家族の健康に敏感な女性 クチコミを広げる訴求を展開

 400年以上の歴史を持つ第2類医薬品「薬用養命酒」は、養命酒製造の売上の大半を占める主力商品。シニア層のニーズが高い商品を幅広い世代に訴求するうえで、同社は「女性のコミュニケーション力」を重視。クチコミを増幅させるために、広告展開においても新聞メディアの特性を活用しました。

ロングセラー商品を支える「不易流行」のマーケティング

結城雅史氏 結城雅史氏

 徳川家康が幕府を開く前年の1602年、「薬用養命酒」は創製された。1923年に会社組織を設立し、全国発売を開始して以来、主要成分である生薬(しょうやく)に大きな変更はない。赤い箱、クラシカルなロゴタイプ、飛龍のマークといった特徴的なパッケージも、脈々と伝統を受け継いでいる。

 薬用酒の分野で、圧倒的な国内シェアを誇る。その地位を築き上げることができた理由の一つは、メディアを利用した積極的な広告活動にあった。新聞や雑誌への広告出稿はもちろん、ラジオやテレビには民間放送の創生期からCMを放送した。薬用酒といえば多くの人が真っ先に思い浮かべるほど、「養命酒」の名前は日本人の心に刷り込まれているロングセラー商品だ。

 現在は、媒体への露出はもちろん、SPツールやキャンペーン、セミナーなど、多方面のマーケティング活動を展開。LINEスタンプを制作するなど、ネットとの連動も進めている。

 同社マーケティング部専門課長の結城雅史氏は「商品は大きく変わらないので、時代に合わせてメッセージを世の中に打ち出していかなければならない。『不易流行』の考えで、変えないところと流行に乗るところを併せて模索しています」と、養命酒のコミュニケーション活動の理念を説明する。

女性の情報共感度を意識し「ボン マルシェ」とタイアップ

 2015年2月に掲載した広告のテーマは、商品の効能の一つである「冷え症」の改善。女性のニーズが特に高まる季節ということで、月に1回の女性向け特集紙面「ボン マルシェ(BON MARCHÉ)」とのタイアップ企画を掲載した。

 「言葉による説得だけではなく、ビジュアルを見せたりして、女性から具体的な共感を得られる表現を意識しました。大股歩きやおっぱい体操などの記事は、ボンマルシェ編集部の企画。我々も、構成や見せ方について勉強になりました」(結城氏)

 薬用養命酒を飲んでいる人の男女比は約半々で、年代は60代以上が約6割。コミュニケーションのターゲットとしては、それより下の年代の40代女性をメインに置いているという。「女性は情報への共感度が高く、クチコミの発信力も大きい。井戸端会議などはもちろん、最近はネットも使って広がるので、女性同士の横のコミュニケーションは男性の何倍もあると思います」と解説する。

 ユーザーが購入したきっかけとして多いのは、家族や知人に薦められたという理由だという。体調の不安を友人に相談したら養命酒を紹介されたなど、健康に関する女性のクチコミは大きな力を発揮する。今回の広告でも、女性の共感度が高い著名人やモニターの声を、自然な形で掲載。クチコミをさらに増幅させるようなコンテンツを効果的に盛り込んだ。

※画像はPDFへリンクします。
2015年2月12日付 朝刊
2015年5月24日付 朝刊

将来のユーザー育成に向けて女性のクチコミに期待

 今回の企画では、記事体と純広の上下が一体となって、全体を一覧で見られるようなデザインとなったことから、「最終的に商品にうまく落とし込める形になった」と結城氏は語る。

 2015年5月にも第2弾の広告を掲載し、同社には読者から多くの反響が寄せられた。健康体操や東洋医学などの、商品以外の多くの情報を掲載できたことも大きいと話す。厚生労働省から認められている七つの効能以外の情報については、純広告で表現するのが難しく、クチコミ向きの情報を記事体部分と相乗的に発信することができた。

 「一対一の効能を訴えている他のOTC医薬品(一般用医薬品)とは差別化していきたい。肉体疲労や虚弱体質といった季節ごとの大きなテーマはありますが、健康的に暮らしていただく一助として、生活の中に養命酒があればというのが我々のねらいです」

 様々な健康情報を発信することは、同社にとってCSRの一環であり、女性を中心としたクチコミをさらに広げることにもつながる。「養命酒の広告でこんなイイこと言ってたよ」というやりとりから、商品のファンになってもらうことを期待する。そのうえでも、クチコミのソース(情報源)として信頼性の高い新聞を活用することは有効だ。

 核家族化が進んだ今にあっても、店頭で養命酒を買う7割が女性だという。家族の身体の状態や変化を気遣い、健康に関する情報に敏感な女性のクチコミは、購買決定の大きなポイントとなるという。

 「若い層もターゲットにすることで、行く行くは養命酒のロイヤルユーザーになってもらいたい。気軽に始められる雰囲気を醸成するために、クチコミが広がるような訴求を長期的に続けていきたいです」