スポーツ総合雑誌のトップランナーとして長くその地位を維持している『Sports Graphic Number』。ウェブでの記事配信、「やる(Do)スポーツ」というアプローチから編集した『Number Do』、参加型のスポーツイベントなど、『Number』ブランドの強みを生かした活動を幅広く展開しています。
スポーツシーンの感動にヒューマン・インタレストを
『Sports Graphic Number』(以下、『Number』)の創刊は1980年。創刊の背景について、宣伝プロモーション局長の羽鳥好之氏はこう語る。
「80年代当時、日本の経済は成熟期にさしかかり、娯楽の一つとして『見るスポーツ』のニーズが高まっていました。そうした中、アメリカのスポーツ週刊誌『Sports Illustrated』のような観戦者向けのスポーツ総合雑誌を目指して発行に至ったのが、『Number』です」
創刊時の広告キャンペーンでは、野球の江夏豊氏、ゴルフの青木功氏、柔道の山下泰裕氏など、当時のナンバーワン選手を起用。彼らの等身大ポスターが駅や街々を彩った。
「『Number』は、『Sports Illustrated』のようにスポーツシーンを感動的に切り取ったビジュアルに加え、文藝春秋が得意とする、人間の内面を掘り下げた読み物、当社では『ヒューマン・インタレスト』と言っていますが、そこに記事のポイントを置いて、独自色を強めてきました」
日本であまり注目されていなかったスポーツにいち早く着目し、F1ブームやサッカーブームをけん引したことでも知られる。一大産業であるF1の報道をリードしたことで、スポーツマーケティングという観点からも各方面から注目されるようになった。
「雑誌の世界では、トップランナーに広告主の関心が集中します。『Number』は名実ともにスポーツコンテンツのトップランナーであり、商品戦略において重きをなしてきました。また、30代以上の男性が多かった当社の読者層を、男女を問わず若い世代に広げた媒体の一つでもあり、現在はウェブ版に新規の読者を多く引きつけ、広告媒体としても成長しています。もちろん紙版も、創刊時からのコアな読者を中心に愛され続けています」
姉妹誌も生まれ、昨年のラグビーワールドカップで日本が優勝候補の南アフリカを破る快挙を遂げた際には、特別増刊号『「桜の凱歌」エディー・ジャパンW杯戦記』を刊行、20万部を売り上げた。
「見るスポーツ」に加え「やるスポーツ」を紹介
近年は、「やる(Do)スポーツ」に関するコンテンツづくりやマーケティング活動に力を入れている。2000 年に創刊した『Number Do』は、ランニング、登山、ストレッチなどを特集し、自ら体を動かす楽しさを伝えている。
「『Number』ブランドが『Doスポーツ』に注目することは、スポンサーのニーズにも合致しています。生涯スポーツやアウトドアスポーツなど、人口の多いマーケットへの広がりが考えられるからです。シニア向けのコンテンツにも取り組み、今年は『Number Do』の臨時増刊号として『65歳からのゴルフ』を刊行予定です」
読者が参加できる駅伝大会やフットサル大会なども開催している。駅伝大会には昨年194チームが参加、フットサル大会にも51チームが参加し、スポンサーも集まった。
「ブランドの知名度を生かし、総合的にスポーツの魅力を伝えることで、多岐にわたる業界から支持をいただいています。参加型イベントは、コミュニティーづくりという意味でも可能性を感じています」
『Number』の広告活動においては、発売に際して朝日新聞のスポーツ面にレギュラー掲載している。
「新聞社によって相性のいいスポーツがあり、使い分けています。例えば、『「桜の凱歌」エディー・ジャパンW杯戦記』の告知は、読者にラグビーファンが多い朝日新聞を活用しました。朝日の読者は、ヒューマン・インタレストや、『Doスポーツ』への関心が高いイメージもあります。記事との親和性が高いスポーツ面に掲載する効果はとりわけ大きい。今年は通常広告のスペースを全5段に拡大する予定です」
同社は昨年、スポーツコンテンツの書籍を積極的に進めるNumber出版を発足、今年から本格始動させる。2月には、日本男子フィギュアの金メダリスト、羽生結弦選手の成長の軌跡を描いた『羽生結弦 王者のメソッド2008-2016』を刊行予定。『Number』秘蔵の写真に加え、本人の肉声もふんだんに盛り込む。
「『Number』は、35年の歴史の中で、多くのスポーツ選手と信頼関係を築いてきました。その大事な資産を生かして魅力的な書籍の数々を送り出していきたいと考えています。また、今後、国際的なスポーツの祭典が続き、『見るスポーツ・やるスポーツ』ともに注目されるので、スポーツコンテンツを軸に社会を元気にしていけたらと思います」