企画広告に見る新聞のコンテンツマーケティング

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新聞広告には、広告主が制作する広告(純広告)の他に、新聞社が制作する広告(企画広告)があり、読者に興味関心のある情報を提供することで、広告効果の向上を図っています。デジタルの領域で注目されているコンテンツマーケティングですが、本稿では、こうした企画広告の広告効果といった観点で、新聞のコンテンツマーケティングについて、J-MONITORの蓄積データを使って探りました。

接触率高い純広告

 新聞広告では、広告内に「企画・制作 朝日新聞社メディアビジネス局」といったクレジットを入れて、新聞社が制作した広告(企画広告)を、広告主が制作した広告(純広告)と区別している。

 本稿では、J-MONITOR定型調査の蓄積データを使って両者を比較することで、企画広告が読者にどのように評価され広告効果につながっているのか探った。

 使用したデータは2011年4月から2019年3月までに朝日新聞朝刊に掲載された15段カラー広告(n=4,924件)である。

 表1は「企画広告(n=770件)」と「純広告(n=4,154件)」それぞれについて、定型調査項目のスコア平均を算出し比較した表である。「平均値の差」は、企画広告のスコア平均から純広告のスコア平均を引いた値である。

※使用したデータは定型調査データ(2011年4月~2019年3月 朝日新聞東京本社版朝刊15段カラー広告 n=4,924件)
※J-MONITOR分類の「企画広告(n=770件)」「純広告(n=4,154件)」それぞれについて定型調査項目のスコア平均を算出。
※「平均値の差」=「企画広告のスコア平均」-「純広告のスコア平均」 ※「平均値の差」を、F検定およびt検定で検定(有意水準5%)

 広告接触率について見てみると、「平均値の差」が-1.55ptと、純広告の方が企画広告より平均値が高い。有意確率が0.00<0.05なので、この差は統計的に有意である。純広告の方が企画広告より広告接触率が高くなる傾向があることが分かる。

共感と話題性で拡散する企画広告

 では、企画広告が純広告のスコアを上回っているのはどんな項目だろうか。

 広告4評価については、「広告理解度」は有意な差は見られなかったが、「広告興味度」「広告好感度」「広告信頼度」のスコアが高く、企画広告に対する読者の評価は総じて高い。

 広告の印象では、「役に立つ」「自分たち向けの」のスコアが高い。記事体広告で商品の特性を説明することが多い企画広告の有用性が評価されている。

 また「説得力がある」「共感できる」「よい広告を出している」といった共感性のスコアが高く、読者の共感を得ている 。

 さらに「話題性がある」といった話題性のスコアも高い。

 広告による態度変容では「インターネット(ホームページ以外)で比較したり調べてみたい」「まわりの人と話題にしたい(ブログ、SNSの発信含む)」のスコアが高く、企画広告が、ネット検索や情報の拡散につながっている。

 企画広告に対する読者の評価は総じて高く、共感や話題性の高さが情報の拡散につながっているようだ。

新規広告(ブランド)には企画広告を

 調査前企業(ブランド)認知状況や他媒体での同一内容接触経験を見てみると、「この広告を見て初めて知った」や「他媒体で見聞きしていない」のスコアが高い。

 企画広告が、レギュラー広告主よりも新規広告主や新ブランドに多く活用されていることが分かる。

 図1は全データ(n=4,924件)を使って、調査前企業(ブランド)認知状況の「この広告を見て初めて知った」人の割合と広告4評価の相関分析をした結果である。

※使用したデータは定型調査データ(2011年4月~2019年3月 朝日新聞東京本社版朝刊15段カラー広告 n=4,924件)
※数値は相関係数(有意水準5%で有意)

 4評価とも負の相関が見られ、初めて見た広告に対して、読者の評価は総じて厳しくなっている。

 企画広告は、新規広告や新ブランドなど読者が初めて接する広告を多く扱っているにもかかわらず、純広告より評価が高い。

 認知度がそれほど高くなかったり、新聞広告を初めて出稿するなら、企画広告を試してみてはいかがだろうか。

(朝日新聞東京本社 メディアビジネス局 マーケティング・ディレクター 真板 誠)


◆特集「メディアが開くコンテンツマーケティング ─デジタルの、その先へ」はこちら

調査概要

■J-MONITOR
調査地域: 首都圏【東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県】
調査対象: 調査対象地域に居住し、朝日新聞を朝夕刊セットで定期購読する15~69歳の男女個人
抽出方法: 新聞広告及びインターネット調査モニターパネルからの公募。応募者をJ-READの当該地域・対象者の性×年齢・職業・家族人数等の属性に従い割付
調査方法: パソコンを利用したウェブ調査
標本サイズ: 1パネルあたり約300人の複数パネルを交互に運用
実査機関・レターヘッド: ビデオリサーチ


◆PDFでもご覧いただけます
icon_pdf冊子『広告朝日』26号掲載 Data&Analysis(208KB)