50代以降の人生後半を豊かに生きるための情報を提供する、朝日新聞社の「Reライフプロジェクト」。紙面やウェブ媒体での発信だけでなく、リアルイベントの開催や会員コミュニティー「読者会議」の運営も行っている。コンテンツ制作にも深くかかわる「読者会議」と編集部のかかわり方や、Reライフ世代の課題解決に向けたクライアントとの取り組みなどについて、Reライフ.netの宮崎太介編集長と、Reライフプロジェクトのビジネスディレクターを務める鈴木毅氏に聞いた。
―― Reライフとはどういったプロジェクトですか
宮崎: Reライフは「もう一度」という意味のある「Re」という言葉の通り、50代以降、子育てといった忙しい時期が一段落した世代の方たちに向けて、人生100年時代の第二の人生を充実させて楽しく過ごすことを応援するために始まったプロジェクトです。
もともとは朝日新聞創刊135周年にあたる2014年、朝刊にReライフ面を作ったのが始まりです。その後、全社的な取り組みである「Reライフプロジェクト」として領域を広げ、著名人や社会に影響力のある方をお招きしたReライフフェスティバルを企画するなどしてきました。
―― 今、どのように活動されているのでしょうか
宮崎: 日曜日の朝刊などで展開しているReライフ面のほか、ウェブではReライフ.netというサイトがあります。私たちは会員コミュニティー「読者会議」向けのイベントを行ったり、それを報告するコンテンツを作ったりしています。また、メルマガ会員も5万人を超えます。
コンテンツ制作には、2017年の年初に立ち上げた「読者会議」にも関わってもらっています。これはReライフの会員組織のような位置づけで、2020年には1万人でしたが、現在では2024年8月の段階で約3万人に成長しました。
読者会議とともに創り上げるプロジェクト
―― どのようなコンテンツや内容に人気がありますか
宮崎: 定期的な読者会議会員へのアンケート調査で関心が高いのは食、健康、医療。これに旅行、スポーツ 、読書、教養などが続きます。景気や政治、そして会員それぞれが暮らす地域への関心もかなりあります。Reライフの読者はアクティブシニアの皆さんで、非常に「何かやってみたい」という意欲も高いし、「学びたい」という気持ちも旺盛です。
Reライフの看板コンテンツでいうと、まずは「腸から始める長寿生活」という特集。例えば腸活分野でテレビのご出演も多い京都府立医科大学大学院教授の内藤裕二さんの講演内容やインタビューを掲載しています。
朝日新聞の元記者で山岳ジャーナリストの近藤幸夫さんによる、初めて山を歩きたい人たちに向けた「Reライフ山歩き部」という連載記事もあります。同じく元記者で、テレビ朝日「報道ステーション」のコメンテーターも長く務めた恵村順一郎さんの連載もあります。恵村さんはパーキンソン病を患っていて、病と向き合いながら日々の暮らしをつづってくれています。
リアルイベントでは、2023年には終活や実家の片付けのセミナーもしました。私は登壇した専門家の聞き役だったのですが、自分の実家のことを念頭に置きながら質問をしていました。自分がまさにReライフ世代なので、「自分のこれから」の参考にもなります。2024年には、「夏休み企画」として会員の方々がそれぞれのお孫さんと一緒に本社を見学するというイベントを行いました。
―― 読者会議ではどのような活動をしていますか
宮崎: 講演会やセミナーなどのイベントに参加してもらうだけでなく、読者会議と事務局が一緒に何かをするというコミュニケーションをしているのも特長です。例えば、私たちReライフプロジェクトの事務局メンバーと読者会議の会員の方々で、近藤さんと一緒に山登りをしたり、腸活では応募した会員の腸内フローラを調べて健康を考える企画をしたりしました。私たちReライフプロジェクトのあり方などを直接意見交換することもあり、これも「事務局と会員のみなさんが一緒に行う作業」の一つと言えるかもしれません。
―― 山登りや健康など、かなり幅が広いですね。こういった企画のバリエーションで工夫しているところはありますか
