4月1日、40歳前後の女性をターゲットにした新雑誌『DRESS』が創刊された。指揮をとるのは、話題の「美魔女」の仕掛け人として知られる山本由樹氏。新会社「gift」の代表取締役社長で『DRESS』編集長の山本氏に、『DRESS』が目指すところを聞いた。
多様化する女性の生き方 どんな「選択」をしても輝ける世の中に
――『DRESS』創刊の背景を聞かせてください。
女性の生き方が多様になり、40歳前後になっても結婚しないという生き方を選ぶ女性も増えています。僕は前職で、結婚している女性が輝くための、幸せになるための雑誌を作りました。しかし当時、ふと周囲を見回してみると、アラフォーになっても独身の女性が多い。「君たちのための雑誌はある?」と聞くと「ない。あったらうれしい」と言うんです。確実にターゲットが存在し、ボリュームが増えつつあるのに、その層に向けた雑誌がない。このパズルのピースを加えることで、40代女性の地図が完成するはずだ――。そう考え、昨年「gift」を起業し、新雑誌創刊を最初の仕事にしたのです。
――『DRESS』創刊の背景を聞かせてください。
「自由と責任、そして愛」です。「結婚しない」という自由な選択には責任も伴います。そこに何を加えると、「充実した人生」「幸せ」を語れるのか。その結論が「愛」でした。「結婚=幸せ」ではありません。愛し、愛される存在がいれば、たとえ結婚という形でなくても女性は幸せになれるはず。結婚の是非を問うのではなく、結婚しないという選択をした女性が幸せになるために役に立てる媒体を作ろうと考えました。
ところが、創刊後に読者の属性を分析したところ、予想に反して約半数が既婚女性でした。また9割以上が働いていて、その6割以上がフルタイムで仕事をしている人たちでした。未婚、既婚にかかわらず経済的に自立している、という読者像が見えた。経済的自立は精神的自立につながります。現在は、本当の意味での「自立した女性」のための枠組み作りを重視し、編集を進めています。
その意思表明が、毎号巻末に掲載している「マニフェスト」です。自由な選択をしたすべての女性たちが輝き続けることができる、そんな社会が訪れてほしいという願いを、「柔軟なパートナーシップ」「子育て環境の充実」など5つの項目にまとめました。世の中に多くの雑誌、女性誌が発行されている中、新しいメディアを立ち上げるには社会的な意義が必要です。この、非常にリベラルな内容のマニフェストが、『DRESS』が目指す社会的意義であり、展開する企画やコンテンツのすべての軸になっています。
ファッションや美容といった女性誌ならではの特集では「リアルと憧れ」を重視。体形も顔も変わってきて、今まで似合っていた服や色が、ある日突然似合わなくなるのが40代。その「リアル」に対し、どんな着こなし、色使いをすれば美しく見えるかを提案しています。とはいえ、リアルばかりではワクワクしないので、ラグジュアリーブランドも取り上げ、女性にとっては大切な「憧れる気持ち」を刺激する特集も充実させています。
――4月1日の創刊日、朝日新聞に全面広告を掲載しました。
大きな話題を作ろうとするとき、新聞やテレビといった既存のマスメディアの影響力は大きいと改めて感じています。そして、『DRESS』の読者が最も読んでいるだろう媒体は、仕事をしている女性が多いこともあり、おそらく朝日新聞だろう、と。特にこの雑誌はリベラルなテーマを抱えての船出でしたので、朝日新聞の読者になら伝わるだろうと考えました。
雑誌、ウェブ、リアルなコミュニティー すべてが連動した「新しいメディア」を
――読者とはどのようなコミュニケーションをしていますか。
雑誌とは違うオリジナルコンテンツの配信、『DRESS』がセレクトした商品の通販など、ウェブサイトも一つのメディアとして充実させています。『DRESS』は創刊当初から読者との接点づくりに力を入れており、サイトでは「Project DRESS」という会員組織への参加を呼びかけています。すでに1万人余りの読者が登録してくれています。
また、リアルでの活動が活発なのも『DRESS』の特徴です。その一つが「DRESS部活」。ヨガ部、旅行部、おしゃれ部、グルメ部、ワイン部など19の部活に約1万人が参加し、とても盛り上がっています。10月に「PLACE DRESS」という部活動ができる場を当社が設け、ある程度の運営は担っていますが、基本的には部長を中心に部員の方々が自主的に活動しています。家庭でも職場でもない、趣味の仲間で集まる「人生のサードプレース」を作ることは、新しいライフスタイルの提案になる。とりわけ未婚女性は、将来に対して「孤独、健康、お金」という3つの不安を抱えています。健康とお金は情報を伝えることしかできませんが、孤独についてはつながり合えるコミュニティーを作ることで、ソリューションを提供できるのではと考えています。
その部活動は誌面の企画にフィードバックしています。部員にとっては、自身のためにやっていることが雑誌の中で広がりを持てるので、非常に積極的に関与してくれています。僕らにとっても1万人もの組織は大きな力になりますし、一緒に雑誌やコミュニティーを作るという、新しいメディアのあり方を構築しつつあると期待しています。
――ウェブでの配信や「部活動」など立体的な展開です。
メディアは多様化しましたが、新たなターゲットを掘り起こすのに雑誌ほど強いメディアはないと考えます。そのメッセージをより具現化し、読者やユーザーが情報を「使う」ための仕組みをウェブで提供する。このコンビネーションこそが、『DRESS』が目指すこれからの時代のメディアです。
雑誌があってウェブがあって、リアルのコミュニティーもある。それぞれは違うメディアや動きに見えても、最終的に「自立した女性の人生を豊かに幸せにする」という軸は共通していて、ブレがない。そこに賛同し、集い、活動してくれる読者とともに、『DRESS』というコミュニティーを作り上げていく。新しいメディアはそうあるべきだと考え、さらなる広がりに挑んでいきたいと思っています。
gift 代表取締役社長 編集長
1962年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。光文社に入社。『週刊女性自身』、などを経て、2002年『STORY』創刊メンバーに。05年~11年まで同誌編集長。08年『美STORY』(現『美ST』)を創刊。10年から「国民的美魔女コンテスト」を開催。「美魔女ブーム」を作る。13年4月にgiftを設立。『DRESS』を創刊して編集長を務める。