社会的意義のあるイベントへの協賛を通し SDGsに向けた取り組みを発信

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資源、製錬、材料の3事業をコアビジネスとする住友金属鉱山では長年、本業を通じたCSRを推進してきました。その活動は、そのままSDGsの17の目標につながるものです。そんな同社は朝日新聞が主催した「朝日地球会議2017」「大学SDGs ACTION! AWARDS」に協賛し、その取り組みを幅広いステークホルダーへと発信しました。

百年単位の視野が求められる 資源事業で培われたCSR活動

住友金属鉱山(SMM)のCSR重点6分野とSDGs

住友金属鉱山(SMM)のCSR重点6分野とSDGs

 住友金属鉱山の創業は1590年、京都で始まった銅製錬業が事業の興りだ。1691年には、愛媛で別子銅山の操業を始めた。地球の資源を開発する事業は、どうしても自然環境にダメージを与えることにつながってしまう。それだけに持続的な経営を行ううえで、自然環境や地域への配慮、取り組みが欠かせない。

 住友では、まだCSRという言葉もなかった明治時代に、製錬の燃料を得るために伐採して荒廃した山に大規模な植林をし、元の豊かな緑を復活させた実績がある。日本全国にある閉山した鉱山も、周辺環境に悪影響を与えないよう必要な設備投資を行い、今も管理し続けている。

 「鉱山開発は、百年単位の長いスパンで取り組まなくてはならない事業です。また特定の地域でしかできないので、その地域との共存共栄も不可欠です。よって私どもは、昔から今日でいうCSRにつながる地域や自然環境への貢献を、事業を通じて行ってきました」と取締役常務執行役員 経営企画部長の浅井宏行氏は語る。

浅井宏行氏

 同社では事業の多角化を進めるなか、1999年に子会社である茨城県東海村のJCOが臨界事故を起こした。その反省と教訓をもとに、『地球および社会との共存を図り、健全な企業活動を通じて社会への貢献とステークホルダーへの責任を果たし、より信頼される企業を目指す』との経営理念を定めた。

 「さらに『資源の有効活用』『環境保全』『地域貢献・社会貢献』『人権・人材の尊重』『安全・衛生の確保』『ステークホルダーとのコミュニケーション』の重点6分野を定め、本業を通じたCSRを推進してきました。事業がグローバル化するなか、その取り組みは、そのままSDGsの17のゴールと重なりあってきています」

 例えば、同社が世界で初めて成功し、フィリピンで取り組んでいる低品位ニッケル鉱の有効活用は、そのまま省資源や環境負荷の低減につながるものだ。そのうえで同社は、緑化活動、医師団派遣支援、飲料水供給活動など、地域のための社会貢献活動にも取り組んでいる。

2017年10月25日付 朝刊0.7MB

 昨年10月に朝日新聞社が主催した「朝日地球会議2017」は、そのような取り組みを発信するうえで絶好の機会だった。同社はこのイベントに協賛し、執行役員安全環境部長の貝掛敦氏が「SDGsと住友金属鉱山のCSR」と題して講演。合わせて「メタルで解く。」のキャッチコピーで、同社の事業の社会的意義を紹介する広告を掲載した。

 「我々はBtoB企業ということもあって、これまで一般の方に対して自分たちの取り組みを、それほど積極的には発信してきませんでした。それだけにこのイベントは、とても良い機会でした。イベント後、有識者や公的機関、メディアからの問い合わせが多く寄せられ、『自分たちの日頃の取り組みを世の中に伝えられてうれしかった』という社内の反響も大きかったですね」


幅広い層に届く新聞で業界の認知度を上げる

 今年の3月には、SDGsに貢献する学生や若手研究者らを応援するために朝日新聞社が創設した「大学 SDGs ACTION! AWARDS」にも協賛。このイベントでは浅井氏が、同社のCSRとSDGsへの取り組みを学生に向けて語った。

 「未来を担う若者たちの活動を応援する、大変意義深いイベントだと思い、協賛しました。非鉄金属業界の重要性や魅力について、学生にもっと知ってもらいたいとの思いもありました。おかげ様でたくさんの学生に当社への関心をもってもらえ、今でも何人かとメールのやりとりをしています。保護者や親戚の方々にも私たちの業界のことを理解していただくうえで、幅広い世代への発信力がある新聞は効果的だったと思います」

2018年2月18日付 朝刊

2018年3月28日付 朝刊1.1MB

 非鉄金属は社会や産業を支える重要な分野だが、その実情はあまり一般に知られていない。そのため学生の就職先としても、決して人気が高いとはいえない。そこで同社では昨年から、新聞広告やデジタルサイネージなどを使い、業界自体の認知度を高める取り組みも行っている。そのうえで新聞には、どのような役割を期待しているのか。

 「私どもは新聞を、ただ広告を載せるだけの媒体とは考えていません。単なる情報発信なら、今はネットをはじめいろいろなアプローチがあります。でも今回のアワードのように、様々な組織や人を巻き込んだ社会的意義のあるイベントの企画・運営は、新聞社だからこそできることです。このようなイベントは、私どもにとっても大変ありがたい。意義あるイベントに協力させてもらいつつ、我々の取り組みを自然なかたちで発信できるからです」

事業概況、CSR重点6分野の取り組みなどを毎年レポートする「統合報告書」

 同社では今後、SDGsを経営戦略の重要な軸と位置づけ、各部門が連携して取り組んでいく。社員一人ひとりが自分ごととするために、同社の事業やCSRの取り組みに精通している、一般財団法人CSOネットワーク理事の黒田かをり氏を招いて、社内講演会ものべ10数回開催した。2年前から制作している統合報告書ではSDGsの17の分野と、世界の資源メジャーが中心となって設立したICMM(国際金属・鉱業評議会)が目指す目標を関連づけて整理。今後のビジョンをより明確にした。

 「これからも住友グループが長年の歴史を通じて培ってきた事業精神に基づき、現在進めている6分野の活動をさらに推進することで、CSRをSDGsへと深化させていきます。さらにそのことを、各ステークホルダーへとしっかり伝えていきたいと思っています」