三菱ケミカルホールディングスグループは、持ち株会社、三菱化学、田辺三菱製薬、三菱樹脂、三菱レイヨン、生命科学インスティテュート、大陽日酸の6つの事業会社で構成されています。グループビジョンを訴求する新聞広告は、インナー向けにも重視。言語を替えてポスターにして、海外のグループ各社にも配布しています。
「KAITEKI実現」のビジョンを新聞広告で発信
現在、持ち株会社と6つの事業会社で構成される三菱ケミカルホールディングスグループは、2010年度から「KAITEKI」という独自のコンセプトを掲げ、2015年度に「KAITEKI実現」をビジョンと定めている。
KAITEKIとは、「時を超え、世代を超え、人と社会、そして地球の心地よさが続く状態」を表し、社会そして地球の持続可能な発展に取り組むことを提案したコンセプト。「温暖化や食糧、水資源などの不足など、地球規模で抱える問題があります。化学を介して解決へと導くことが期待されており、私たちはその一端を担っている、という考えです。グループが一体となりKAITEKIの実現に取り組んでいます」
そう話すのは、同社理事で広報・IR室長の髙阪 肇氏。社名の認知向上とグループの方向性を訴求するために、10年ほど前から新聞メディアを活用している。リクルーティングへの影響も考慮し、学生や親へのメッセージも意識しているという。
「私たちは、化学品の素材メーカーですが、そのジャンルは多岐にわたります。一体どんな会社なのか一言で説明するのが難しい。製品を伝えるという方法もありますが、そのほとんどが化学にまつわる素材なので、一般の方にとってはなじみも薄い。しかも、その数は2万点にも及びます。そこで、新聞広告はKAITEKIというコンセプトとその意味を伝えることに徹しています。ビジュアルは、若い世代の目も引くように、インパクトも重視しています」
2014年度の新聞広告では、KAITEKIのコンセプトを基にグループの事業や製品を挙げて、ホームページの広告特設サイトに誘導した。「循環型の社会が形成されていたといわれる江戸時代と我々の環境への意識を重ね合わせ、浮世絵をモチーフにしました」。2015年10月に掲載した新聞広告は、「グッジョブ!KAITEKI」というメインコピーとハンドサインを草原の木で表現。ユニークなビジュアルでインパクトを狙った。
新聞広告の反響については、次のように説明する。
「KAITEKIを打ち出した当初は、企業は儲けなければ意味がないのでは、という反応もありました。けれども、リーマン・ショック以降は、環境問題やコンプライアンスへの意識が高まり、企業は収益を上げるだけでいいのかという風潮になっています。そうした状況が後押しとなり、好意的な意見が寄せられることが増えています」
新聞広告をポスターにして海外のグループ会社に配布
新聞広告は、グループ内へのインナー効果も狙っている。「グループの強みを生かすためにも、6つの事業会社が一体である認識を高めていくことが必要です」と髙阪氏。世界に誇る技術と人材を擁するグローバルカンパニーであるという意識を高めることで、事業や企業の壁を越えたさまざまな「協奏」の促進につなげていきたい考えだ。ひいては高度なソリューションの提供を目指している。
現在の従業員数は、グループ全体で約6万8千人、そのうち約3分の1が外国人。海外の従業員のために、新聞広告は言語を替えてポスターにして配布。海外のオフィスや工場に貼り出すことで、グループが目指すビジョンを共有している。
「ポスターは日本語版のほか、英語版と中国語版も制作しています。KAITEKIは日本語ですが、海外のグループ会社でもだいぶなじんできたという手応えがあります。ここ数年、ポスターの引き合いが増加しています」
アジア広域、そのうちインドネシアとタイでは地上波で、30秒のテレビCMも放映している。「アジアでの知名度を上げていくことは課題の1つ。アジア圏の人にヒットするように、新聞広告と同様にインパクトを狙い、テンポよく快活な内容にしています」
同社は、KAITEKIの数値化にも挑戦している。人と社会、地球のサスティナビリティへの貢献度合いを可視化する新たな経営指標「MOS(Management of SUSTAINABILITY)指標」を導入。「Sustainability、Health、Comfortの視点から、企業活動とその進捗を数値化していく予定です」
MOS指標は経営指標と位置付けるとともに、ステークホルダーに企業活動を理解してもらうためのコミュニケーションツールとしても活用していく方針だ。