cookieレス時代のバズワード!?
「コンテクスチュアルターゲティング」をきちんと考える オンラインセミナーレポート

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 朝日新聞社は、記事コンテンツの文意・文脈をAIによって解析し、関連した広告を配信する新たなサービス「コンテクスチュアルターゲティング」を開始しました。これに関連しオンラインセミナー『cookieレス時代のバズワード!? 「コンテクスチュアルターゲティング」をきちんと考える』を開催。業界を牽引するブランドのご担当者をお招きし、コンテクスチュアルターゲティングの本当の価値や、広告に携わる私たちはどのように向き合えばいいのかなどについて意見を交わしました。ディスカッションの様子をリポートします。

<出演者>
福吉 敬様(サッポロビール株式会社 ビール&RTD事業部 シニアメディアプランニング マネージャー)
山口 武様(Integral Ad Science Japan株式会社 カントリーマネージャー)
田中 朗(朝日新聞社 総合プロデュース本部 デジタル・ソリューション部 NxTラボ)
<聞き手>
坂上 正人(朝日新聞社 総合プロデュース本部 デジタル・ソリューション部 NxTラボ)

「感情」を捉える「コンテクスチュアルターゲティング」は
よりコンテンツに向き合うためのもの

──朝日新聞社とIntegral Ad Science(以下、IAS)が共同で開発した「コンテクスチュアルターゲティング」とはどういうものなのでしょうか。

田中 これまでのターゲティングは、キーワードでいうと“母”という単語に対して“母国語”といったものまで全部リストアップされていました。しかし、コンテクスチュアルターゲティングでは、高級車というセグメントを想定した場合、単に車だけではなく、銀行やゴルフというような文脈からの“車”を抽出。さらには感情まで出すことが可能で、ポジティブな感情なのかネガティブな感情なのか、どちらを持っているかをセグメントで設定しています。

山口 その「感情」の部分が重要なポイントです。これまでのキーワードターゲティングだと、“家族旅行”や“車”で設定した場合、事故を伝える記事に広告が配信されてしまうことがありましたが、感情まで出すことでポジティブな記事のみに配信することが可能になります。よりコンテンツにしっかり向き合っていただくためのデータだと考えています。

福吉 “ビール”や“酒”というキーワードだけで出すと、飲酒運転などの記事に広告が出てしまうなんてことも起こり得たと思いますが、感情を含めると“お酒を飲んで楽しかった話”であると分かり、広告との親和性が高くなります。

山口 福吉さんがおっしゃるように、コンテクストでマッチしているもののネガティブな記事は、もっとも避けなくてはいけない場所。今回の取り組みは、広告主様にとっても非常に価値あるデータがご提供できるのではないかと思っています。

──そもそも“コンテクスト”という言葉について福吉さんはどのように解釈されていますか?

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福吉氏

福吉 僕はもともと横文字をあまり使わずに“文脈”という言葉を使っています。たとえば僕たち朝の時間帯は“仕事をどうこなすか”と戦闘モードで“成果”などが文脈に入っていますが、夕方になるにつれ、“今日は頑張ったから一杯飲みに行こうかな”となり、同じ人でも文脈が変わってきます。このようにその人の気持ちや置かれている状況、これから先にやりたいことみたいなものを1つの文脈だと捉えています。そして僕たちが提供したい文脈は、“エビスビールっておいしいよね”ということ。両者の文脈が揃い、“今日頑張ったなら、エビスビールどうですか?”と提案できるポイントこそ、僕はコンテクストマッチだと考えています。

cookieがある時代はどうだったのか

──いま“cookieレス”が話題になっていますが、まずはcookieがある時代について先に考えたいと思います。

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山口氏

山口 cookieはブラウジングやローディングが早くなったりと、ユーザーにとって有益なもので、それが根本的にはcookieの利用価値。ただ、cookieレスになって困るという話の主語は、cookieを使ってユーザーに広告を当てていくことをプランニングの主として置いている人たちだと思うので、そこを考えるとあまり良くなかったのかなと思います。とにかくそのcookieに数多く、安く当てられればいいっていう考え方は、コンテンツを無視していますし、ユーザーの時間やタイミングも無視しています。安く、それでインプレッションクリックが買えればいいという時代は、広告主にとっても、媒体社にとっても、ユーザーにとっても、誰もハッピーではない状況が続いていたのではないでしょうか。

