(1)イントロダクション:新聞閲読者の検索行動の量的、質的アプローチ

新聞閲読と検索行動の分析結果を4回にわたり報告

 長い間、新聞広告の効果測定は、広告の到達範囲(リーチ)の広さや、信頼性に代表される媒体評価の側面で語られてきた。それらの価値が他のメディアに対して圧倒的であったがゆえに、それ以外の価値が語られないか、または注目されてこなかったのかもしれない。

 一方、インターネットの普及や消費者の多様化に伴い、広告効果についてより多元的に把握する必要が、コミュニケーション設計の実務においても生じている。すなわち、広告が単に消費者に届き、認知されたかのみならず、AISAS®の考え方のように、Attention→Interestといった意識ベースに加えて、Search→Action→Shareといった「行動ベース」の指標も非常に重要になってきた。つまり、しだいに重要性を増している「検索行動」とメディア接触の関係性を検討することは、キャンペーン設計やメディアプランニングにおいて非常に重要な要素となりつつある。

 そこで、電通より4回にわたり、新聞を読む人(以下、『全国紙閲読者』)、読まない人(以下、『非閲読者』)について、検索行動のデータを紹介するとともに、新聞閲読有無と検索行動の関係性について報告する。初回は、新聞閲読有無が検索行動におよぼす違いについて概観するとともに、主に量的な側面からの分析を通じ、検索という視点から新聞メディアの新しいインサイトを得ていく導入としたい。

電通オリジナル分析システム「dentsu-CONNECT MEDIA®」

 電通では、ウェブサイトの接触履歴や検索履歴と、マスメディアの接触をシングルソースデータとして分析できるシステム「dentsu-CONNECT MEDIA®」を、独自に開発・運用している。本システムは、全国1万数千人パネルの自宅パソコンにソフトをインストールし、ウェブ行動を24時間365日追跡可能な、ビデオリサーチインタラクティブの「WebReport/WebPac」をデータソースとして、インターネットでのサイト接触や検索履歴データを基点とした分析が可能である。

 今回の分析では、朝日・読売・日経新聞の朝刊閲読者を「全国紙閲読者」n=2,767)とし、「非閲読者」(※1、n=686)との比較を中心に、2009年8月1日から9月30日までのデータを対象に分析を行った。また、検索履歴データは、代表的な8つのポータルサイト(※2)を対象にした。

進むインターネット検索行動のコモディティ化

 まず、「dentsu-CONNECTMEDIA®」でのインターネット接触状況について見ていく。図1―1に1週間のインターネット利用時間の平均を、図1―2に1週間の検索回数の平均をそれぞれ示した。全国紙閲読者に比べ非閲読者のインターネットの利用時間が長く、また検索回数も多いため、一見すると非閲読者のネット関与が高く、全国紙閲読者が低く見えるかもしれない。

1週間のインターネット利用時間の平均
1週間の検索回数の平均

 しかし、図1―3に示すとおり、期間内に検索をした人の割合では、全国紙閲読者の方が非閲読者に比べ高くなっている。このように、検索行動は新聞閲読有無の違いによらず広く行われ、いまやコモディティ化しているとも読み取れる。

期間内に検索をした人の割合

検索行動の質的な分析アプローチの必要性

 全国紙閲読者と非閲読者の検索行動の目的は何なのだろうか。検索を習慣的(1日1回以上)に行っている人に、検索を行う目的について複数回答で尋ねた結果が図2である。「個人的な趣味、娯楽の情報収集のため」と回答した人は、全国紙閲読者、非閲読者ともに85%前後で差が見られない。しかし、全国紙閲読者の3人に2人が「仕事や研究、勉強の情報収集のため」を挙げ、非閲読者のスコアを上回った。

 一方、「暇つぶしのため」では、非閲読者のスコアが高くなっている。新聞紙閲読者が暇つぶしでなく、積極的な目的意識を持って検索をしているとすると、検索を通じた企業・商品コミュニケーション計画を立案する上で、より効果的な層だといえるだろう。検索行動を考えていく上では、検索回数や時間だけでなく、こうした質的なアプローチも考慮する必要があるだろう。

検索目的

 次回も引き続き、「dentsu-CONNECT MEDIA®」の検索履歴データを活用し、全国紙閲読者と非閲読者の検索行動の特徴を中心に、質的なアプローチによる新聞のメディアインサイトの考察を報告していく。(第2回に続く)

 (※1)非閲読者:全国紙、地方紙、ブロック紙、専門紙、スポーツ紙のいずれも読んでない人
 (※2)Yahoo!JAPAN, Google, MSN Japan, goo, Infoseek, Jword, excite, All About

(電通 ビジネス統括局 プラットフォーム・ビジネス開発
 マーケティング・スーパーバイザー 春田英明/チーフアナリスト 魚住高志/リサーチャー 廣田周作)

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新聞の検索行動への影響を探る~(1)新聞閲読者の検索行動の量的、質的アプローチ~(276KB)