現在、スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末など、電子書籍・雑誌の閲読に適した機器の普及が進んでいるほか、電子書籍・雑誌コンテンツを販売・配信するプラットホームも増えている。朝日新聞東京本社広告局では、電子書籍・雑誌の利用の現状と今後の動向について探るために、「電子書籍・雑誌に関する調査」を実施した。調査は、2011年2月にインターネット調査の手法で実施し、20歳から69歳までの東京30km圏居住者の人口統計の性・年代構成比で回収数を割り当て、4,000人から回答を得た。
電子書籍・雑誌の利用経験
回答者全体(n=4,000)のうち、無料のものも含めてこれまでに利用したことがある人は、電子書籍が20.9%、電子雑誌は11.0%である(図1-1、図1-2)。
電子書籍の場合は、性別では男性で、年代別では若年層で利用者の割合が高い傾向が見られる。電子雑誌の場合は、性別では男性で利用者が多いが、年代別では60代を除いて利用者の割合は各年代で10%を超えており、年代差は大きくない。回答者全体のうち、有料コンテンツの利用経験がある人の割合を電子書籍と電子雑誌のそれぞれについて見ると(図2-1、図2-2)、電子書籍は6.2%、電子雑誌は2.3%となっていて、有料コンテンツの利用者はまだ限られていることが分かる。
電子書籍・雑誌の利用意向
次に、電子書籍、電子雑誌の今後の利用意向を尋ねた結果を紹介する。回答者全体のうち、今後電子書籍、電子雑誌を「利用したい」(+「やや」)人は、電子書籍が28.4%、電子雑誌は23.7%と電子書籍利用意向者の方がやや多い(図3-1、図3-2)。性別や年代別での違いは小さいが、60代では利用意向者の割合が低くなっている。男性、女性、20代~50代の各層での利用意向者の割合は電子書籍の場合で30%前後、電子雑誌の場合で20~25%程度となっている。電子書籍・雑誌の利用経験者の割合は男性や若年層で高い傾向が見られるが、利用意向者の割合については性・年代による違いは大きくない。
図4-1~図4-2は、今後1年間にスマートフォン、タブレット端末や電子書籍専用端末を購入する意向がある人と購入意向がない人の別に電子書籍・雑誌の利用意向を見た結果である。
スマートフォン、タブレット端末、電子書籍専用端末のそれぞれの購入意向者では、各機器の購入意向がない人(「当該機器購入意向なし計」)と比べて、電子書籍・雑誌利用意向者の割合が高いことが分かる。スマートフォンやタブレット端末、電子書籍専用端末などの普及が、電子書籍・雑誌の利用拡大につながることがうかがえる結果である。
※図4の各機器の「購入意向なし計」は、各機器の購入意向について「どちらともいえない」「あまり購入したくない」「購入したくない」のいずれかに回答をした人の合計。各機器の「購入意向者計」は、各機器について「購入したい」または「やや購入したい」と回答した人の合計。
電子書籍・雑誌を利用したくない理由とは
では、電子書籍・雑誌を利用したくないという人は、どのような理由から「利用したくない」と考えているのだろうか。電子書籍・雑誌を「あまり利用したくない」あるいは「利用したくない」と回答した人(n=2,352)を対象に、利用したくないと思う理由を複数回答で尋ねたところ、「紙の方が読みやすいから」という回答が最も多く、「パソコンや携帯・スマートフォンの画面はまぶしくて目が疲れるから」「紙の方が手軽に読めるから」「価格が安くないから」「文字が小さいから」などの回答が続いている。電子書籍・雑誌の普及にとって「読みやすさ」が重要な要素の一つになっていることが分かる。
今回は、電子書籍・雑誌の利用の現状と今後の利用意向について報告した。現状では、有料の電子書籍・雑誌を利用したことがある人は多くないが、電子書籍・雑誌を利用したいという人は、スマートフォン、タブレット端末や電子書籍専用機の購入意向者で特に多く見られ、それらの機器の普及によって電子書籍・雑誌の利用者は増えていくことが予測される。
次回の報告では、電子書籍・雑誌の利用意向者がどのようなニーズを持っているのかなど、より詳細なデータを紹介する。
■「電子書籍・雑誌に関する調査」の概要
調査地域:東京30km圏
調査対象者:20歳~69歳の男女個人
調査方法:インターネット調査。インターネット調査会社保有のリサーチパネルより、母集団人口に合わせて性・年代別に回収数を割り付け。
有効回収数:4,000
調査時期:2011年2月19日~2月25日
調査企画・設計:朝日新聞東京本社広告局
実査機関:株式会社マーケッティング・サービス