「マスメディア」を目指す 日本初のインターネットテレビ局

outline
サイバーエージェントはテレビ朝日と共同出資会社を設立し、2016年4月11日にインターネットテレビ局「AbemaTV」を本開局しました。24時間放送で、テレビと同じ編成型。約30チャンネルはすべて無料で視聴可能です。コンテンツの充実と同等に、使いやすいアプリ(プロダクト)のデザインにも力を入れ、「マスメディア」としての確立を目指しています。

24時間、全チャンネル無料スマホで気軽に楽しめる

野村智寿氏 野村智寿氏

 AbemaTV(アベマティーヴィー)は、サイバーエージェントとテレビ朝日の共同出資会社が運営するインターネットテレビ局だ。約30チャンネルすべて無料で、パソコンはホームページから、スマートフォンとタブレット端末は専用アプリをダウンロードして視聴する。名前やメールアドレスなどを登録する必要がなく、誰でも気軽に見られるのが人気の理由。4月のサービス開始から約半年でアプリのダウンロード数は900万を突破した。AbemaTVでプロモーションを担当するサイバーエージェント宣伝本部長の野村智寿氏は「アプリのダウンロードのペースは鈍化せず順調です。間もなく1,000万ダウンロードを突破する見込み」と話す。

 24時間放送で、チャンネルごとに番組が編成されている。番組の合間にはCMも流れる。定額制のオンデマンド方式ではなく、無料の24時間編成リニア型を採用した理由について、野村氏は次のように説明する。「自分が好きなものを能動的に選ぶことは、確かに合理的ですが、実は意外とエネルギーが必要なのではないでしょうか。我々は、テレビのようにザッピングしながら見たい番組に偶然出会う『受け身視聴』のほうが気軽に楽しめるのではないかと仮説を立て、既存テレビと同じ編成型に挑戦することにしました」

2016年7月放映のTVCM 2016年7月放映のTVCM

 メインターゲットは、30歳以下。テレビとのすみ分けを図っている。だが、目指しているのはテレビと同じ「マスメディア」だという。

 「スタート当初は、意外にも30、40代の視聴が最も多かった。夏以降から徐々に30歳以下の視聴が伸びてきました。現在は、約6割強が35歳以下という状況です。ただAbemaTVとしては、『マスメディア』を目指す以上、子どもからシニアまですべての層に受け入れられる番組編成が必要だと思っています。30代以下に照準を合わせつつ、コンテンツの幅を広げていくことは課題の一つ。インターネットテレビ局がマスメディアとなるためには、1週間の利用者数(WAU/ウイークリーアクティブユーザー)が1,000万人を超えたらマスメディアと呼べるのではないかと定義しています。10月現在のWAUは、300万人を超えたところ」と語る。

予想以上の反響があった番組表を模した新聞広告

※画像はPDFへリンクします。 2016年7月16日付 朝刊 エリア広告特集 2016年7月16日付 朝刊 エリア広告特集

 インターネットテレビ局らしいサービスもある。それは、番組を見ながらリアルタイムでコメントできる機能だ。画面の横にコメント欄があり、随時、感想を入れられる。ツイッターとも連動でき、話題性のある番組は拡散されていくという。「コメントしたタイミングの動画も切り出される仕組みになっている。若い層にリーチさせる仕掛けのひとつ」(野村氏)

 今年の7月には、新聞広告を活用してプロモーションも展開した。「可処分時間が増える夏休み前というタイミングを狙いました。番組表を模したデザインはAbemaTVが一体どんなものなのか、説明しなくても分かってもらえるように考えたアイデアです。『テレビ局らしさ』を伝えることができたと思っています。反響は予想以上でした。掲載した当日は、検索経由のPCの視聴数とQRコードからのアプリのダウンロード数がぐんと伸び、今までとは違う層にリーチできた手応えがありました」

使い方が感覚的に分かりすぐに楽しめる質の高いデザイン

 AbemaTVは、番組の見やすさも魅力の一つだ。特にスマートフォンアプリは、非常に使いやすく設計されている。スマートフォンの小さな画面でも約30チャンネル以上ある番組をストレスなくザッピングできる。画像の読み込みも速く、ストレスを感じない。

 「初めてアプリを立ち上げた瞬間から使い方が感覚で理解でき、すぐに楽しめるシンプルで洗練されたデザインを目指しました。習慣的にザッピングして楽しんでもらうためにも、サービスにおいて重要なことについて、社長の藤田は『コンテンツ50%、プロダクト50%』と常に言っています」

 AbemaTVでは、音楽番組や映画など番組を調達して放送するだけでなく、ニュースやバラエティーなど、オリジナル番組も制作している。その数は、レギュラーで60番組ほど。コンテンツの内容はもちろん、映像のクオリティーにもこだわっているという。「インターネットの動画配信と聞くと、素人っぽいイメージがあると思います。私たちはそこから脱却するために、テレビと変わらないクオリティーを目指しています」

 今年の冬に放送予定のAbemaTV初となるオリジナルのドラマも制作中だという。今後は、クロームキャスト(※)に対応するなど、テレビデバイスへの対応も行っていく。「マスメディアとして成立するために、今は投資の段階。規模を確立させた後、収益化に向けて動き出すという考えでいる」と野村氏は意気込む。

(※)クロームキャスト(Chromecast)とはグーグルが開発したデバイスのこと。テレビに接続すればウェブ上の動画をテレビ画面で見ることができる。
※2016年10月6日取材