あるロングセラー商品の事前・事後認知と購入意向の関係
J-MONITORの個別定型調査では、広告に掲載された商品ブランドの、広告を見る前の事前認知「商品内容まで知っている」「名前は聞いたことがある」)と広告を見た後の事後認知(「初めて知った」「あらためて注目した」)の2種類の認知度を測定している。
図1・2は、あるロングセラー商品(トイレタリー商材)の広告について調査した結果である。図1では、事前認知者計(「商品内容まで知っている」+「名前は聞いたことがある」)が80%から90%前後で推移しており、本商品の知名度の高さがうかがえる。
また、購入意向者の割合が、「商品内容まで知っている」人の割合(図1)や「あらためて注目した」人の割合(図2)と連動しているように見える。
「商品内容まで知っている」「あらためて注目した」が購入意向に影響
そこで、事前・事後認知と購入意向の関係を探るため、他の蓄積データも使って重回帰分析という統計的手法で分析した結果が表である。分析には、朝日新聞東京本社版(2012年3月~ 2017年9月)に掲載された商品広告の個別定型調査データ10,533件を使用した。標準化係数が大きい項目(説明変数)ほど購入意向への影響が大きいことを表している。
※ J-MONITOR分類「広告種別」で「商品営業広告」「商品直販広告」に分類された個別定型調査データで分析。
※ 回帰係数はいずれも有意水準1%で有意。
モデル1では「商品内容まで知っている」の標準化係数が0.55と高く、商品内容を知っているかどうかが購入意向に影響していることが分かる。「名前は聞いたことがある」の標準化係数は−0.17でありマイナスの効果が見られるが、購入意向への影響は小さい。
モデル2では、「あらためて注目した」が「初めて知った」より標準化係数が大きい。既存の認知者の注目度を上げた方が新規の認知者を獲得するより購入意向者増に効果があることが分かる。
以上の結果から、広告を見る前に「名前を知っている」程度では広告効果は期待できない。広告効果を上げるには、認知レベルを「商品内容まで知っている」まで高める必要があり、新たに認知を広めるよりも認知者の注目を集める方が、広告効果が上がりやすいことが分かった。
認知レベルの向上と認知者に対する注目度アップがカギ
最後に、認知度の高い商品の購入意向を高めるためのコミュニケーションを考えてみよう。認知度の高い商品の認知度をさらに上げるのは、なかなか難しい。そこで、本稿で明らかにしたように、認知レベルを「名前を知っている」から「商品内容まで知っている」まで引き上げた方が、効率よく広告効果を上げることができると考えられる。そのためには、商品内容を詳しく説明できる説明媒体でPRしたり、キャンペーンで試しに使ってもらったりするなど様々な方法があるだろう。そして、認知度が高いということは効率よく認知者に訴求できるということであり、その認知者に対して、注目度の高い広告を訴求することで、大きな広告効果が期待できる。
認知レベルのアップに加え、認知者の注目度のアップが、認知度の高い商品の購入意向を効率よくアップさせるカギと言えそうだ。
(朝日新聞東京本社 メディアビジネス局 マーケティング・ディレクター 真板 誠)
■J-MONITOR
調査地域: 首都圏【東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県】
調査対象: 調査対象地域に居住し、朝日新聞を朝夕刊セットで定期購読する15~69歳の男女個人
抽出方法: 新聞広告及びインターネット調査モニターパネルからの公募
応募者をJ-READの当該地域・対象者の性×年齢・職業・家族人数等の属性に従い割付
調査方法: パソコンを利用したウェブ調査
標本サイズ: 1パネルあたり約300人の複数パネルを交互に運用
実査機関・レターヘッド: ビデオリサーチ
※J-MONITORの定型調査項目などの詳細はJ-MONITORオフィシャルサイトに掲載されています。
◆PDFでもご覧いただけます
冊子『広告朝日』18号掲載 Data&Analysis(752KB)