いつまでも守り続けたい、美しい風景や生きものたち——第34回「日本の自然」写真コンテスト表彰式開催

 7月9日、東京・築地の朝日新聞社にて、第34回「日本の自然」写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会 協賛:ソニーマーケティング)の表彰式が開かれた。

 今年のテーマは風景や動植物、人間の営みなど「いつまでも守り続けたい日本の自然」。プリント作品を対象にした「一般部門」には5,947点、30歳以下を対象にウェブで作品を募る「スペシャル部門」には、昨年の2倍を超える1,629点もの応募があった。

若者からの応募が倍増、デジタル技術で新たな写真表現を

 表彰式では主催者を代表し、朝日新聞社ゼネラルマネジャー兼東京本社報道局長の長 典俊があいさつした。「日本の風景、動植物を撮影することは、記憶を未来につなげ、自然破壊を防ぐことにもつながる」とコンテストの意義を語り、「今回、30歳以下を対象にしたスペシャル部門に昨年の倍の応募があった」と報告。「若い人が写真に真摯(しんし)に取り組んでいただいていることに感動を覚える」と喜びを語った。またソニー4K賞の審査で「プリントでは表現できない美しさに目を見張り、写真の新しい可能性を感じた」ことに触れ、「これからもコンテストが未来に向かって発展し、日本の自然を守ることに力を発揮できれば」と抱負を語った。

河野 弘氏河野 弘氏

 続いてソニーマーケティング代表取締役社長の河野 弘氏が登壇。ソニー4K賞、ソニーネクストフォトグラファー賞について紹介した。65インチの4Kブラビアでそれぞれの受賞作品を見せながら、「4Kテレビによる新しい写真の楽しみ方を提案したかった」「若い人にデジタル技術を最大限駆使しながら、新しい写真表現に挑戦していただきたい」と、賞に込めた思いを語った。カメラメーカーとしては新しいソニーの技術者が、情熱的にカメラの開発に取り組んでいることに触れ、ソニーがユニークなところとして、「イメージセンサー、画像処理、レンズを三位一体で開発しているところ」をあげた。さらにその取り組みの成果であるデジタル一眼カメラα9を紹介。ソニーの使命は、新しいカメラの提案や、新しい創作活動をバックアップすることを通し「カメラ業界に新しいものを追加していくことだ」とし、「これからもあっと驚くようなカメラを世の中に送り出していきたい」と締めくくった。

決定的瞬間をとらえた写真で、日本の自然のすばらしさを伝える

 今回のコンテストでは厳正な審査の結果、一般部門83点、スペシャル部門26点が入賞・入選作品に選ばれた。表彰式には49人の受賞者が参加。最優秀賞、中村征夫賞、福田健太郎賞、前川貴行賞、吉野信賞、米美知子賞、朝日新聞社賞、ソニー4K賞、ソニーネクストフォトグラファー賞などが発表され、賞牌や副賞が授与された。

 栄えある最優秀賞を受賞したのは、笹尾敏子さんの「三兄弟」。神奈川県大磯町の貯水池にアオサギが卵を産んだのを見つけ、2年間通ってヒナたちの決定的瞬間を写真におさめた。力強くシンメトリーな画面構成は、「成長の次の段階が予感される」と評価された。笹尾さんは「天にものぼる気持ち」と受賞の喜びを語り、3羽のアオサギの誕生から巣立ちまでを撮影した経緯を語った。「本当にいい被写体にめぐまれた」と謙遜しながら、自然のなかで天敵から身を守り、成長する子供、それを愛情深く見守る親鳥に、「人間の家族と一緒にいるような気持ちで毎回、ワクワクしながら撮影に行った」と振り返った。

最優秀賞「三兄弟」

最優秀賞「三兄弟」

笹尾敏子さん

笹尾敏子さん

 ソニー4K賞を受賞したのは小林一夫さんの「朝の光」。茨城県水戸市の竹林で、早朝の朝露をまとったタケノコを逆光で撮影したもので、朝のすがすがしさが伝わる一枚だ。4Kテレビで見ると、爽やかさとともに重厚感がより際だつ。小林さんは速達で受賞を知ったときの驚きとともに、「撮影したのはここ数年、通っている近くの竹林。朝早く出かけて見つけた1本のたけのこを、光が当たるのを待って撮った」と作品の狙いを語った。

ソニー4K賞「朝の光」

ソニー4K賞「朝の光」

小林一夫さん

小林一夫さん

 ソニーネクストフォトグラファー賞を受賞したのは田代弘平さんの「春へ」。裏磐梯の水辺の残雪に残った、うさぎの足跡をとらえた一枚だ。「足跡を見つけたときは、うさぎも雪を溶かす春の日差しを喜んでいるんじゃないかと感じた。そのときの気持ちをストレートに表現したかった」と田代さんは撮影時の思いを語る。目指しているのは、物語性があり、見る人がその場にいるように感じる臨場感ある写真。最後に「多くの人に東北の美しさを伝え、訪れたいと思っていただける写真が撮れるよう頑張りたい」と抱負を語った。

ソニーネクストフォトグラファー賞「春へ」

ソニーネクストフォトグラファー賞「春へ」

田代弘平さん

田代弘平さん

 総評は審査委員の吉野 信氏から。「今回もとてもいい作品が集まった。風景写真は同じような場所で撮ったものが多かったが、野鳥や動物の写真はいままで見たこともない、すごい瞬間を撮ったものがたくさんあった」と総括。偶然性にも左右される動物写真において、レベルの高い写真が撮れるようになったのには、高感度や早いシャッタースピードでも、シャープな写真が撮れるデジタルカメラの恩恵が大きいと指摘。その結果、動物写真を撮る人が増え、被写体も千差万別なものが出てきたという。一方、光線の具合など難しい面もある風景写真には、それだけチャンスもあるとのこと。「ジャンルにこだわらず、日本の自然のすばらしさを発信し続けられるよう、来年も応募してほしい」と呼びかけた。

 今回の受賞作品は、20日まで銀座ブレイス6階にあるソニーイメージングギャラリーに展示される。さらにその後、全国14会場を巡回展示。会場では受賞作品をブラビアで鑑賞できる。(一部、ブラビアで鑑賞できない会場があります)。

 詳しくは以下ホームページをご覧ください。
・全日本写真連盟ホームページはこちら
・ソニー特設サイトはこちら