鈴木: 読者の関心や悩み、シニア世代ならではの社会課題をとらえた企画を意識しています。例えばシニア住宅などの住まいの話や投資などお金の話も読者の関心が高いのですが、これは広告主のソリューションと重なりあう分野でもあります。こうした読者のニーズと広告主のソリューションを結びつけられるようなテーマを、発信していければと考えています。
シニア男性のニーズに応えたイベントも
―― 人生 100年時代の後半を応援するということでしたが、想定読者の世代や傾向を教えてください
鈴木: 読者の年代は50代、60代、70代が満遍なく大体同じぐらいですが、強いていえば60代がボリュームゾーンになります。男女比は、読者会議の属性は女性が6割程度で、男性も約4割います。他社媒体などのシニアコミュニティは女性が多いのですが、しっかりと男性も含有しているというところがReライフの特徴です。
例えば、2023年には11月19日の国際男性デーに合わせて男性の健康について考えるイベントを開催しました。
女性の健康や更年期についてはいろいろなメディアで取り上げられていると思います。でも、男性の健康は見過ごされがちということで、イベントと並行していろいろなコンテンツを配信しました。
宮崎: 男性の健康がテーマでしたが、ご夫婦でお見えになった方も多かったですね。
発信力の高い読者会議メンバーの言葉がもつ説得力
―― 読者会議は、熱心にいろいろなことに挑戦してみようとか、こんなことやってみたいというような、意思表示されて行動される方が多い印象です
宮崎: そうですね。会員の方たちの特徴として、ご自分の経験や意見などに関する発信力や表現力を持っている人が多いです。話が上手で、自分の言葉で喋れる人が多く、それでいて人の話もしっかり聴ける。そんな方がとても多いと実感しています。
―― 読者会議と企業とタイアップ事例をいくつか教えてください
鈴木: 例えばシニアの住まいについて、ご紹介させてください。
シニアの住まいに関する情報は世の中にたくさんあふれていますが、自分の目で見て感じて、自分に合うかどうかを考えたいというニーズがあります。また、「元気なうちに入居するけれども、将来介護が必要になった場合が不安」とか「体調が悪くなったときのサポートはどうか」など、様々な疑問や不安を抱えていらっしゃいます。
そこで、社会福祉法人聖隷福祉事業団様の協賛を得て、浜松市にある介護付有料老人ホーム「浜名湖エデンの園」に読者会議の3人と1泊2日の体験入居を行い、読者会議の目を通じてこれらの課題にスポットを当てました。
体験入居では実際に施設を案内してもらい、お食事をとってもらったり、お部屋に泊まってもらったりしました。また、入居者との座談会を開いて、読者会員の率直な質問に対して入居者から「施設のここがいい」などざっくばらんに語っていただきました。その模様を紹介する記事を新聞紙面でタイアップ広告という形で掲載しました。
読者会議の方に実際に足を運んで見てもらって、自分たちの言葉で発信してもらうことで、共感を得られる言葉になります。「自分と同じような読者の方が体験して良いというなら」と、広告主のサービスや商品に共感してもらえる。そういうコンテンツを広告主と一緒に作っています。
―― やはり自分が関心を持って応募されている読者会議のメンバーの方が、自分の言葉で言っているところに説得力がありますね
鈴木: そうですね。いわゆる純広告と言われる広告は、時として広告主側からのメッセージを一方通行で伝えることになってしまう面もありますが、読者会議の会員と一緒に取り組むタイアップ企画では、第三者の目線が入る。しかも読者と同じような立場の方たちの目線です。読者会議の会員に自分ごととして語ってもらうことで、読者の方も自分ごととして捉えることができる。そこがReライフの強み、メリットですね。
―― 読者会議とのタイアップ事例で、ほかにはいかがですか
鈴木: シニアの食生活事情についての事例をご紹介します。
シニアの方々は健康に気遣う中で食生活の改善に関する情報も得ていますが、実際に栄養バランスが整った食事をとることは容易ではありません。一度にそれほど多くの量は召し上がれない、あるいは献立がワンパターンになりがちである、といった事情や課題のほかに、そもそもシニアの皆さんも仕事や地域のコミュニティー活動などで忙しく、3食でバランスの良い食事を作るのが難しいという背景もあります。
