動物用医薬品の製薬会社が犬猫の殺処分減プロジェクトを牽引

 「メリアル・ジャパン」は、日本全薬工業とともに2010年から犬猫の殺処分件数減を目指した動物愛護プロジェクト「セーブペットプロジェクト」を展開しています。同社の主力商品「ネクスガード®」「フロントライン®」「犬フィラリア症予防薬」の売上げの一部を動物保護団体や日本獣医師会などに寄付をして、飼い主のいない動物たちを救うために役立てるという活動です。自社のウェブサイトをはじめ、朝日新聞のペット新聞「sippo」などを活用しながら、動物福祉の現状を伝えたり飼い主を啓発するための情報発信も積極的におこなっています。

人と動物の共生にむけた社会への恩返し

※画像はPDFへリンクします 2016年3月22日付 朝刊<br />※画像はPDFへリンクします 2016年3月22日付 朝刊

 ペットの犬や猫が長寿になったのは、動物用医薬品の発展が大きく寄与している。月1回の投薬でノミやマダニを駆除できる「ネクスガード®」や「フロントライン®」、致死率の高いフィラリア症の感染を防ぐ「犬フィラリア症予防薬」など、いずれも動物病院のみで処方される動物用医薬品で、ペットと暮らす人々からの信頼も厚い。これらを研究・開発したのがメリアル本社だ。

 その一方で、保健所等で殺処分される犬や猫が後を絶たないという現状もある。人と動物の共生が社会課題となる中で、犠牲になる犬や猫を少しでも減らすために、動物の幸福を願う動物用の製薬メーカーとしてできることはないか──そんな思いからメリアル・ジャパンでは「セーブペットプロジェクト」を立ち上げた。

 セーブペットプロジェクトとは、犬猫の殺処分数を減らすための活動で、メリアル・ジャパンが日本全薬工業に協力を呼びかけ2010年に始まった。「ネクスガード®」「フロントライン®」「犬フィラリア症予防薬」の売り上げの一部を動物保護団体および日本獣医師会に寄付している。ペットと暮らす人にとっては、自分の犬や猫の健康のために「ネクスガード®」「フロントライン®」「犬フィラリア症予防薬」を購入することで、飼い主のいない動物の健康や幸せにつながる仕組みだ。これまでの寄付金の総額は、3,300万円以上。医療費支援頭数は4,569頭にも及ぶ。

マー美奈氏 マー美奈氏

 セーブペットプロジェクトを立ち上げた経緯について、コンパニオンアニマル部マーケティンググループ寄生虫駆除剤グループ マネージャーのマー美奈氏は次のように語る。

 「2009年に行われた社内のマーケティングトレーニングで、参加者各自が自由に好きなトピックを課題にし、架空の企画書を作るという機会がありました。そこで、私は以前から心を痛めていた犬猫の殺処分について、企業として何ができるかを考えました。私がマネージャーを務めるフロントラインがトップブランドであり続けているのは、動物はもちろん、飼い主や動物病院の方々に支えてもらっているおかげです。だからこそ、恩返しをしたいという気持ちもずっとありました。そうした思いから、売り上げの一部を使って殺処分数を低減するためのプロジェクトのアイデアは自然に生まれました。ワークショップの回を重ねるうちに、参加メンバーから支持されるようになり、会社を挙げた社会還元プロジェクトとして始動することが決まりました」

動物福祉の意識を高めるために新聞メディアを活用

2016年4月23日付<br>タブロイド判「sippo」 2016年4月23日付
タブロイド判「sippo」

 動物福祉にまつわる情報発信にも積極的に取り組んでいる。セーブペットプロジェクトの活動内容は、自社のウェブサイトで詳しく紹介し、朝日新聞が発行しているタブロイド判のペット新聞「sippo」には、2013年から毎号、読み応えのあるタイアップ広告を掲載。飼い主のいない犬や猫が様々な形で新しい家族と出会い、幸せに暮らしている様子や動物福祉向上の為に活躍する自治体や動物保護団体を紹介する「シンデレラ・ストーリーズ」という記事を制作し、譲渡の成立数や問い合わせ先も盛り込んでいる。「動物福祉に対する意識は高まりつつありますが、まだまだ現実を知らない人は多い。そこで、弊社のウェブサイトや朝日新聞のタブロイド判sippoで啓発活動を行っています」(マー氏)

 記事の内容は、朝日新聞メディアビジネス局の担当者と相談しながら決めているという。「毎号、読者の反響など調査結果をレポートで頂き、それを踏まえて内容の切り口や、取材対象者を決めています。新聞広告は効果測定がしにくいというイメージでしたが、sippoはある程度の感触をつかむことができるんです。だから、社内でも理解されやすく、継続して出稿することができています」(マー氏)

セーブペットプロジェクトは、寄付金を毎年三つの団体へ贈呈しています。 セーブペットプロジェクトは、寄付金を毎年三つの団体へ贈呈しています。

 現在、セーブペットプロジェクトの寄付金は三つの団体に贈呈されている。動物のためのオンライン寄付サイトを運営する「アニマルドネーション」と東日本大震災直後に飼い主とそのペット達の救援活動をいち早く開始したNPO法人「WANWANパーティクラブ」。そして、迷子犬を減らすために、日本獣医師会を通じて全国の動物愛護センターにマイクロチップリーダーを贈呈しているという。最後に今後の展開について、マー氏はこう締めくくる。

 「セーブペットプロジェクトの活動を知って弊社の製品を使っている、というユーザーの声も届いています。プロジェクトを継続できるのは、製品の売り上げが順調だからこそ可能なんです。これからも、飼い主様や動物病院様のために、そして一頭でも幸せな動物が増えるように、できることを着々と続けていきたいと考えていますが、『うちでもやってみようか』という企業が一つでも増えてくれたら。そして、動物福祉に対する意識がもっと高まり、犬猫をとりまく環境が改善されることが理想です」

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