福吉 さっきもお話ししましたが、朝仕事に行くときと、夕方仕事が終わるときは気持ちが違うじゃないですか。山口さんのおっしゃる通り、単純にcookieだけに頼ってしまうと、時間もお客様の気持ちも関係なく当たってしまいますから、ちょっと危険でしたよね。

田中 運用型広告の担当者としてはある意味、良かったと言えると思います。すごい勢いで運用型広告のCPMが上がっていった時代で、そのときを知っている人間からすると、「バブルで良かった」というのが正直な感想です。一方で「何をやっていたんだろう」という時代でもあります。ユーザーにも向き合っていないし、広告主様にも向き合っていない。確かにお金にはなるけれど、すごくいい値段で売れたかと言うとそうでもないし、すごく中途半端でした。

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田中

山口 値段の話になりましたが、いろいろな方とお話しする中で、広告主サイドの方に「いま買われているインプレッションは満足されていますか?」と聞くと、みなさん「あまり満足していない」っておっしゃるのですが、福吉さんはどうですか?

福吉 全般的にデジタル広告の価格帯に満足しているかというと、満足していない、というより納得していない、という感覚です。

山口 売る側も買う側も満足していない状況ってデジタル広告特有ですよね。そう考えるとやっぱりcookieのある時代が良かったか悪かったかで言うと、良くなかった。cookieのせいというのは言い過ぎかもしれませんが、改善するべき点があるのは明らかだと思います。

CTRが1.2から1.5倍に
コンテクスチュアルターゲティングは遠い存在ではない

──今回、IASさんと朝日新聞社でコンテクスチュアルターゲティングのPOCをやってみたそうですが、結果はいかがでしたか。

田中 環境関連イベントの集客、DXに関連した記事などでPOCを実施しました。数値的なところでいくとCTR1.2倍から1.5倍くらいになるものがあったりして、非常に上がったという実感があります。フォームがあるものは、フォームへの遷移率が2倍強になるものもあったので、意味があったと考えられると思います。スクロール率も上がっていたので、主要な数値に関しては上がったという感じです。まだまだ分からないところもありますが、「もしかすると大きな塊の記事より、小さなインプレッションの記事に意味があるのかも」など、少し光が見えたような印象です。

※ 「Proof of Concept(プルーフ・オブ・コンセプト)」の略。新しい概念や理論、アイデアの実証を目的とした検証やデモンストレーションのこと。

山口 今回ご一緒させていただいたPOCデータを見ると、ひとまず良くなったところがあるというのは、商品を作っている立場としてはホッとしています。こういったデータの考え方、コンテンツの消費者に対する影響というのは、国や言語は関係なく、繋がってくる部分があると分かりました。

福吉 このような試みができるのは媒体社だからですよね。自分たちで書いた記事ですから熟読もできるし、記事を書いた方に聞くことだってできます。ここがたぶんパブリッシャーの強み。そういう意味では媒体社と組んで行うことに深い意味があると思います。

田中 今回のPOCに関しては商品×コンテクスチュアルという形だったので、これをさらにクリエイティブ単位まで落としていくと、もっとおもしろいことができるだろうと思います。広告のクリックレートって10%行くものってほとんどなくて、1%で「高かったね」という次元のもの。そこで大事なのは残りの99%の人間がどう思っていたかということです。今回は計測できていないので予想でしかありませんが、きちんとコンテクスチュアルでセグメントに当たっていれば、99%のお客様に関してもそこまで負の感情を抱かなかったのではないでしょうか。

福吉 そこはすごく重要。おっしゃる通りマイナスの感情を生み出さないというのも大きな価値です。

山口 調査でも見ているときの感情と、コンテンツと、広告がマッチすると、広告主のブランドにとっても、メディアにとっても、ポジティブなイメージにつながっていくという結果が出ています。これまでは「広告をどこに出すべきではないか、避けるべきところはどこか」という話だったと思うのですが、いまは「ここに出すと効果がある」という考え方を目指してデータを使っています。ネガティブを減らしてゼロにするのではなく、プラスの要素を見つけていく。真の意味での広告配信ができるという考え方が、グローバルで増えてきているのかなという印象です。

──日本はまだまだコンテクスチュアルターゲティングに積極的ではない印象がありますが、福吉さんはすでに取り組まれていますか?

