この夏も全国的に猛暑を記録した。「節電の夏」だったこともあり、早くから熱中症対策に注目が集まった中、労働現場やスポーツシーンで高い支持を得ているのが、ミドリ安全の「塩熱飴」シリーズだ。同社は、8月にあった第93回全国高校野球選手権大会を特集する朝日新聞朝刊紙面に、大会期間中、毎日小型広告を出稿した。そのねらいや反響について、ミドリ安全 常務取締役統括部長 亀田義行氏と、クリエーティブを担当した営業統括本部 企画管理部 デザイン室 デザイナー 吉野大輔氏に聞いた。
学生スポーツへの浸透を図るために 高校野球紙面で広告展開
――「塩熱飴(えんねつあめ)」の商品について聞かせてください。
当社では工場などで働く方のための安全靴やヘルメットといった保護具を展開していますが、そうした工場で働く方向けの熱中症対策商品として、2008年、「塩熱飴」を発売しました。労働現場では昔から、塩や梅干しを摂取して熱中症を防いでいましたが、「塩熱飴」には、塩分だけでなくビタミンやミネラルも配合、より科学的、効果的に熱中症を予防する商品として利用されています。この商品のヒットを受け、09年、スポーツシーン向けに電解質補給の性能を強化した「塩熱飴スポーツ」を発売。東京マラソンの補給食に起用されるなど、特にマラソンの世界では広く認知、利用していただいています。そして今年、口の中でかみ、水と一緒に摂取する「塩熱サプリ」を発売しました。より早く電解質がチャージできるタブレットタイプです。いずれの商品も、より効果的な成分配合を科学的に算出し、製薬会社で製造しています。
――夏の全国高校野球選手権大会期間中の14日間にわたり、「塩熱飴スポーツ」と「塩熱サプリ」の小型広告を連日、高校野球の紙面に出稿しました。出稿の経緯とねらいは。
スポーツシーンでの利用として、当社が普及を進めたいと考えているひとつのジャンルが、中学校や高校などのクラブ活動です。夏場の練習や試合中の熱中症対策はもちろん、適切な栄養補給によってパフォーマンスの向上が期待できます。そこで今年は、バレーボールや野球用品の大手メーカーとタイアップし、学生スポーツ向けの様々な企画を展開してきました。その延長として、学生スポーツのビッグイベントである全国高校野球選手権大会の期間中に、その特集紙面で何かできないかと考え、シリーズ広告を出稿することにしたのです。
産業現場用の「塩熱飴」は、多くの労働現場で利用していただき、かなりの認知度を誇りますが、一般の消費者の方には当社がスポーツ向けの商品を出していることはあまり知られていません。「塩熱飴スポーツ」「塩熱サプリ」に関しても、スポーツ量販店での販売が中心で、スーパーやコンビニエンスストアでは扱っていません。一般紙への出稿は、商品の販促というよりも、「ミドリ安全がこういう商品を手掛けているんだ」と理解していただく、ブランディング戦略の一貫です。学生さんや、その関係者が注目するスポーツ面、それも世間的に大きな注目を浴びる高校野球の紙面に出稿することで、より的確にターゲットを訴求できると考えました。
――クリエーティブでこだわった点は。
大会期間中の14日間、すべて違うクリエーティブにしたことです。高校野球というとどうしても選手ばかりに目がいきがちですが、実は、審判員やグラウンドキーパー、ウグイス嬢といったたくさんの裏方の人たちに支えられて試合ができている。そして、その人たちもみんな汗をかいて頑張っている。そのだれにとっても一瞬一瞬が大事な瞬間なので、その瞬間を逃さずに電解質などをスピードチャージしてほしい――。そんな思いで、コピーとイラストを考えました。多色使いにすると、逆にカラーの紙面では埋もれてしまう可能性があったので、製品のイメージカラーである「塩熱飴スポーツ」は青、「塩熱サプリ」は緑と、色遣いはシンプルにしました。
ちなみに、最後はしっかりオチをつけようと、最終日を飾ったのは家のテレビで観戦しているおじさんです。家の中での熱中症も起きていますので、高校野球ファンの方々に広く利用していただきたいですね。
毎日同じ紙面の同じ場所に同じ形で 翌日を楽しみにする読者も
――新聞のシリーズ広告に期待した効果は。
ブランディングが大きな目的なので、まずは印象に残ることが重要です。そういう意味では、今回は毎日同じ紙面の同じ場所に載せるという体裁のシリーズ広告だったので、広告自体は小さくても、注目を集め、印象にも残りやすいのではないかと期待しました。私自身そうなのですが、紙面を全部細かく読まなくても、とりあえずその日にどんな試合があるのかは必ずチェックします。試合予定の隣という掲載場所は、毎日目に留めていただくには、非常にいい場所でした。
テレビやウェブ、スポーツ専門誌などにも広告を展開していますが、新聞広告の強みは、インパクトはあるけれど瞬間的に流れてしまうテレビCMに比べ、何回でも見直すことができる保存性と、雑誌よりも幅広い層に訴求することができる点です。ブランディングにおいては、欠かせない媒体と考えています。
――反響はいかがでしたか。
毎日、異なるクリエーティブにしたことで、「明日はどんな広告だろう?」と期待してくれた読者の方もいらっしゃったようで、会社のサイトを通じて「野球をやっている子どもが毎日楽しみにしています」といった声も寄せられました。また、チアリーダーを採り上げた回を見て、実際にチアをやっているという方から「チアリーディングにもいいんですか?」といったお問い合わせもありました。色々な層に見ていただいているという実感があり、手応えを感じましたね。広告をきっかけに、スポーツをしているお子さん、その親御さんや関係者に、当社製品や当社の取り組みが広まってくれることで、次の展開につながるのではないかと期待しています。
――今後の展望を聞かせてください。
今回の出稿で、シリーズ広告の効果が実感できたので、その効果をいかに成果に結び付けていくかが次の課題です。「どこで買えるんですか」といった問い合わせも多かったので、販路についての検討も重ねる考えです。スポーツは1年を通じて色々な種目のシーズンがあるので、通年商品として定着させていきたいと思っています。
スポーツ界へのさらなる浸透、定着を標榜(ひょうぼう)しているので、新聞広告では、たとえばスポーツイベントを扱う紙面と連動した形で何かできないかなども検討しています。