朝日新聞のグループメディアを使い、いかに立体的なコミュニケーション展開を組み立てたか。その背景や狙いについて、アウディ ジャパン・ブランドプロモーション&広報部 部長の青木雄一郎氏に聞いた。
日本中が熱狂するワールドカップブランドの存在感を高める
アウディ ジャパンは4年間にわたるスポンサーシップの集大成として、ワールドカップブラジル大会に合わせて一大キャンペーンを展開、効果の最大化を狙った。「日本におけるアウディブランドの純粋想起を高めることが、最大の目的でした。もともとグローバルではサッカーと親和性の高い活動を行っており、レアルマドリードやACミラン、バイエルンミュンヘンなど欧州サッカーのクラブチームを積極的にサポートしています。そこで、日本でも強力なコンテンツであるサッカー日本代表のサポーティングカンパニーとなり、ブランドの存在感を高めるため、コミュニケーション全ての側面でフル活用しました」(青木氏)
ショールームでも活用できる販促マテリアルの制作からスタート。そして企画が走り始めると、アイデアがさらに広がり、周囲も企画実現に向けて動き、当初の想定より大規模で多角的なコミュニケーション展開に仕上げることができたと、青木氏は振り返る。新聞メディアとのコラボレーションについては、「今回はマスに向けた施策だったので、朝日新聞のリーチは有効でしたし、また朝日新聞社はサッカー日本代表のマッチスポンサーなので、連携するのは自然な流れでした。様々なメディアをワンストップで提案いただくことで、相談できることも多くなりましたし、効率よく実行できたと思います」(青木氏)
11台の特別限定車で円陣を組む
新聞広告のクリエーティブでは、ピッチに立てる選手の数と同じ11台の特別限定車「Audi×SAMURAI BLUE 11 Limited Edition」が円陣を組み、その前に日本代表監督のザッケローニ氏が悠然と立つ。人をモチーフにしたクリエーティブはあまり例がないが、4年間のスポンサー活動において集大成でもあり、本国に掛け合い日本オリジナルの原稿として了承を得た。「円陣」と「車のエンジン」を掛けた「日本代表に、Engineをかけよう。」というコピーで、代表を応援する気持ちを盛り上げた。
また、日本代表戦が近づくと、世論の空気を読み、メーンコピーを「挑戦こそが、革新をつくる。」に替えた。このコピーは、アウディの「Vorsprung durch Technik(技術が革新をつくる)」というスローガンにも通じている。「技術力がブランド価値である当社としては、フィジカルな強さよりはテクニカルなプレーで世界と勝負しようという日本代表に共感し、メッセージを託そうと考えました」(青木氏)
5月16日から18日にかけて朝日新聞社が主催し、東京ミッドタウンで行われた「夢を力に2014 サッカー日本代表戦応援イベント」も、大盛況となった。フロアには11台の特別限定車や、日本代表の過去21年分の報道写真約90点を展示。初日には元日本代表監督の岡田武史氏と元日本代表選手の中山雅史氏らによるトークショーを行い、3日間で来場者数は約16万人を記録した。「さすがの集客力だと実感しました」(青木氏)
報道コンテンツと広告の関係に新たな可能性を
新聞メディアを通じたコミュニケーションのあり方について、青木氏は次のように提言する。「広告表現においては、報道コンテンツとの親和性を持たせ、ニュース性や事件性といった一段高い価値をメッセージに盛り込む工夫がもっとあってよいと思います。新聞報道と広告の関係について考えると、いろいろ可能性があるのではないでしょうか。今回のような一大イベントであれば、紙面制作などを通じ情報発信を一緒に行っていこうといった踏み込んだアプローチがあってよいと思います」
「コミュニケーションの手法は、常に変化しています。ショールームに加えてオンライン、イベントなど、購入経路は複雑になるばかりです。自動車は購入するまでの検討期間が長いので、その間いかに自社ブランドのマインドシェアを高めていくかがカギです。発信する情報の中身をしっかり作り、強いコンテンツを打ち出していく。そして消費者の間での拡散を狙っていくことが、重要な課題です」