テレビ中心のクロスメディア展開における新聞の役割を探る

2008年9月13日付夕刊 2008年9月13日付夕刊

~江崎グリコ「オトナグリコ・25年後の磯野家」より

 江崎グリコでは08年9月から、サザエさん一家(磯野家)の25年後を描いた「オトナグリコ」キャンペーンを始めました。浅野忠信、宮沢りえ、さらに瑛太、小栗旬といった人気俳優が、各々磯野家のカツオ、ワカメ、タラオ、イクラちゃんが大人になった姿を演じることで、同社の大人向けチョコレート「オトナグリコ」シリーズを印象づけることを狙っています。
 このキャンペーンは2008年9月10日から流れているテレビCMがメーンで、新聞広告やラジオCM、屋外広告などは、テレビを補完する役割のクロスメディア展開をしています。
 お菓子やトイレタリーなどの、いわゆる低関与・刺激反応型商品のキャンペーンでは、テレビCMや店頭POPなどで予算が使われてしまい、新聞広告が利用されないケースが目立ちます。これらのキャンペーンでは、若年層への到達率の高さやインパクトの強さから、テレビCMをメーンに据えるのが常道的手法であるとしても、新聞広告は本当に必要ないのでしょうか。
 「このキャンペーンを誰かと話題にしたか」などを調べた、朝日新聞大阪本社広告局による読者調査の結果から、テレビを中心としたキャンペーンにおける新聞広告の役割を明らかにしていきます。

◆ 新聞広告を加えることにより得られるもの

全体像が把握できる

 今回のキャンペーンでは、テレビCM、新聞広告とも、カツオ36歳、ワカメ34歳などと出ているだけで、磯野家の25年後を取り上げているとは、はっきりとは述べられていません。そこで、広告モニター調査ではまず、どのタイミングでサザエさんの磯野家の話だと分かったかを尋ねました(図1)。最も多かったのは「最初にテレビCMを見たとき」(36.2%)ですが、次に「新聞広告を見たとき」(20.1%)が続きました。テレビで注目のきっかけを作り、新聞で内容を確認させ納得させるという役割分担が果たされているといえるでしょう(注1)。ちなみに、このキャンペーンが始まることは、新聞記事や朝のワイドショーなどでも紹介されていたためか、「その他」が17.1%で3位となっています。

(注1)「メディアのはなし」の25、26ページを参照のこと。一番初めにものごとを知るきっかけとなるのはテレビで、全体像を把握して背景を知ることに利用されるのが新聞といえます。

もっと知りたい

 新聞は、読んだ人の中での情報処理が深くなりやすいため、さらに詳しい情報を集めたり、他の人に話したくなるといわれます。今回のキャンペーンではどうだったのでしょうか。

 テレビCMに接した人を「新聞広告を確かに見た」「見たような気がする」「見た覚えがない」の3グループに分類し、「磯野家の25年後」のことをさらに詳しく知りたいと思うかどうかを尋ねました(図2)。その結果、新聞広告を見た覚えがある人ほど、すでに調べていたり、調べたいと思っていたりすることが分かりました。

 次に、テレビCMをあらためて見たいと思うかを尋ねると(図3)、「新聞広告を確かに見た」人の52.4%が「ぜひ見てみたい」と答えており、「新聞広告を見た覚えがない」人の39.3%を大きく上回っています。新聞広告に接することにより、もっと詳しい情報を集めたいという思いが強くなるといえるでしょう。

誰かに伝えたい

 同様に「磯野家の25年後」を誰かと話題にしたかを尋ねました(図4)。こちらも新聞広告を見た覚えがある人ほど、家族などと話題にした人が多いことが分かりました。新聞広告には他の人に情報を伝えたくなる働きがあることが明らかにできました(注2)。ネット社会の発達で世の中に情報があふれすぎているためか、口コミの大切さがしばしば指摘されています。口コミを起こすカギとして、新聞広告が果たす役割は大きいのではないでしょうか。

(注2)「メディアのはなし」の27~30ページを参照のこと。新聞やテレビで得た情報の大部分は、家族や知人などに2次情報として伝えられます。

 テレビCMが先行し、テレビCMを中心に組み立てられたクロスメディアキャンペーンでも、新聞広告の果たす役割の大きさを今回のモニター調査で確認できました。新聞を加えることで、情報や話題がいろいろなメディア、いろいろな人たちの間を行き交っています。今回は磯野家の25年後という話題性の高いキャンペーン事例でしたが、他のキャンペーンでもスコア水準の差こそあれ、同じような効果が期待できると思われます。

<広告モニター調査(大阪本社版)調査概要>

【調査地域】 大阪市と中心とした半径30キロ圏内と神戸市

【調査対象者】  調査対象地域に居住し、朝日新聞を購読する15~69歳の男女個人

【抽出方法】 確率比例2段抽出(エリアサンプリング)

【調査方法】 パソコンを利用したオンラインサーベイ(モニターパネル調査)

【標本サイズ】 調査ごとに約1,500人のモニターから朝日新聞読者の性・年齢比に応じて300人を抽出

【回収数(率)】 223(74.3%)

【調査実施日】 2008年9月14日

【調査企画・設計】 朝日新聞大阪本社広告局

【調査機関・レターヘッド】 ハイパーリサーチ(株)