J-MONITORの蓄積データを使って、新聞広告によるブランドリフト効果を、統計的手法を使って推定しました。
「事前認知」と「新規認知」
J-MONITORの定型調査では、新聞読者のモニターに対して、新聞広告の広告接触状況やブランド認知状況を調査している。
ブランド認知については、事前認知者「(事業内容まで+名前は)広告を見る前から知っていた」や新規認知者「広告を見て初めて知った」を尋ねており、広告接触者「確かに見た+見たような気がする」との関係は図1のようになる。
本稿では、新聞広告によるブランドリフト効果を、広告接触によって増加した当該新聞読者における「新規認知者の割合(新規認知率)」と捉え、J-MONITORの蓄積データを使って推定した。
新規認知率(ブランドリフト効果)を推定する
図2は、2015年1月~ 2018年12月の朝日新聞に掲載された「企業広告」の定型調査データ(広告件数n=1,010件)を、「事前認知者の割合(事前認知率)」を横軸に、「広告接触者に占める新規認知者の割合」を縦軸にしてプロットし、回帰分析した結果である。
回帰式は以下の通りとなった。
「広告接触者に占める新規認知者の割合(%)」= -0.85 ×「 事前認知率(%)」 + 82.3
<決定係数(R2乗値)0.98>
この式から、広告接触者を分母とした新規認知者の割合を推定でき、両辺に広告接触率を乗じることで、有効回答者ベースでの新規認知者の割合(新規認知率)を算出できる。これがブランドリフト効果である。
ブランドリフト効果(新規認知率(%))=「広告接触率」×(-0.85×「事前認知率(%)」+82.3)
<決定係数(R2乗値)0.98>
決定係数が0.98と1に極めて近いことから、ブランドリフト効果を広告接触率と事前認知率で精度良く推定できることが分かる。
ブランドリフト効果は、広告接触率に正比例し、事前認知率が小さいほど大きくなる。つまり、広告接触率が高ければ高いほどブランドリフト効果が高くなり、認知度が低いブランドほど効率よく認知度をアップできる、直線回帰の分かりやすい結果となった。
シミュレーションしてみよう
具体的に、上式を使って、企業広告の認知度のブランドリフト効果を推定してみよう。
例えば、企業認知度が30%の企業広告を朝刊全5段多色で出稿する場合を考えてみる。
広告接触率は、「段数」などの広告の属性によって推定できるので、朝刊全5段多色広告の広告接触率は71.0%となる(注※)。
事前認知率30%を当てはめると、新規認知率(ブランドリフト効果)は40.3%となり、広告接触によって当該新聞読者の認知率が30%から70.3%まで向上すると推定できる。
本稿で求めた回帰式は、実際に新聞広告に掲載した際の効果検証にも役立つ。「広告接触率の割には認知度が上がった」などの検証である。ぜひ、試していただきたい。
(注※)J-MONITORオフィシャルサイトで紹介されている数量化Ⅰ類分析による回帰式を用いて推定した。(朝日新聞東京本社 メディアビジネス局 マーケティング・ディレクター 真板 誠)
■J-MONITOR
調査地域: 首都圏【東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県】
調査対象: 調査対象地域に居住し、朝日新聞を朝夕刊セットで定期購読する15 ~ 69歳の男女個人
抽出方法: 新聞広告及びインターネット調査モニターパネルからの公募。応募者をJ-READの当該地域・対象者の性×年齢・職業・家族人数等の属性に従い割付
調査方法: パソコンを利用したウェブ調査
標本サイズ: 1パネルあたり約300人の複数パネルを交互に運用
実査機関・レターヘッド: ビデオリサーチ
◆PDFでもご覧いただけます
冊子『広告朝日』24号掲載 Data&Analysis(290KB)