朝日新聞のスポーツ報道のポイントと、スポーツコミュニケーションにおける新聞が果たす役割を、西村欣也編集委員に聞いた。
力点はサッカーと海外スポーツ
── 朝日新聞のスポーツ面、関連記事のセールスポイントは。
朝日新聞は、Jリーグ百年構想パートナーの契約を2003年から継続しています。若い読者の獲得ということからもサッカーには特に力を入れ、月曜朝刊は1ページをサッカー記事にあてています。
また海外のスポーツに関しても、手厚く取り上げています。こちらも野球とサッカーが中心ですが、ロンドン、ニューヨークに記者を常駐させるほか、3、4人の記者が常に海外に出て、なるべく共同電を使わず、自社で取材する体制をとっています。
── ネットのような速報型メディアはスポーツ報道の脅威ですか。
情報をダイレクトに伝えることだけでなく、「文章」というものが、新聞の武器になると思います。記者の視点や切り口、文章の質の高さ、そして読み物としての完成度が我々の勝負どころです。
どのような問題も是々非々で書くのが新聞記者、朝日新聞の姿勢だと思っています。
── 04年の球界再編問題では、選手会支持を主張されましたが。
ある主張をする時は、どういう言葉を使えば読者に伝わるかを考えます。あの時は世論調査もやり、スト賛成の意見が反対を大きく上回る結果が出ました。また、こちらが書いた記事を読んで、相談にのってほしいという声を選手会側からもらったり、読者から手紙をいただいたりして、反響がありました。
── ジャーナリストとして、常に意識されていることは。
試合の記事もコラムも、自分は取材対象のことがわかっていないという前提で書いています。本当の気持ちというのは、本人さえもわかっていないかもしれません。たとえばイチローは、フォームを変えながらボールをとらえ、野手のいないところに運ぶことができる。頭が何を判断し、身体がどう働いたか。彼自身も説明できず、「自分はセンサーに従ってやっている」と言います。
私はそのバックグラウンドにあるものを拾い集めて、細かいチップを自分のフィルターを通じて再構成し、肖像を描くようなつもりで書くわけです。その肖像に対して、取材対象に「その通りだ」とか「そう考えてはいなかったけど、そういわれればそうだね」といってもらえれば成功です。
西村編集委員が担当する「Behind the Scene」は毎月1回、夕刊スポーツ面に掲載。
朝刊スポーツ面には、コラム「EYE 西村欣也」を執筆中