新聞社とタッグを組み より効果的なテーマで「送客」を

 書籍販売会社の日本出版販売(日販)は、同社が旗振り役のブックフェアを展開。そのタイアップ広告を朝日新聞に掲載し、フェアの詳細告知、書店への顧客誘導を図っている。同社特販支社総括課課長の小川隆也氏に、反響や今後の展望などを聞いた。

「送客」に効くブックフェア

――朝日新聞と、複数の出版社の本を集めたタイアップ広告に連動したブックフェアを展開しています。狙いを詳しく聞かせてください。

 お客様に書店に来店してもらうことを一部の書店では「送客」と言いますが、ブックフェアは最も効果的な送客の仕掛けの一つです。出版社が自社の刊行物を集めて独自に展開する事例もありますが、より魅力的なフェアにするためには、出版社を横断して書籍を集めることが重要です。そして、その役割を担えるのは、様々な出版社の書籍を書店に流通できる、当社のような販売会社です。実際、出版社からも書店からも、販売会社が中心となって展開するブックフェアに期待する声は高まっていると感じています。

 さらに送客のためには、そのフェアがどんなテーマでどのような書籍をそろえているのか、さらにどこの書店に行けばブックフェアをやっているのかといった詳しい情報を、読者であるお客様にしっかりと伝えなければなりません。その最適な媒体が新聞広告だと思います。当社と朝日新聞がフェアのテーマや内容を企画し、賛同する出版社が広告出稿をすると、広告に連動してブックフェアが展開される。読者ニーズや時流に合った企画を展開することで、出版社、書店、お客様、新聞社、そして私たち販売会社、すべてにメリットがあると評価しています。

――今年は3つのブックフェアが開催されました。

 6月には昨年に続き「つゆ読 2013」フェアを開催しました。梅雨時の読書を推進する企画です。今年は、文芸書、海外作品、雑学本にビジネス書と、幅広いジャンルの書籍が各出版社から出そろいました。また、フェアを開催した書店名をすべて掲載しました。

 「おやこ春読(はるどく)祭り」「おやこ夏読(なつどく)祭り」は、子どもを対象とした学習関連書籍のフェアです。進学・進級のタイミングの春フェアでは教材もの、夏休みに開催した夏フェアでは自由研究に役立つ図鑑や科学系の書籍などをラインナップ。読者層、書籍のジャンルが限定されていたので、特に書店からは「分かりやすい」「売り場を作りやすい」と好評でした。

2013年2月24日付 朝刊 2013年2月24日付 朝刊
2013年6月16日付 朝刊 2013年6月16日付 朝刊
2013年7月30日付 朝刊 2013年7月30日付 朝刊

書店に行きたくなる「ストーリー」がほしい

――今後の展望、課題は。

 読者のニーズに注目し、書店に足を運び、本を買いたくなる「ストーリー」をしっかりと設定することが重要と考え、今後の課題と捉えています。時代小説が人気テーマですが、最近はドラマ「半沢直樹」の大ヒットで企業小説が売れていますし、11月には朝日新聞とタイアップして警察小説のフェアを企画しています。新刊だけでなく既刊本の中でも面白い作品を掘り出し、読者に届けることができるのも、ブックフェアのメリットと見ています。

 また、例えば規模が大きく、お客様がゆったりと本を吟味する書店と、駅ナカで通勤途中などに立ち寄って買う、人の流れが速い書店では、売れる本、売れるスピードも違います。書店の規模や客層を鑑みながら、最適なテーマを考えていくことで、参加する書店も今後より増えていくものと期待しています。

――新聞広告に期待することは。

 以前、朝日新聞の1面の「児童書サンヤツ」の広告を掲載日から2週間経ってから持参し、書籍を買い求めたお客様がいたと聞き、驚きました。情報の保存性は新聞広告ならではです。インターネットのように情報がすぐに更新されていく広告と違い、興味があれば手元に残して吟味する、という広告スタイルは書籍にも合っています。その新聞の特性を生かした見せ方や展開を、新聞社の皆さんと一緒に模索していきたいですね。