「広報」+「広告」効果で志願者数2年連続日本一を達成

 13学部48学科に法科大学院と大学院11研究科を擁する西日本有数の総合大学、近畿大学。2015年度の一般入試の志願者数は11万人を超え、2年連続で日本一となりました。その背景には、完全養殖に成功した「近大マグロ」を活用するなど、マスメディアを巻き込んだブランド戦略があります。

「近大マグロ」を活用し大学ブランドの構築に成功

加藤公代氏 加藤公代氏

 「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」。これは、近畿大学が民間企業と提携してJR大阪駅前で2013年4月にオープンしたレストランだ。来客でにぎわうお店の中で、特にお目当ては、近畿大学水産研究所が完全養殖に成功、「近大マグロ」の名で知られるようになったクロマグロ。好評につき、同年12月には東京・銀座に2号店をオープンしている。

 不可能といわれたクロマグロの完全養殖化に向けて、研究に乗り出したのは1970年。しかし、なかなか成果が上がらず、共同参画していた国立大学などの撤退が相次ぐ。そんな中、近畿大学だけが地道な研究を続け、2002年、32年の時を経て完全養殖化を成し遂げた。

 ところが、話題になった研究成果も、やがて忘れ去られてしまう。「この研究の価値が、まったく社会に伝わっていなかったのではないか」と分析し、その後レストランの開業をはじめ、メディアへの情報発信強化にあらためて取り組んできたと、広報部課長の加藤公代氏は振り返る。結果、近大マグロをシンボルとして定着させ、ブランドイメージを構築し、現在に至る。

 成果は、志願者数に表れている。15年度の志願者数(一般入試)は11万3,704人で、2年連続で全国の大学のトップに立った。関東や東北エリアなど、関西以外からの志願者増が特徴的だという。

広報部の機能強化で志願者増を狙う

 「志願者の増加は、近大マグロをはじめ、本学の建学の精神にある『実学』への本気度が、広く理解された結果ではないでしょうか」と加藤氏。そして広報部の機能強化も、こうした成果に貢献している。「受験生や保護者も含めた社会全般を意識した情報発信を展開し、志願者増につなげていくことを目標としています」

 2013年にメディア対応の窓口だった広報課と、受験情報を広告展開していた入試広報課を統合、広報部として組織を一本化した。統合の試みとして、プレスリリースを積極的に発信することに力を入れた。13年度は233本、14年度は369本発信したが、リリースするだけでなく、メディアへの掲載率もデータ化し部内で共有している。さらに、教員の得意分野を顔写真入りで紹介した『報道関係者のための近大コメンテーターガイドブック 近畿大学教員名鑑』を製作し、配布した。そのため、教員への取材や出演依頼にも即応、「無理とは言わないし、言いたくありません(笑)」(加藤氏)。メディアリレーションを重視し、「最近ではありがたいことに、取材に困ったときは近大へと、メディアの皆さんに期待されているようです」

固定概念をぶっ壊す─新聞広告での取り組み

 メディア戦略重視の背景には、少子化問題がある。「18歳人口が減少に転じる“2018年問題”が注目されていますが、18歳の人口減はすでに現実です。志願者数を減らさないためには、大学の魅力をアップさせること。時代が求める大学づくりが必要です」。16年4月に開設予定の「国際学部」も、そうした取り組みの一環で、ほかキャンパスの整備も進行中だ。

 志願者数を確保するには、受験生だけではなく、広く一般へのメッセージ発信も重要だ。そんな中、新聞広告の掲載はその一大モーメントだ。

 正月に掲載されている全面広告は年頭の所信表明で、ブランドイメージを強く訴求する内容だ。「やはり、反響は大きいですね。新聞読者は広告をじっくりと見ていて、読み込むことでメッセージを受け止められていることが、わかります」

 広告賞も、広告効果を測る目安としている。大胆なコピーとデザインで、これまでにいくつもの賞に輝いた。朝日広告賞(朝日新聞社)や新聞広告賞(日本新聞協会)などで高い評価を受けた作品のキャッチコピーにあるのは、「固定概念を、ぶっ壊す。」。加藤氏は、「偏差値で序列化されている大学の現状を、壊したい。それが最終目標です」と、意気込む。

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2014年7月31日付 朝刊(大阪本社版)
2015年1月3日付 朝刊(大阪本社版)