前回の報告で、回答者全体に占める電子書籍・雑誌利用意向者の割合を紹介しているが、図表1と図表2にあるように、利用意向者を「利用経験のある利用意向者」と「利用経験のない利用意向者」に分けると、「利用経験のない利用意向者」の方が多いことが分かる。「利用経験のない利用意向者」が、実際に電子書籍・雑誌を利用し始めることによって、電子書籍・雑誌の本格的な普及が始まると考えられるだろう。
今回の報告では、「電子書籍・雑誌の利用意向者」が今後利用したいと思うコンテンツや電子書籍・雑誌の配信サービス(ストア)に期待する機能やサービスなどの電子書籍・雑誌へのニーズについて、「電子書籍・雑誌の利用経験のない利用意向者」の回答結果も含めて紹介する。
図表1 電子書籍の利用意向
図表2 電子雑誌の利用意向
電子書籍・雑誌の購入ジャンルと閲読意向ジャンル
電子書籍の有料コンテンツを最近3カ月間で購入した人(n=111)に、購入したジャンルを尋ねた結果では、「コミック」が59.5%と最も多く、「小説」「ビジネス・経営」が続いている(図表3)。また、電子雑誌の有料コンテンツを最近3カ月間で購入した人(n=42)に、購入したジャンルを尋ねた結果では、「漫画雑誌」が50.0%と最も多く、「ビジネス・マネー誌」「総合月刊誌」「ファッション誌」「男性誌」が続く(図表4)。電子書籍・雑誌の有料コンテンツでは、「コミック」や「漫画雑誌」の利用が特に多いことが分かる。
図表3 最近3カ月間に購入した電子書籍のジャンル上位10項目(複数回答)
図表4 最近3カ月間に購入した電子雑誌のジャンル上位10項目(複数回答)
では、電子書籍・雑誌の利用意向者はどのようなジャンルのコンテンツを読みたいと思っているのだろうか。「電子書籍・雑誌の利用経験のない利用意向者」の利用意向ジャンルから、今後の普及期でどのようなジャンルの利用が多くなるのかを推測できるだろう。
「コミック」は、有料の電子書籍で最も購入者が多いジャンルであるが、「電子書籍の利用経験のない利用意向者」(n=672)の読みたいジャンルでは、「コミック」は26.3%で5番目にとどまっている(図表5)。利用経験のある人も利用経験のない人も、今後読みたい電子書籍のジャンルで「小説」を挙げる人が7割超と最も多く、電子書籍の需要拡大局面では、「小説」「趣味・実用」「エッセー・評論」など、「コミック」以外のジャンルのコンテンツが多く利用されるようになることが推測される。
「電子雑誌の利用経験のある利用意向者」(n=255)では、今後読みたい電子雑誌のジャンルとして「パソコン関連誌」「商品・トレンド誌」「ビジネス・マネー誌」「ファッション誌」などを挙げる人が多い(図表6)。一方、「電子雑誌の利用経験のない利用意向者」(n=693)では「ファッション誌」「生活情報誌」「ビジネス・マネー誌」「総合週刊誌」などを挙げる人が多く、利用経験の有無によって読みたいジャンルの順位には違いが見られる。
図表5 電子書籍で今後読みたいジャンル上位10項目(単位%・複数回答)
図表6 電子雑誌で今後読みたいジャンル上位10項目(単位%・複数回答)
最も期待されている機能・サービスは「複数の端末で読めること」
電子書籍・雑誌の利用意向者を対象に「電子書籍・雑誌の配信サービス(ストア)に期待する機能・サービス」を尋ねた。電子書籍や電子雑誌の利用経験の有無による回答の違いを見るため、「利用経験のある利用意向者」(n=531)と「利用経験のない利用意向者」(n=688)に分けて回答結果を見た(図表7)。
期待する機能・サービスとして「購入した書籍・雑誌を複数の端末で読むことができる」「携帯電話やスマートフォンで読むことができる」を挙げる人が多い。「利用経験のある利用意向者」では「複数の端末で読むことができる」を挙げる人が約7割と特に多い。「複数の端末で読むことができる機能」は、実際に利用している人で挙げる人が多いことからも非常に重要な機能だと思われる。
図表7 電子書籍・雑誌の配信サービス(ストア)に期待する機能・サービス(複数回答)
電子書籍・雑誌利用意向者は新聞の書籍・雑誌広告への関心が高い
電子書籍や電子雑誌の利用意向者が紙の書籍や雑誌を普段どれくらい購入しているのかを見た(図表8、図表9)。電子書籍や電子雑誌の利用意向者、特に「利用経験のある利用意向者」の普段の1カ月間の平均購入金額(購入者の平均額)は、紙の書籍(コミック以外)で3,220円、紙の雑誌(漫画雑誌以外)では2,620円となっていて、それぞれ利用意向のない人と比べて高くなっている。
電子書籍・雑誌の利用意向者では、紙の書籍や雑誌を普段「買わない」という人の割合が低く、購入者の平均購入金額も高いなど、電子書籍・雑誌への利用意向のない人と比べて紙の書籍・雑誌への関心も高いことがうかがえる。
図表10と図表11は、新聞に載っている書籍広告と雑誌広告に対する関心について、それぞれ5段階で尋ねた結果である。電子書籍・雑誌の利用意向者では、新聞の書籍広告や雑誌広告に関心があるという人の割合は高く、電子書籍・雑誌のマーケティングにおいても新聞広告を活用することは効果的だと考えられる。
図表8 普段の1カ月間の紙の書籍(コミック以外)購入金額
図表9 普段の1カ月間の紙の雑誌(漫画雑誌以外)購入金額
図表10 新聞の書籍広告への関心
図表11 新聞の雑誌広告への関心
■「電子書籍・雑誌に関する調査」の概要
調査地域:東京30km圏
調査対象者:20歳~69歳の男女個人
調査方法:インターネット調査。インターネット調査会社保有のリサーチパネルより、母集団人口に合わせて性・年代別に回収数を割り付け。
有効回収数:4,000
調査時期:2011年2月19日~2月25日
調査企画・設計:朝日新聞東京本社広告局
実査機関:株式会社マーケッティング・サービス