am/pm合併に向けて、「加盟店はファミリー」という理念を今こそ

 11月13日、コンビニエンスストア3位のファミリーマートは、業界7位のエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)の子会社化を正式に発表。首都圏に強い地盤を持つam/pmを傘下に収めることで、都内のシェアでトップに立つ。また、80年代から着手しているアジア進出も中国を中心に加速させ、2019年末までに3万店(現在の約3.8倍)に拡大、国内と合わせて4万店態勢を築く方針を明らかにした。生き残りに積極策を打つ上田準二社長に聞いた。

上田準二氏

――今後のファミリーマートの経営戦略をどう描いていますか。

 ファミリーマートには現在、独立した自営業者である加盟店を主とした店舗が国内に約7,600店、海外を含めて約15,000店あります。我々の事業形態は加盟店からのロイヤルティーで成り立っており、現在のような厳しい小売り競争の中でも、本部の務めは一店舗、一店舗の幸せ、生活を維持し拡大していくことに変わりません。そのためにお客様に満足していただける店にするにはどうすればいいかを絶えず考えていかなくてはなりません。

 国内の店舗網は飽和状態に近づいており、そこでライバルを抜こうとは思っていません。今後の成長力を考えれば、勝負はアジアです。アジアにおけるコンビニエンス事業の成功の下に収益を拡大し、そのリターンで既存の加盟店に対する支援や投資もできると考えています。戦略のビジョンは大切ですが、この業界、最後は人です。仕事に情熱を持つ社員を育てることが、ますます重要になるでしょう。

――「am/pm」との合併について、現段階での構想は。

 合併によって首都圏のチェーン店舗数はナンバーワンになり、マーケットでの効率的な展開が可能になります。ただし、この合併が本当に成功であるかどうかは、加盟店それぞれの今後が決めることです。「am/pm」時代より経営状態や利益が向上し、日々の大変な仕事の中でもお店を持っていることに喜びが感じられるような態勢づくりを、一日も早くしていかなくてはなりません。

 コンビニエンス業界には多様なフランチャイズ契約形態が混在していますが、合併にあたっては、「ワンブランド」ということに私はこだわっています。ファミリーマートは出身も学閥も一切ない、平等な人材登用の機会のある企業です。今一番輝いている人、一番適した人に、ファミリーマートで責任ある仕事を手がけてもらうためにも、ひとつの旗の下に「ファミリー」になることが大切だと思っています。

――学生時代は作家を志望されていたほど、熱心な読書家だと聞いています。愛読書を教えてください。

 文芸作品で感銘を受けたのは、山本有三の『路傍の石』と、夏目漱石の『草枕』です。『草枕』は難しいので、最初の30ページをまず読んでほしいと思います。また、ビジネス書では、ちょうど自分が社長に就任したころに読んだ、『EQリーダーシップ』(ダニエル・ゴールマンほか著、土屋京子訳)です。この本の著者はリーダーシップの根本とは、人の感情に働きかけることだと書いています。私はビジネス書をさほど読みませんが、これは一気に読んでしまいました。一気に読める本は、長く心に残る本です。

 本書の核心は、「組織が最大限に力を発揮するのは、社員の隅々から経営トップまで気持ちがつながっている時だ」ということです。これはただの情とは違います。社員の業績が悪い時、なぜそうなのか上司が理解している。トップの指示や人事に込めた期待を、社員が分かっている。例えばそういうことでしょう。組織が歯車ではなく、家族的な相互理解の中で動くことの重要さを再認識した一冊です。

文/松身 茂 撮影/星野 章

上田 準二(うえだ・じゅんじ)

ファミリーマート 代表取締役社長

1946年秋田県生まれ。1970年山形大学文理学部卒業。同年4月、伊藤忠商事入社。2000年5月ファミリーマート顧問、同年9月執行役員。2001年5月常務取締役。2002年3月代表取締役社長。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、上田準二さんが登場しました。(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.10(2009年12月15日付朝刊 東京本社版)