環境に関する様々なメッセージを幅広いステークホルダーに伝える「環境コミュニケーション」は、今や企業にとっては欠かせない存在である。環境意識の浸透に伴い、いかに生活者の「アクション」を喚起するかが課題となっている。その手法として、「新聞広告」や「テレビCM」「屋外広告」「企業のHP」など様々な「メディア」が使われているが、同じ情報でも掲載される「メディア」により、生活者への影響力は異なっているようだ。
2010年2月に実施した「環境広告影響度調査」の結果から、企業の環境コミュニケーションに対する生活者の受け止め方について2回にわたって紹介する。
生活者は様々なメディアから環境に関する情報を入手
環境広告を「よく見る」という人は全体の約2割、「まあ見る」を合わせると4分の3の人が環境広告に接している(図1)。接触しているメディアを詳しく見ると、最も多いのは「テレビCM」で次に「新聞広告」であるが、「屋外/交通広告」や「雑誌広告」「企業のHP」も各々約3~4割の人が見ており(図2)、生活者は様々なメディアから環境に関する情報を入手している様子がうかがえる。
環境問題の背景を理解することが「アクション」へとつながる
ここで環境問題に対する意識と行動の関係を見る。共分散構造分析(※)という多変量解析を用いて分析したところ、「環境負荷の少ない商品・サービスの選択」など、実際に環境問題に対応した行動を実行するかどうかは、単に環境問題への関心度ではなく、その背景にある問題の重要度をきちんと理解しているかに左右されることが分かった(図3)。
続いて、新聞広告、テレビCM、屋外/交通広告の各メディアで環境広告を「よく見る」人の意識と行動の違いを見ていく。新聞広告で環境広告をよく見る人は、テレビCMや屋外/交通広告でよく見る人と比べて、「大量消費/大量廃棄型の消費社会の構造の改善」など、環境問題の背景の重要度を理解している傾向があることが分かる(図4)。加えて行動面でも「家電を買う時は省エネ対応商品を選ぶようにしている」など、新聞広告で環境広告をよく見る人は、ふだんの暮らしの中でも環境に対応した「アクション」を実践している生活者なのである(図5)。
生活者は環境広告にきちんとした根拠を求めている
次に環境をテーマにした広告にはどのような表現が求められているかを紹介する。「具体的になぜ環境によい商品活動なのか詳しく伝わる広告」「企業の利益のためだけでなく、地球環境のために行っていることが伝わる広告」は、「まあふさわしい」と「ふさわしい」を合わせるといずれも9割前後にのぼる(図6)。換言すれば、生活者は環境広告に対して、正しい理解・判断のためのきちんとした根拠を求めているのだ。さらにこのような広告については、ともに新聞広告の方がテレビCMよりふさわしいととらえられており(図7)、詳報性や社会性に富むという新聞広告の特徴が生活者に受け入れられているといえよう。
環境に配慮した商品を保有する朝日読者
読んでいる新聞によって生活者の環境に対する意識や行動に差はあるのだろうか。「新聞の環境広告は環境問題への企業の役割を自覚していると伝わる」と答えた人の購読新聞は朝日新聞が最も多く25%を占めた(図8)。環境に優しいLED照明や生ゴミ処理機の所有者の購読新聞でも、朝日新聞が最も多い(図9)。
今や企業にとって欠かせない「環境コミュニケーション」。環境意識の浸透に伴い、いかに生活者の「アクション」を喚起するかが課題である。環境問題について自ら考え行動するようになった生活者は、「環境広告」にも単なるイメージに終わらない、きちんとした根拠を求めるようになった。 生活者の環境問題への「意識」を「アクション」へとつなぐカギは「環境問題の重要度への理解」であり、それには「環境広告」が大きな役割を果たしている。 企業と生活者の「環境コミュニケーション」の実効性を高めるカギは、新聞広告、特に朝日新聞の活用にあることが今回の調査結果からうかがえる。
「環境広告影響度調査」調査概要
【調査対象】20~69歳の男女個人(クロス・マーケティング社が保有するモニターパネル)
【調査地域】全国(北海道・東北/関東/中部・北陸/近畿/中国・四国/九州・沖縄の6エリアに分割)
【調査方法】インターネット調査
【標本サイズ】平成17年国勢調査の人口構成比に基づき、性・年代、エリアで2,000人を割付回収
【調査期間】2010年2月25~26日
【調査企画・設計】朝日新聞大阪本社広告局
【調査実施】(株)市場調査社 大阪