地方出身者の目線で本学の良さを語ってもらい、受験生やその親、進路指導の先生の共感につなげ、地方出身者の出願を促そうと考えました」と話す。

 紙面に登場する学生は男女半数ずつとし、全学部・全国各地から1人ずつピックアップ。男女比が約6:4と女子学生の比率が増えつつあることを鑑み、女子学生の親に安心してもらうため、「東京では最新鋭の設備で研究に没頭できる」「就職の明治と定評があり、充実したバックアップを受けられた」などを学生自身の言葉で伝えた。

 3回目は、センター試験初日の問題と回答が発表される1月14日に掲載。これまでの2回とは異なるトーンで、グローバルな課題に真摯(しんし)に取り組んでいることをアピールした。「センター試験は、一年で最も大学に注目が集まる日です。土屋学長のアイデアを具現化する形で、この日に強いメッセージを打ち出し、本学の世界的な取り組みを世間の方々に周知したいと考えました」(丸山氏)

2018年1月14日付 朝刊1.4MB

 ターゲットもコンセプトも異なる3回の広告展開を2年連続して行ったところ、「明治って理数系に強かったんだ」「最近、毎年こういう広告を掲載しているよね」と大学業界関係者からも評判がよく、狙い通りに伝わった手応えがあったという。

 明治大学では、組織的に戦略的な広報を行う仕組みを整備し、実行部隊として広報課が宣伝活動と広報活動を一気通貫で手がけ、広告ごとに緻密(ちみつ)な宣伝戦略を組み立てている。クリエーティブやキャッチコピーも広報課スタッフ自らアイデアを出し、課内や制作会社とミーティングを重ねて生み出している。結果、現場の思いや分析が色濃く反映されたクリエーティブになっているという。

 丸山氏は、「もはやMARCHなど従来の偏差値帯によるブランディングでは立ち行かなくなっています。受験生も建学の精神や大学の特色をしっかり見て、大学を選んでいる。目指すは『伝わる広告・伝わる広報』です。広告からパブリシティーへつなげることを強く意識しています」と話す。こうした攻めの広告・広報活動が奏功し、イメージ転換につながっているようだ。

 「ウェブとは違う、新聞広告だからこそできる表現があると思います。大学と社会をつなぐ重要なツールです」と森氏。丸山氏は「新聞広告は、手にとって見られる、回し読みできる、貼り付けられる簡便性があり、確実にターゲットへアプローチできる重要な媒体です。多様化し、加速する世の中の変化をキャッチアップして、今後も素早く対応した広告、広報戦略を立てていくつもりです」としめくくった。

3つのポイント

新聞社に期待したこと
よく読まれること。販売部数。広告の視認性の高さ。幅広い年代に広告を認知してもらうための手段。

朝日新聞のイメージ
教育やジャーナリズムに関心の高い知識層の読者が多い。本学が狙いたい読者がいると考えている。教育への知識や理解が深く信頼している。

コミュニケーション上の課題
本学のターゲットが見ている媒体が次々と多様化し変化する中で、いかにすばやく対応して媒体戦略を立てるか。

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