市場が成熟するなか家庭向けからビジネスへのイメージ転換がカギ

 エプソン販売では、家庭向けからビジネスイメージへの転換を目指し、中長期的な視点に立った「PaperLab(ペーパーラボ)(※1)」キャンペーンを展開。同時に短期的な販売キャンペーンには新聞広告を積極的に活用しています。

循環型オフィスを実現する「PaperLab」 で大企業に訴求

中野雅陽氏 中野雅陽氏

 エプソン製品の販売やサポートを行うエプソン販売。家庭用インクジェットプリンター市場では、同社の扱う「カラリオ」が圧倒的なシェアを誇っている。一方で、この家庭用インクジェットプリンター市場は成熟しているといえる。そこで今後は、商業・産業用、オフィス向け製品など、 B to B分野にも力を入れていく方針だ。

 「低消費電力で環境に優しい当社のインクジェットプリンターは、もともとオフィス用途に向いた技術です。ビジネス分野でのニーズは高く、市場全体は伸びています。エプソンではオフィス向けの新しいプリントサービス「エプソンのスマートチャージ」や、2年分のインクがあらかじめ入っていてコスト削減に大きく貢献するエコタンク搭載プリンターなどを投入し、オフィスの様々なニーズに対応しています」と広報・宣伝部部長の中野雅陽氏は語る。

 ビジネスユーザーは製品単体のスペックより、TCO(総所有コスト)や信頼感、サポート体制を含めたトータルな価値を重視しており、そういった意味では、エプソンの総合力、ブランド力がますます問われるようになってくる。

オフィスで新しい紙を生み出すPaperLab(※1) オフィスで新しい紙を生み出すPaperLab(※1)

 「エプソンというブランドは良くも悪くもカラリオのイメージに引っ張られています。知名度が高く、親しみをもたれていますが、家庭向けのイメージが強い。今後のコミュニケーション戦略においては、ビジネスイメージをいかにつくり、強化していくかが最大の課題です」

 そのための試みの一つが、村上 龍氏を起用した「PaperLab(※1)」のキャンペーンだ。PaperLab(※1)は、オフィスで使った紙(※2)を、水を使わず(※3)新しい紙に再生する画期的な製品(※1)。オフィスのなかで紙をリサイクルでき、個人情報や機密文書を完全に抹消することができる。昨年12月の「エコプロダクツ2015」で発表して以来、多方面から大きな反響を得ており、今年中の発売を予定しているという。

 「PaperLab(※1)は、これからのオフィスの風景を変え、循環型オフィスを実現する画期的な製品(※1)です。この製品(※1)を知ったとき、これから我々が取引を広げていきたいビジネス分野にアピールする絶好の機会だと思いました。そこで企業経営や先端技術への学識が深い村上龍氏に、ご自身の言葉で我々の技術を紹介してもらうことにしました」

 このシリーズは、テレビCMや専用サイト、経済紙やビジネス系雑誌など、ビジネスパーソンにタッチポイントがある媒体に絞って展開した。

 販売にとって、中長期的な視点に立ったこのようなプロモーションは、今までにない試みだ。

 「市場が拡大していたこれまでは、短期的な売り上げを目指すプロモーションだけで十分でした。でも市場が成熟した今、それだけではモノは売れません。我々のような販売会社も、中長期戦略にのっとり、今後どのような製品や技術が登場するかをみすえ、先手を打っていかなくてはならない時代になっています」

紙のリサイクルイメージ

紙のリサイクルイメージ

ビジネス向けは新聞を増やしメリットをしっかり伝える

※画像はPDFへリンクします。 2015年7月28日付 朝刊 2015年7月28日付 朝刊

 中長期的なブランドイメージ戦略とともに、商品プロモーションや販売キャンペーンも欠かせない。ビジネス向け製品を求めやすい価格で提供する「お得祭り」や「エプソンのスマートチャージ」の周知には、リーチと即効性を期待する一般紙を活用してきた。

 「短期的な売り上げにつなげるには、発行部数が多く、経営層も読む朝日新聞のような媒体を効率的に使う必要があります。年賀状キャンペーンのようなシンプルで分かりやすいメッセージを伝えるにはテレビが最適ですが、ビジネス向けの場合はメリットをしっかり理解していただく必要がある。そのような場合は文字や図で内容を掘り下げて説明できる新聞が有効です。ビジネスユーザー対象のキャンペーンは、一般消費者向けの場合より、新聞のウエートを高めています」

 クオーツウオッチをはじめ、独創的な技術で世界を変えてきたエプソン。同社のインクジェットプリンターに共通して使われているマイクロピエゾ技術には他社にない優れた点があり、今後の可能性は大きい。

 「私どものインクジェット技術は熱を使わないので様々なインクを使え、多様なメディアに印刷できます。今後も様々な分野での応用が期待されます。我々の最大の強みであり、独創性の源でもあるこの技術を、より多くの人に知っていただくためのコミュニケーションにも、さらに力を入れていきます」と中野氏は締めくくった。

(※1)「PaperLab」は開発中の製品になります。2016年内の商品化をめざしています。商品化にあたり、今後予告なしに仕様、その他の情報が変更になる場合がありますのであらかじめご了承ください。
(※2)一般コピー用紙(A4、A3)を原料として使用できます。
(※3)機器内の湿度を保つために少量の水を使用します。