啓発的なメッセージを新聞広告でメディアを駆使し、活動意義を発信

 アジア諸国において、地球温暖化をはじめとする環境対策、生物多様性の保全、循環型社会の構築を目指すイオン環境財団。市民にとって身近な植樹事業や環境団体への助成活動を広く知ってもらうため、新聞広告などを通じてコミュニケーションに力を入れています。

地球環境課題に注目し環境活動を支援

山本百合子氏 山本百合子氏

 20世紀の終わり、オゾン層の破壊、温暖化、森林の激減、砂漠化、酸性雨の多発、海洋汚染など、様々な地球環境問題が顕在化した。その保護には、国家の政策のみならず、民間企業や市民団体の力が必要ではないか。この思いから、21世紀を目前にした1990年、イオン環境財団が設立された。環境保全に取り組む団体への助成や国際賞・国内賞での顕彰、植樹、環境教育などを活動の主な柱としている。

 「イオングループは、『お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する』という理念を掲げています。お客さまの多くが環境保全活動に関心をお持ちで、『自ら活動に関わりたい』という方が増えています。イオン環境財団は、国境を超えて植樹活動をはじめもろもろの活動を地域の皆さまと共に行っていることが最大の特徴です」

 そう話すのは、事務局長の山本百合子氏。植樹事業と並んで同財団が設立当初から継続しているのが、「生物多様性の保全とその持続可能な利用」のために活動する団体への助成だ。助成金額は毎年約1億円。

 「以前はごく少数だった環境活動団体は、今や数えきれないほどに増えました。私たちは、有識者に意見を仰ぎながら、より地域に密着し、より地域住民の参画が活発な団体を選んで助成支援しており、これが『イオンらしさ』と言えると思います。助成先の公募や助成先発表の新聞広告を展開しました。若い世代にも分かりやすい広告を心がけており、保護活動に関係している動物の写真を掲載しました」

 近年は、環境教育に力を入れている。2012年には、「アジア学生交流環境フォ―ラム」をスタート。アジア各国の学生約100人が環境問題について意見を交換し、成果を発表し合うフォーラムだ。早稲田大学、ベトナム国家大学ハノイ校(ベトナム)、王立プノンペン大学(カンボジア)、清華大学(中国)、高麗大学校(韓国)、マラヤ大学(マレーシア)、インドネシア大学(インドネシア)など、各国大学と連携を強化しており、国家の次代を担う人材を育成している。

 「各国の環境活動の体験やエコショッピングセンター視察など、フィールドワークを中心とする体験型プログラムです。参加者は、今後、環境行政を担いうる優秀な学生たち。彼らの提言から学ぶことがたくさんあります」

 環境教育の一環として、国内外の中学校への太陽光発電システムの寄贈も続けている。

日本の課題解決のノウハウをアジアの若者に伝えたい

 環境教育を重視する理由について、山本氏はこう続ける。

 「日本は、イタイイタイ病や水俣病などの公害病が社会問題化し、その克服に努めた国です。イオングループ発祥の地のひとつである四日市市も、四日市ぜんそくに悩まされました。しかし、問題を引き起こしたコンビナートはいまや観光地に変わっています。

 近年、アジア各地で、かつての日本のような問題が起こっています。必ず、日本が培った課題解決の技術やノウハウが大いに役立つはずですし、そのことを国内外の若者たちに伝えたいと思っています。

 一方、植樹本数は、この25年間で累計1,100万本になりました。参加者は年々増えており、先ごろ千葉市で開催した植樹活動には、700名の定員に対して1,200名のボランティアのみなさまが参加くださいました。

 コミュニケーションの成果もあると思います。啓発的なメッセージを広く発信したい場合は新聞広告、若者への訴求はフェイスブック、環境意識の高い人や専門家に向けては環境関係の専門誌と、目的や訴求対象によってメディアを使い分けています。また、社会的な環境意識の高まりもあって、一般のプレスセンターで行っていた記者発表を、環境省の記者クラブに変更したこともあります。併せてイオングループの店頭でも、情報発信や植樹参加者の募集などを行っています」

 この7月には、財団のウェブサイトをよりわかりやすく一新する予定。オフラインメディアとオンラインメディアをかけ合わせながら、事業の意義を伝え続けていく。

 「アジアでの環境保全活動は、経済成長とのバランスが問われます。環境政策、環境倫理、環境マーケティングなどに精通していないと、各国の人と志を共有することはできないと考え、現在、大学院で環境経営を学んでいます。愚直に学び、『お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。』というイオンの理念を自らも体現していきたいと思っています」

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