個人の好みやライフスタイルに合わせたメガネの提案を追求

 メガネやその関連商品を扱い、「パリミキ」などをチェーン展開する三城、百貨店店舗を中心に展開する金鳳堂、海外14拠点の子会社などで構成される三城ホールディングス。代表取締役の多根幹雄氏に、事業の特徴や展望などについて聞いた。

──三城ホールディングスの成り立ちと、創業来の理念ついて聞かせてください。

多根幹雄氏 多根幹雄氏

 創業者である私の祖父・良尾は、紡績会社をリタイア後、世界恐慌のさなかの1930年に兵庫県姫路市に時計店を開きました。当時の時計店の多くはメガネも置いたそうです。昔は時計の粗悪品も多く、商品を眺めるお客様の目はどこか疑心暗鬼。そんな中、メガネを買うお客様は、視界がクリアになって明るい表情で店を後にされる。2代目の父・弘師は、まずそうした点でメガネという商品に魅力を感じたと言います。

 さらに父は、アメリカを旅した際に「時計よりメガネ」ということを確信しました。アメリカでは「1ドルウォッチ」が売られるほど時計のコモディティー化が進んでいて、「日本でも同じことが起きる。そうなるとビジネスが厳しくなる」と直感したそうです。

 一方メガネは、視力やお顔にお合わせする商品なので、価格が大きく崩れない。そして、お客様と密度の濃い信頼関係を築くことができる。こうしたことから、メガネを専門に扱う会社となりました。創業来の理念は、「お客様お一人おひとりにお合わせする」。個人の好みやライフスタイルに合わせた商品提案を全店で徹底しています。

──社員にどのようなことを働きかけていますか。

 お客様を知る努力です。接客時の対話だけでなく、お客様のご性格やお顔の特徴を分析して最適のデザインを探り出すシステムなどを活用してもらっています。知る努力を通じてお客様ご本人も気づいていらっしゃらない潜在的なニーズの掘り起こしにもつながると考えています。

──3代目として、今後目指していきたいことは。

 私は98年から9年間、スイスのジュネーブでグループ企業の資産運用を担いました。この時、幸運にも12行のスイスのプライベートバンクに口座を持つことができ、ファンドマネジャーなど各国の様々な人材と知り合うことができました。現在は、スイスで培った人脈やノウハウを生かし、当社の活動と並行してクローバー・アセットマネジメントという投資信託会社の経営を担っています。こうした経験を、三城グループの経営にも役立てていきたいと考えています。

 例えば、お客様の中には、老後のお金の心配をされている方もいる。健康不安を抱えていらっしゃる方もいる。個々の事情に目を配り、資産運用の情報提供や、健康のサポートなど、貢献できることを探していきたいですね。企業の成長においても必要なことだと思っています。

──初代や2代目から大事に受け継いでいること、あるいは受け継ぎたいと思っていることはありますか。

 初代と2代目に共通しているのは、時代を読む力です。祖父は、日本の開戦や戦後のモノ不足を直感し、時計修繕に必要な油を備蓄、戦後の姫路でどの店よりも早く営業を開始しました。また、自動車が普及していなかった時代にモータリゼーションの到来を予期し、駐車場つきの郊外店舗を展開しました。「こんな田んぼの真ん中に人が来るのか」と言われたそうですが、祖父が予期した通りの社会になり、郊外店はにぎわいました。

 父も祖父譲りの先見性を持つ人で、海外展開やテクノロジー導入などを推進してきました。私も祖父や父のようにありたいと思っています。

 私自身がポリシーとしているのは、時間の経過とともに良くなっていく世の中をつくりたいということ。3.11を境に、その思いが強まりました。

 また、あえてあまのじゃくになることも大事だと思っています。つまり、多数がいいと考えるコンセンサスを疑う。聖書で言う「狭き門より入れ」です。困難な道を探るほうが、成長やブレークスルーにつながると信じています。

──愛読書は。

 大学の恩師の村田昭治先生の著書『村田昭治のマーケティング・ゼミナール すてきな考え方とこころときめく発想の旅』と『人財の条件』、親子で交流のあった竹内均先生の著書『人生を最高に生きる私の方法』、父からすすめてもらった『小林一三 逸翁自叙伝』、投信事業でお世話になっている澤上篤人さんの著書『金融の本領』、息子にプレゼントしてもらった『奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』、それぞれに思い入れのある愛読書です。

多根幹雄(たね・みきお)

三城ホールディングス 代表取締役

1959年兵庫県生まれ。84年慶応義塾大学商学部修士課程修了。同年三城(現・三城ホールディングス)入社。88年より専務など要職を歴任。98年から9年間、スイス子会社の執行責任者兼運用責任者を務める。2013年クローバー・アセットマネジメント代表取締役社長(現任)。15年から現職。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、多根幹雄氏が登場しました。(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.81(2016年1月26日付朝刊 東京本社版)