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福吉 かなり前からやっています。コンテクスチュアルターゲティングと言われるから遠い存在に思うかもしれないけれど、もともとのメディアプランニングの観点からいうと従来の手法に戻ってきているだけだと思います。みんなタイアップするときは、お客様に寄り添ってどういう広告がいいか考えていたじゃないですか。だからそんなに遠くのものだと思わないで、改めてメディアプランニングの立ち位置に戻ってみると、むしろやりやすいんじゃないの、なんて僕は思ったりします。たとえば同じ30歳男性でも、僕の出身地である小倉と、東京で暮らす人を比べるとぜんぜん違いますよね。大事なのは記号ではなく、それぞれの人に寄り添い、どんな興味があるのかを考えることで、これを突き詰めるとおのずとコンテクスチュアルにたどり着くんです。だからコンテクスチュアルターゲティングは、お客様の興味に寄り添おうとしたときにはすごく自然な形。僕はすごく意味があると思っています。

感情を抜いたコンテクストに意味はない

──あらためてコンテクスチュアル、つまり文脈をとらえた広告コミュニケーションがなぜ大事だと思われますか?

福吉 少し話しに出ましたが、“嫌われない”って実はとても重要だと思っています。“広告を邪魔だと思ったことがありますか?”とアンケートを取ると、70%ほどの人が「邪魔だと思ったことがある」と答えるのですが、なぜかというと、やはりその人たちの立ち位置や気持ちなど、文脈とまったく関係ない形で広告が出ることが多かったからだと思います。広告に携わる人間として、好きになってもらいたくて広告をしているのに、文脈を無視した結果、お客様が商品を嫌いになってしまったら本末転倒。だからこそ文脈に沿ったコミュニケーションが大事。お酒そのものを出すのではなく、読み物になっていたり、その人たちの時間を豊かにするようなコンテンツを出すこともひとつ。その文脈のなかに“商品を置いてくる”ことができれば、商品を嫌いにはならないと思うので、コンテクトや文脈は、今後より一層大事にしていくべきなんじゃないかと思います。

山口 これまでいろいろなところで「コンテクストにプラスして感情を見ることができる」と説明してきたのですが、福吉さんの話を聞いているうちに、もしかしたら少し浅はかだったのかなと思い始めています。感情があってこそのコンテクストだったんだな、と。感情を抜いたコンテクストは、ただのキーワードマッチと変わらないですよね。感情のデータをセンチメントと呼んでいますが、センチメントが欠如したものはコンテクストと呼んではいけなかったのだなと、反省しながら聞いていました。

田中 感情が出せる、出せないで、通常のアドテクなのか、お客様に寄り添えるアドテクなのかが変わってきますね。

面ではなく、その向こうにいる人と向き合う

──コンテクスチュアルターゲティングは、cookieの代替施策ではなく、お客様のコンテクストに寄り添うためのものなのですね。

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田中 さっきcookieのある時代はある側面で良かったとお話させていただきましたが、言ってしまえば自分たちは何もしていなかった時代だったんです。もちろん朝日新聞社としてはタイアップ広告に力を入れてはいましたが、アドテク周りはほとんどベンダー任せにしていました。コンテクスチュアルターゲティングに取り組んで、初めてお客様と本当の意味でコミュニケーションを取れるようになったのではないかと思います。

山口 福吉さんもおっしゃっていましたが、コンテクスチュアルターゲティングって別に新しいことではないんだよと。そもそも今までのマス広告で当たり前のように考えられてきた概念が本質的だったからこそ、デジタルの分野でも必要になり、それがコンテクスチュアルターゲティングというものとしてバズっているだけなんですよね。cookieレスをきっかけに、面と向き合うためには何をしなくてはいけないのか、という考えにシフトする広告主の皆様、代理店の皆様が今後は日本でも増えていくと思います。

福吉 面の向こうにはやっぱりお客様がいらっしゃるんですよね。広告や記事もそれを読んでいるお客様が向こうにいらっしゃるわけです。その先のお客様は誰で、それは自分たちのお客様になり得る人なのかを正しく理解したうえでコミュニケーションをとっていけば、かならずうまくいくと思います。ですから、僕たちがオリエンのときにきちんと整理をし、誰に対して何を伝えたいのかを明確にして、制作の方や媒体社さん、ベンダーさんに伝えていくことが重要。僕たちがもっと習熟度を上げてお客様を理解し、「こういうコミュニケーションをしたい」と言葉にすることで、初めてコンテクストマッチは実現すると思うので、この点は頑張りたいと思います。

※より詳しくディスカッションの全内容をまとめた全編採録リポートとコンテクスチュアルターゲティングの企画書を下記からダウンロードいただけます。

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