朝日新聞グループ各社がメディアの垣根を越え、連携して広告主に企画・提案する「メディア朝日」の取り組みは2009年にスタートした。グループ力を駆使したクロスメディアの枠組みについて、テレビ朝日の営業局企画マーケティング部長の前田寿之氏に、同社の考えを聞いた。
営業活動を支援するため 様々なメディアとの組み合わせを模索
――営業局の企画マーケティング部とはどのような役割を担っているのでしょうか。
テレビの広告枠をセールスする営業局で、企画マーケティング部は、マーケティングに基づいた広告商品を企画し、営業部隊に「武器」を持たせることが最大のミッションです。例えば、ソーシャルメディアやウェブメディアと組み合わせた企画提案はもちろん、自社のイベントと広告枠を連動させるのも取り組みの一つです。
背景にはテレビの周辺環境の劇的な変化があります。地上波に加え、BSやCS放送もチャンネルが増え、インターネットでも映像コンテンツが配信されるなど、多チャンネル化が加速しています。視聴環境も、リアルタイムではなく録画して後で番組を見る人が増えるなど変わってきています。だからこそ、単にテレビ広告を超えた、クロスメディアでの取り組みが重要視されるようになっている。そして、その象徴的な取り組みが、「メディア朝日」だと思っています。
――朝日新聞と協業した実際の事例を聞かせてください。
3月に行われた「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」では、朝日新聞のスポーツ面のWBCの記事下に、また6月のサッカーW杯アジア最終予選ではスポーツ面の対向面に、アドバタイザーのロゴを記載した番組PR広告を出稿しました。記事と連動する形で、読者や視聴者にはわかりやすく、アドバタイザーもしっかりとアピールできたと手応えを感じています。
毎年12月に開催されるゴルフ大会「日立3ツアーズ選手権」は、テレビでは中継の番組CMを、新聞では中継番組の告知広告をテレビ面の表札広告で行いました。テレビ広告と新聞広告をパッケージで販売した事例です。
テレビと新聞の「得意分野」を補完し合い 企画の魅力を最大限に
――朝日新聞社と協業するメリットは。
テレビ局と新聞社、それぞれが得意とする広告主や業種があります。両者がタッグを組むことで、これまであまりお付き合いのなかった企業に接点が持てる。例えば、医療・教育・環境の関連業種の企業は、テレビにとっては今後、積極的に開拓していきたい分野。新聞は特集記事としてはもちろん、広告特集でもすでに多くの成功事例を持っています。
もちろん、逆のパターンもあります。深夜番組の「お願い!ランキング」に提供していただいているビックカメラさんは、朝日新聞にも広告を出稿しています。同社はそれまであまり新聞に出稿のない広告主だったと聞いています。
それぞれの強みを生かし、双方から効果的なアプローチができることに「メディア朝日」のメリットを感じていますし、今後も期待している点でもあります。
テレビCMは瞬時に多くの視聴者にインパクトを与えることで、ブランドイメージを一気に訴求することができる。一方、例えば旅行や不動産のCMで、旅行プランや物件の詳細を伝えることは難しい。その点、新聞はしっかりと説明ができます。新聞には長い歴史の中で報道機関として培われてきた高い信頼性があります。この信頼性は大きな媒体価値になると考えます。テレビと新聞が特性を補完しながら、パワーを増幅し、広告主様に満足いただける広告展開をすることが重要だと考えます。
――今後の課題、「メディア朝日」に期待することがあれば聞かせてください。
テレビ朝日と朝日新聞との協業は進んでいますが、グループにはBSやCS放送、出版、インターネットなど異なるジャンルのメディアがあります。各メディアに「得意分野」があるので、効果的な組み合わせを考え、どう具体的な企画提案に結び付けていくか。それを検討し、実践していくことが大きな課題です。
当社がこれから取り組みたい、医療、環境、教育といったジャンルでは、朝日新聞は意識が高い読者層が多い。つまり、朝日新聞と組むことで、新しい広告主との接点を持てる可能性が高まります。一方、テレビは番組ごとに視聴者層が変わるため、ターゲットを絞った広告商品の提案ができる点で新聞を補完できることも少なくない。協業するメリットを、今後もいろいろな視点から模索していきたいですね。