家にこそ、ほんとうにおいしいものを。読者を「婦人画報のお取り寄せ」WEBサイトへ誘う 幸福感溢れる新聞広告

 新時代の安寧を願い、迎春を祝うおせち。幸せを届ける究極のお取り寄せの数々。ハースト婦人画報社は2020年年末から2021年春にかけて、朝日新聞全国版朝刊に『婦人画報のお取り寄せ』の全15段広告を掲載した。美しい紙面をご記憶の方も多いだろう。企画掲載の意図や反響を同社B2C本部 ダイレクトマーケティング事業部 コンテンツ クリエイティブ担当の高村由紀子氏に伺った。

新聞広告の掲載後にWEBサイトへのアクセスが急増、反響の持続性を実感

高村氏高村氏

 婦人画報のお取り寄せは、雑誌「婦人画報」の編集部が見つけた知られざる名品を、実際に読者の方に届けたいという思いから、誌面企画のひとつとしてスタートした。その後、人気を博したことから、雑誌編集部とは別の組織としてお取り寄せを事業化。今年でサイトのオープンから10周年を迎える。

 取り扱う商品は、専任のバイヤーが全国の生産者や職人と交渉し、セレクトしたもの。通販ができるのは“婦人画報のお取り寄せのみ”というブランドも多数あり、この10年でグルメ好きが「逸品ぞろい」と太鼓判を押すサイトに成長した。コロナ禍でおうち時間を楽しむ意向が高まっていたこともあり、認知度を高めるべく企画したのが2020年11月21日(土)「婦人画報のおせち」の新聞展開だったと高村氏は話す。

2020年11月21日 東京本社版朝刊 2020年11月21日 東京本社版朝刊
15段カラー1.4MB

 「これまで婦人画報のお取り寄せでは、WEBを中心にプロモーションを行っており、ECサイトを使いこなしている方々には一定数リーチできている実感がありました。その一方で、到達できていないなと感じていた層もあり、新聞であればそのターゲットに認知を広げられるのではと考えたのです。そこで例年、年末に婦人画報の新年号のプロモーションを展開していた全15段のうち10段を婦人画報オリジナルのおせちに割くことに。豪華なおせちが目立つデザインとし、“婦人画報のお取り寄せ”を大々的に紹介しました」

 このおせちの紙面広告は予想以上の反響だった。掲載後、QRコードからの流入はもちろん、「婦人画報 おせち」の検索数や、電話での問い合わせが急激に増加。高村氏は反響の出方に、新聞ならではの特徴があったと話す。

 「掲載は11月だったのですが、12月に入ってからも新聞のQRコードからの流入が続きました。おそらく読者の方々が、購入検討用として紙面を取っておいてくださった可能性が高いです。新聞の特性かもしれません」(高村氏)

徹底的に美しさにこだわったグラフィックで読者の心をつかんだ

 おせちの企画で新聞広告に手応えを感じた同社は、婦人画報のお取り寄せの10周年のメッセージを新聞に掲載することを決定。4月3日(土)の朝日新聞全国版朝刊に掲載された。美しい写真で切り取られた名品の数々、そして華やかで品のある紙面には、思わず見入ってしまった読者も多いことだろう。

2021年4月3日 東京本社版朝刊 2021年4月3日 東京本社版朝刊
15段カラー1.1MB

 見比べてみると分かる通り、11月のおせちの紙面が雑誌風のエディトリアルデザインであったのに対し、4月の紙面は広告らしいグラフィックデザインに仕上がっている。一般的な「通販広告」と差別化するために、この広告のために全商品を再撮影したほか、商品価格すら載せないという徹底ぶりで、とことん美しいクリエイティブにこだわった。

高村氏

 「出版社は社内にライターもデザイナーもいるので、デザインを作ろうと思うと作れてしまいます。しかし今回は記念すべき10周年。婦人画報のお取り寄せがどういうコンセプトで運営しているのか、どんな想いでこの事業に取り組んでいるのかを多くの人たちに伝えたかったので、きちんと広告のプロに作ってもらおうと決め、アートディレクションは西岡ペンシル氏、コピーライティングを岡本欣也氏にお願いしました」(高村氏)

 紙面デザインと10周年記念ロゴを手がけた西岡氏は、掲載日に自身のTwitterアカウントで、“春らしい「目福」なビジュアルを目指しました”とコメント。西岡氏の狙い通り、桜色と浅黄色のカラーが美しい紙面は多くの読者の目に留まったようだ。同社の調査によると、QRコードからのアクセスはおせちを上回る増加、そのうち9割が新規のユーザーであることが分かったという。

 もうひとつ狙いが当たったのがコピーライティングだ。秀逸なステイトメントを次々に生み出している岡本氏にサイトコンセプトを説明、できるだけシンプルに想いを伝えるにはどう表現するのがよいかを話し合った。紙面では真ん中に贅沢にスペースを取り、“コピーを読ませる”紙面を意識し、「まずはサイトを訪れ、あなたの目で、食べ歩く幸せを味わってみてください」と提案。するとそのメッセージが読者にきちんと伝わったようで、サイトの直帰率が低く、訪れた人の多くがサイト内を回遊していることが、同じく同社の調査で分かった。

 「新聞読者の方は本当にきちんと記事を読んでくださるのだな、と実感しました。情報があふれるこの時代において、“稀有なメディア”と言えるのかもしれません。今回は私たちがどういう思いで10年歩んできたのかをしっかりと伝えたかったので、新聞というメディアを選んで良かったです」(高村氏)

新聞は大きな一枚絵にすべての情報が完結するメディア

 インタビューの最後に改めて感じた新聞の良さについて聞いた。

 「大きな一枚絵にすべての情報が完結するメディアであるところがまずは魅力。パッと見れば何の会社で、何をやっているのかが読者に伝わるところが、企業広告に非常に向いていると感じました。またよく言われていることではありますが、やはり新聞の持つ信頼感は価値が高い。WEBで商品を買うことに抵抗がある人もまだまだ多いですし、そういう人達のもとに情報を届けるには、その信頼感が強い味方になると思います。WEBとうまく組み合わせることで新聞広告の力をより活用していきたいです」(高村氏)

 婦人画報のお取り寄せではサイトオープン10周年を記念し、日頃は通販を行っていない名店の限定品や、お取り寄せ編集部が打診して作ったオリジナルの味など、これまで以上に驚くような特別な企画を多数、準備しているという。商品の魅力をお取り寄せ編集部が紹介するコンテンツにも取り組み始めている。

 多くの人が、「自由に旅ができる日々は、まだ先になりそうだ」と感じている今。婦人画報のお取り寄せで、味わったことのない地方の名品や、心が躍るような少し贅沢な逸品との出会いを楽しむ人は、今後も増えていくだろう。