『朝日小学生新聞』と『朝日中学生ウイークリー』を発行する朝日学生新聞社の広告部長の金丸義郎氏に、朝日新聞グループのクロスメディアの取り組みである「メディア朝日」について、同社としての考えを聞いた。
指導要領の改訂で子ども新聞市場が拡大 学校とのつながりが強み
――『朝日小学生新聞』と『朝日中学生ウイークリー』、それぞれの媒体特性について教えてください。
『朝日小学生新聞』は、日本で唯一ブランケット判で毎日発行している子ども新聞です。創刊から46年、専任の記者により、全8ページで発行しています。『朝日中学生ウイークリー』は、全20ページのタブロイド判で毎週日曜日に発行している日本で唯一の中学生向けの新聞です。『朝日小学生新聞』、『朝日中学生ウイークリー』ともに「読んで楽しく、ためになる」をコンセプトに、旬のニュースをわかりやすく解説し、中学・高校受験をサポートしながら、趣味や娯楽のコーナーも充実させています。
小学生向け新聞を発行している新聞社にとって大きな転機となったのが、2011年度の学習指導要領改訂に「新聞を活用した授業」と明記されたことです。それに伴い、小学校の国語の教科書には、新聞記事が題材として取り上げられ、教師が「新聞の読み方」を教えてくれるようになりました。新聞を学習教材として活用する取り組み、NIE(Newspaper in Education)に拍車がかかりました。また、池上彰さんがニュースをやさしく解説するテレビ番組がブームになりました。子ども新聞を持たない新聞社でも、子ども向けのページを新設したり、小学生新聞に新規参入する新聞社も出てきました。このトレンドで『朝日小学生新聞』も着実に部数を伸ばし、2011年度には年間平均部数が過去最高の12万部台に達しました。
――「メディア朝日」について。
『朝日小学生新聞』では、「朝小リポーター」として90組の親子が登録しており、子どもや親子で、学校や地域のニュース、身のまわりの出来事などを取材し、子ども目線の記事を制作しています。その仕組みは広告にも応用しています。「メディア朝日」として取り組んだ三菱重工の記事体広告(2011年8月10日付)では、2名の朝小リポーターが「三菱みなとみらい技術館」を訪ねて、ロケットの発射と宇宙への旅を疑似体験したことを紙面にまとめました。また、映画『オズ はじまりの闘い』の広告(12年11月13日付)では、『オズの魔法使い』の読書感想文コンクール告知紙面をA2サイズの教材用ポスターとして、全国の小学校に配布したほか、剛力彩芽さんによる小学校出前授業を実施しました。
当社は、全国の小・中学生を対象に絵画や作文などのコンクールや、専門家を派遣する出前授業などを数多く実施しており、前述の取り組みはそれを活用したものです。人気女優である剛力彩芽さんによる出前授業は、スポーツ紙やテレビ番組で取り上げられ、映画のPRにもつながりました。学校に協力していただくイベントの企画、運営は、当社の得意とするところです。「メディア朝日」として朝日新聞と朝日小学生新聞がタッグを組むことで、映画のキャンペーンをより立体的な広告として展開することができました。
――カシオ計算機の電子辞書「エクスワード」の広告も「メディア朝日」の事例です。
『朝日小学生新聞』は、子どもたちのために毎年、夏休みに参加型のイベントを開催しています。今年は初めて3月に「朝小 春祭り in 学習院女子大学」を開催しました。その中の一つとして、小学生の親子が朝日新聞のコラムや天声人語を題材に、「エクスワード」の小学生モデルを体験できるワークショップを実施しました。『朝日小学生新聞』では、広告でその採録を3月23日付で掲載しました。『朝日中学生ウイークリー』でも、読者記者の「朝中特派員」に中学生向けのエクスワードの最新機種を体験してもらい、「中学生活 応援特集」として広告特集を掲載しました。
広告主の業種が広がれば 子どもの視野も広がる
――朝日新聞と協働するメリットは。
子ども新聞の魅力の一つは「子どもの可能性を広げるところ」と言われています。例えば、読者リポーターが三菱みなと未来技術館を訪問した記事体広告が、読者に宇宙や月に興味を持たせるきっかけとなる可能性もあるわけです。当社の広告主の多くは、学習塾や書籍、映画など、子どもに関連する企業が多いのですが、メディア朝日として朝日新聞と取り組むことで、これまで弊紙に出稿することのなかった企業とタイアップすることもでき、テーマによっては、読者である子どもたちにとって知識を広げるきっかけにもなると思います。
――一般的な業種の広告主にとって子ども新聞とは。
第三者機関の調査では、難関私立中学の合格者は『朝日小学生新聞』の読者の割合が高いという結果が出ました。小学生だけが読むのではなく、母親の85%が読んでいるという調査データもあり、広告においては教育熱心で問題意識の高いファミリー層にリーチできるという特性があります。一般企業にとっても、当社のメディアを通じてこうした親子に情報提供できることは大きなメリットだと思っています。
また、『朝日小学生新聞』には、小学生の子どもを持つ30~40代のお母さん向けの「朝日おかあさん新聞」や、就学前の子どもとその親をターゲットにした「朝日らんたろう新聞」も発行しています。今後は、こうしたメディアも「メディア朝日」に組み込んで活用していけたらと考えています。