「その気になる」タイミングに 新聞広告を掲載
化粧品とサプリメントを中心とした健康食品メーカーのファンケルは2019年1月から毎月、朝日新聞朝刊に新聞広告を掲載している。同社は、日本でサプリメントを広めたパイオニアだ。1994年に健康食品事業を開始してから、2019年で25周年。節目の年を迎えるにあたり、あらためて同社の健康食品事業の存在意義を新聞広告で発信し、サプリメントユーザーの拡大を図っている。
2019年1月7日付 朝刊 970KB
その背景にあるのが「人生100年時代」の到来だ。ただ、健康で100歳を迎えることは容易ではない。健康寿命を延ばし、100歳まで健康で生き生きと楽しく過ごすために非常に有効なのが、サプリメントだという。マーケティング本部 広告宣伝部長の福本幸蔵氏は、次のように説明する。「サプリメントが健康に有効であることは、創業者であり代表取締役の池森賢二が創業時から言い続けてきたことです。しかし、日本ではなかなか根づかず、15歳から79歳を対象に調査をすると、約7割の人はサプリメントをとっていません。そこで、若年層からシニアまで、さまざまなターゲットに対して『これからの健康』について新聞広告で問題提起していこうと考えました」
そうした同社の姿勢を、「たのしく生きる、健康100年時代へ。」というコピーに集約。1月から展開している全ての広告に、コピーを入れている。1月7日と4月2日に掲載した新聞広告は、同社創業者の池森賢二氏が市場参入に至った思いや現在の考えを有識者との対談形式で語った。対談した有識者は、1月7日の第1回は健康院クリニック院長の細井孝之氏、4月2日の第2回は読売ジャイアンツ監督の原辰徳氏。「対談の利点は、有識者である第三者に池森の思いが理にかなっていることを肯定してもらえること。第2回の原氏はファンケル初のサプリメントの広告に出演いただいたご縁もあり、ユーザー代表として登場していただきました」
3月20日に掲載した全30段の新聞広告は、「サプリメントは、飲みたくない。」というメーカーとしては思い切ったキャッチコピーと、サトウサンペイ氏によるフジ三太郎の可愛らしいイラストを組み合わせることでインパクトを狙った。
2019年3月20日付 朝刊 471KB
対談広告の掲載日については、多くの会社の仕事始めの日である1月7日と、新元号が発表される翌日の4月2日を指定。「年初は、何か新しいことを始めるきっかけになりやすい。新聞の読者でもあるビジネスパーソンに対して1年が始まるタイミングで仕掛けていくことは、意味があると考えました。第2回の4月2日は、閣議決定によって新元号が決まった翌日なので、新聞を手にする人はいつも以上に多いはず。それを見越して掲載しました。広告は表現も大事ですが、見るタイミングも重要です。日付を限定し、その機を逃さず、その気にさせることができるのは新聞広告の魅力の一つだと思っています」
1月7日に掲載した対談広告は、 J-MONITORの調査によると好感度は50.0%、信頼度は58.6%、購入意向は47.3%で「一定の評価を得られた」と福本氏はいう。
差別化のポイントは 信頼できる企業かどうか
同社は、2016年から企業ブランディングに注力している。生活者が商品を選ぶとき、「どの企業が作っているか」を重視していると考えているからだ。「各メーカー、原料や製法など細かいこだわりはたくさんあると思います。しかし、今の日本において粗悪品はほとんどないため、生活者にとっては『どれも一緒』に見えているかもしれません。だからこそ、その商品を開発している企業が信頼できるかどうかは差別化のポイントになると思います」
同社の創業理念は、不安を安心に、不快を快適に、不満を満足になど、世の中にたくさんある「不」を解消すること。無添加化粧品は、化粧品で肌が荒れてしまう女性の不安や不満を解消したいと開発した。健康食品事業へ参入した理由も、もっと安価で世の中に浸透させたいという思いからだ。こうした同社の思いを発信するために、「正直品質。」という企業スタンスメッセージを制定。 FANCLのロゴを広告で使用するときは必ず「正直品質。」とセットで掲載している。「利益のためではなく、社会貢献のような立ち位置で事業を開始した思いを『正直品質。』という言葉に込めています」
2018年6月23日付 朝刊 750KB
2017年4月からテレビで企業ブランディングCMを放送し、「 正直品質。」である100の事実を冊子にまとめ、工場や研究所の見学に訪れたユーザーに配布している。2018年6月23日付の朝日新聞朝刊には、企業広告を掲載した。
こうした企業ブランディングは、ファン作りや企業イメージの向上にもつながっている。同社が実施した調査結果からも「正直品質。」という言葉を知っている人と知らない人では、好感度に30ポイントほど差があるという。「企業の思いを知っていると、たとえ商品を知らなかったとしても好意度や好感度が上がる。また、購入意欲のない人の好感度は10%ほどですが、購入意欲のある人は90%。つまり、商品の魅力を伝えていくだけでなく、企業の好感度を上げていくことが購入意欲につながることが分かりました」
※調査概要:2018年10月・Web調査/全国20 ~70代の男女・一般生活者対象/有効回答数9,093(ファンケル調べ)
現在は、企業広告と商品広告、事業広告の3つのレイヤーでファンケルの思いを伝えている。新聞広告を活用する理由については、「特にサプリメントの購入は、機能性や企業に対する信頼性が大切だと考えています。その観点から新聞を出稿媒体として選びました。コミュニケーションにおいては『コト体験』も重要だと考えており、新聞社主催のイベントを絡めた立体的な取り組みにも関心があります」
2019年度は「グローバルブランディング元年」と位置付け、まずは中国での展開を検討しているという。「ファンケルブランドは中国や香港で人気が高く、特に中国からの旅行者に売れています。現地の販売代理店が中国本土でもファンケルを販売しているので、日本で購入した旅行者が中国でも買い続けるために、何か施策を打ち出していきたい」と福本氏は締めくくった。