スターウッドホテル、軒数拡大と会員プログラム「SPG」を普及促進

 「シェラトン」「ウェスティン」「セントレジス」など9つのブランドを有し、世界約100カ国で1,100軒以上のホテルやリゾートを展開するスターウッド・ホテル&リゾートワールドワイド。そのビジネス戦略について、代表取締役の橋本和宏さんに聞いた。

 

橋本和宏氏 橋本和宏氏

──スターウッドグループの強みとは何でしょうか。

 第一に、認知度の高さです。スターウッド ホテル&リゾート ワールドワイドは、「セントレジス」「ラグジュアリーコレクション」「W」「ウエスティン」「ル・メリディアン」「シェラトン」「アロフト」「エレメント」「フォーポイント・バイ・シェラトン」という9つのブランドを展開しています。中でも「シェラトン」は、全世界に400軒以上を構え、抜群の認知度を誇っています。

 第二に、個性あふれる9つのブランドを一つにつなぎ、世界各地の高級ホテルを網羅する会員プログラム「スターウッドプリファードゲスト®(以下SPG®)」です。1999年の発足と同時にホスピタリティ業界における会員プログラムのあり方を変えたと自負しています。最大の特長は、特典除外日がないこと。年末年始やゴールデンウイークなど、繁忙期でも適用される画期的なプログラムです。スターウッドホテル&リゾートではお客様の50%近くがSPG会員で、この実績がSPGの有用性を証明していると思います。

  また、今年9月にアメリカン・エキスプレス・インターナショナルとの提携カード「スターウッド プリファード ゲスト® アメリカン・エキスプレス®・カード」が、アメリカ、カナダ、イギリスに次いで日本に上陸しました。基本会員には、より特典が多い「ゴールド会員」の資格が自動付帯。また、ご継続時に無料宿泊特典のご提供や充実した旅行傷害保険に加え、航空券の遅延で臨時に出費した宿泊費や食事代の補償など、アメリカン・エキスプレスならではの特典がついています。

 第三に、きめ細やかな従業員の教育プログラムです。当グループでは、従業員を「アソシエイト」と呼び、スタッフ同士が手を携えてサービスの向上に努めています。また、お客様の声を数値化し、接客スキルが高いアソシエイトはより責任あるポジションに就ける仕組みを徹底、それがスタッフのモチベーションにつながっています。接客スキルを磨くためのメンタープログラムも充実しています。

──日本では、「シェラトン」8軒、「ウェスティン」6軒、「セントレジス」1軒を展開しています。その多くが、土地・建物のオーナーがホテル運営もするフランチャイズホテルです。スターウッドのホテル運営の方針をどのように徹底していますか。

 各運営会社には、施設、サービス、リザベーションシステムなどをすべてブランドスタンダードに統一していただくようにお願いしています。また、サービスの質を高いレベルに均質化するため、ミステリーショッパー(覆面調査員)を派遣して改善点などを探り、各運営会社にフィードバックしています。一方で、地域と連携したプロモーションなど、独自の工夫が必要な時もあります。お客様の利便性を最優先に考えながら、当社と運営会社がともにメリットを持てるような関係を築いています。

──今後の展開について。

 まず、海外からのお客様の対策ですが、世界に33のグローバルセールス拠点を置き、日本を訪れる外国人観光客やビジネスマンに「シェラトン」「ウェスティン」「セントレジス」への宿泊を促しています。震災後に縮小した反動や円安傾向などもあって外国人観光客の数はかなり回復しており、世界にネットワークを持つグループの強みを生かせる時代の到来を実感しています。2020年の東京五輪開催も追い風になると思います。

 こうした状況を踏まえて、今後はホテル軒数の拡大を目指していきます。ラグジュアリーホテルの東京地区の展開が遅れているので、優れたバトラーサービスを誇る「セントレジス」や、特徴あるデザインと現代的な贅沢(ぜいたく)を満喫できる「W」といったブランドのセールスプロモーションに注力していきます。

──橋本さんのビジネス信条は。

 ゼネコンに勤めていた時は、建設工事の宿舎で寝起きしたこともありました。ポルトガルのリゾートコンプレックスで役員をしていた時は、従業員のリストラを担当しました。過酷な仕事でも誰かがやらなければいけない。どんな困難に直面しようと、四の五の言わずに責務を遂行する。それが私の信条です。

 現在は、日本で展開しているホテルビジネスのあらゆる案件の意思決定を任されています。何かを決断する時に常にイメージしているのは、「時間・お金・リスク」を頂点とするトライアングルです。その形が極端にゆがむような経営にならないように心がけています。

──リーダーとして留意していることは。

 この会社に入って一番印象的だったのは、米国本社の役員たちが、部下とファーストネームで呼び合い、遠慮なく意見を交換できる関係を築いていることでした。私も思ったことを言い合える風通しのいい環境づくりを目指しています。

──愛読書は。

 気に入った作家の作品を追っかけるタイプで、特に好きなのは、浅田次郎さん、梁石日さん、村上龍さんです。エンターテインメント色の強い小説を仕事の息抜きとして読みます。自己啓発本はほとんど手に取りませんが、『チーズはどこへ消えた?』は、求職中だった40代初めに読み、リスクを取ることを肯定したシンプルで象徴的なメッセージに力づけられました。

橋本和宏(はしもと・かずひろ)

日本スターウッド・ホテル 代表取締役 統括開発部長兼オペレーション統括部長 日本・韓国・グアム地区

1961年福岡県生まれ。86年上智大卒。同年青木建設入社。海外でホテルのプロパティマネジメントなどに従事。2003年日本スターウッド・ホテル入社。04~07年統括経理部長。08年日本・韓国・グアム地区統括開発部長。11年から現職。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、橋本和宏さんが登場しました。(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.55(2013年10月23日付朝刊 東京本社版)