粘着製品や特殊紙のメーカーであるリンテックは、全国紙、地方紙などに小型広告を毎月出稿しています。ストーリー性のある広告シリーズで、同社が扱う製品を紹介。一言で説明しにくい事業内容をわかりやすく伝えることが狙いです。
身近な存在であり続けたい そんな思いを込めた新聞広告
リンテックは、粘着製品や特殊紙の分野におけるリーディングカンパニーだ。社名の由来は“リンケージ(融合)+テクノロジー”。そこには人と人、技術と技術を高次元で融合させ、新たな付加価値を生み出していこうという思いが込められている。同社の製品は、日用品に使用されるラベル素材から半導体関連テープや液晶関連フィルム、炭素繊維をシート状に固める際に台紙として使われる工程紙などまで多岐にわたるが、その多くが中間素材。消費者向けの商品そのものを作ることは、ほぼない。たとえば、淡い色調でありながら不透明度が高く透けにくい「高隠蔽(いんぺい)性封筒用紙」を開発したのはリンテックだが、封筒そのものを作っているのは封筒メーカー。日用品に貼られるラベル用の粘着紙・粘着フィルムも同社の代表的な製品の一つだが、印刷や抜き加工を施してラベルに仕上げているのは印刷会社である。同社の広報・IR室副部長の吉田知人氏は「製品群が多岐にわたり、さらに中間素材が多いので、何を作っている会社なのか一言で説明するのが非常に難しいんです。いかにわかりやすく伝えるかが、コミュニケーションにおける課題です」と語る。
そこで活用しているのが、新聞の小型広告。朝日新聞朝刊には月2回、天声人語横のスペースに定期的に出稿している。下は、15年4月から1年間にわたって毎月出稿した小型広告シリーズだ。高隠蔽性封筒用紙や合成皮革用工程紙、アイキャッチラベル素材、半導体関連テープなど、毎月一つずつ同社の製品を取り上げ、ストーリー性のあるコピーと絡めて紹介している。「広告のデザインや切り口は、年度ごとに変えています。15年度のコンセプトは『夢をつなぐシート技術~もっとあなたと関わりたい』。世の中のニーズにお応えすることで生まれる弊社の製品は、実は私たちの暮らしの中にたくさんあります。これからも、より身近で魅力的な存在であり続けたいという思いを込めた広告シリーズです。恋する女性の心のつぶやきや心情と、製品の特性を重ね合わせたキャッチコピーを展開しました」(吉田氏)
「夢をつなぐシート技術」という四角いアイコンは、12年度のシリーズから継続して使用している。15年度版では、これを広告の右下に配置。フォントにも細心の注意を払い、製品の説明にはルビを入れて辞書風に仕上げた。同室の野中千嘉氏は「情緒的なコピーと辞書風の製品の説明を組み合わせることで、遊び心と真面目さのギャップも楽しめるようにしています」と説明する。
小型広告シリーズの掲載で幅広い層の認知度を高める
新聞広告を掲載する目的は、顧客はもちろん株主や投資家、学生など幅広い層に向けてメッセージを訴求することだ。掲載スペースは、接触率が高い1面にこだわっている。「朝日新聞の『天声人語』は学生にも多く読まれている記事で、その横に広告を掲載することで、就職を考える学生へのアピールにもつながればと考えています」(野中氏)
特に意識しているターゲットは、ビジネスマン。恋する女性という設定も、ビジネスマンの目を引くためだ。「読む人のイメージが膨らむように、ストーリー性がありながらも、あえて詳しい人物設定などは記しませんでした。女性の恋心を描く、ドキッとするコピーを展開していくことで、注目が集まるのではないかと考えました。ただし、幅広い年齢層の読者に好感を持っていただけるように、少し控えめで古風な女性という設定にしています」(吉田氏)
株主や投資家からの反響も極めて良好だという。株主向けに配布する小冊子の読者アンケートで「当社新聞広告をご覧になったことはありますか?」という質問に対して、51.4%が見たことがあると答えた(15年6月~9月実施分)。「以前は、経済紙を中心に全5段や全3段の広告を出稿していました。大きいほうが目立って認知度が上がると考えていたからです。けれども、掲載されても気付かなかったと言われることが多かった。そこで、同じ新聞広告なら小枠にして複数回、全国紙に出したほうがいいのではないかと考えました。定期的に掲載して訴求することができるのは、新聞ならではだと考えています。現在は、全国紙のほか、製造拠点のある地域、株主が多い地域の地方紙にも出稿しています」(吉田氏)
新聞広告と連動したウェブサイト「DREAM FACTORY」も運営している。新聞広告では伝えきれない内容を詳しく紹介するほか、同社で働く研究員を紹介するなど、誰でも楽しめるコンテンツを提供している。
新聞の小型広告はこれからも継続し、4月からはモデルの小山莉奈さんが高校生役で出演する新シリーズが始まる。「詳細はまだ秘密です。朝日新聞には月2回、掲載されますので楽しみにしていてください。今後のコミュニケーション戦略は、ウェブでの訴求方法も模索していきたいと思っています。15年度はアジア向けのテレビCMも制作し、海外衛星放送で放映しました。16年度以降も、国内、海外ともにブランド戦略を再検討していく必要があると考えています」(吉田氏)