そこで、明治様の「メイバランスMICHITAS(ミチタス)」という栄養補助ドリンクのタイアップ広告では、シニアの「毎日の朝食」というテーマで読者会議と管理栄養士さんによる座談会を行いました。座談会に先立ち、会員6人の朝ごはんを管理栄養士さんに分析してもらい、その結果を座談会で話し合ったのです。その席で、商品の試飲もしていただきました。
商品は、食生活に課題を抱えるシニアをサポートします。座談会に参加された会員も多忙な生活を送られていて、食事にも関心が高い人たちでした。ですので、「こういった栄養補助食品や健康補助食品があると、栄養バランスもしっかり摂れる」「美味しく楽しく、無理なく健康な生活ができる」と、等身大の言葉でメッセージを発信できました。
多様なメディアと読者会議をさらに生かす取り組みを
―― あらためて、Reライフの強みを聞かせてください
宮崎: ご紹介したようにメディア、リアルイベント、そしてコミュニティーの3つの取り組みがうまくかみ合って、課題を解決していくところが特長ではないでしょうか。
また、読者会議にはSNSを使っている人が非常に多いのですが、コラボレーションする広告主に気づきを与えてくれるような発言をする、発信力が高い会員が多いというのは実感しています。
鈴木: シニアに向けて行動を起こしたい広告主にとってターゲットとなるコミュニティーである、読者会議を持っていること。これが一つ目の強みです。読者会議のみなさんが自分ごととして情報発信をしてくれるので、読者が行動変容を起こしやすいようなコンテンツ作り、タイアップなどがしやすいという特長があります。
もう一つはメディアの選択肢の多さです。新聞紙面のReライフ面、WEBサイトのReライフ.net、そしてリアルイベント。さらにグループメディアとして、BS朝日や系列地方テレビ局と一緒に取り組みを行った実績もあります。
広告という形でなくても、クライアントが抱える課題について読者会議の会員を対象にアンケートを行ったり、デプスインタビューでシニア層の意識を深掘りしたりすることによるコンサルティングもできます。
従来の広告タイアップだけではない、いろいろなソリューションを持っているのがこのReライフプロジェクト。それが社内の一事業部だけではなく、全社的にいろいろな部署と連携してできるのが強みだと思います。
読者との深くて大きなつながり さらに活性化させたい
―― これからReライフというメディアをどのように育てていきたいですか
宮崎: 読者会議の会員の皆さんの満足度を高めるのが一番の目的ですね。読者会議のみなさんがいきいきと活動していることを紹介し、新しく関心を持ってもらえる人をさらに増やしたいなと思っています。
そうやってReライフへの満足度を高めてもらうことによって、朝日新聞グループの他のサービスや商品に関心を持ってもらう窓口になればいいなというのも意識しているところです。また、この先は会員同士の交流の場みたいなものも少しずつ進めていきたいなと思います。
私は編集局での生活が長かったのですが、朝日新聞社の中を見回しても、読者とこれだけのつながりを持てている組織を、この規模で抱えているところはないと思っています。だから、可能性を秘めた、この読者会議をどういうふうに生かして活性化させるかが、私の大事なテーマです。
Reライフプロジェクト メディアガイド
健康、お金、働き方、趣味、仲間づくりなど、人生後半を豊かに生きるための情報を提供するReライフプロジェクト。タイアップやReライフフェスティバルへの協賛など、豊富な事例とともに様々な企画をご紹介します
朝日新聞社メディア事業本部シニア事業部ビジネスディレクター、「Reライフ.net」編集長。1989年入社。記者として大阪社会部や政治部、世論調査部などで取材。50代初めに九州へ単身赴任してサーフィンを覚え、「いつでも初心者」で湘南や房総に通う。
朝日新聞社メディア事業本部シニア事業部員。2015年入社。東京本社と名古屋本社の広告部門で広告営業を担当後、2022年からReライフプロジェクトのビジネスディレクターを務める。アクティブシニア領域における企画開発・事業推進を行っている。