「暑さ」「汗」「のどの渇き」をイメージした小型広告が、暑かった7月、8月の朝日新聞紙面に続いた。大塚製薬の「ポカリスエット」のシリーズ広告だ。同社 ニュートラシューティカルズ事業部 宣伝部 ポカリスエット担当の上野隆信氏に話を聞いた。
今年は「節電の夏」 ビジネスパーソンを中心に日替わりコピーで訴求
――シリーズ広告のねらいや概要を聞かせてください。
真夏の7月4日からお盆前までの平日の19日間にわたって、第2総合面という同じ掲載面にこだわって小型広告を出稿しました。今年の夏は、暑くなることに加え、東日本大震災の影響で「節電の夏」になることが当初から予想されていました。おそらく、会社も通勤途中の電車も暑くなるだろう。そこで汗をかくビジネスパーソンの方をターゲットにコミュニケーションがしたいと考え、今回のシリーズ広告を展開したのです。水と電解質を含み、体液に近い組成であるため、スムーズに水分補給ができるポカリスエットを飲んでいただき、健康で元気に仕事に励んでいただきたい。そんな願いを込めたシリーズでした。
――クリエーティブでこだわった点は。
小さな広告なので、キャッチーに、かつ、ビジネスパーソンの方々に「わかる」「あるある」と感じていただけるようなコピーを日替わりで掲載しました。そして、共感を醸成するとともに、「明日はどんな広告かな」と期待してもらえるような内容を心がけました。天気の長期予報なども参考にして、その日にぴったりなコピーになるよう、タイミングも計りました。
「ポカリブルー」と呼ばれる青地に、コピーとともに汗の粒が光っていますが、実は、汗の量や粒の大きさはコピーに合わせて変えています。広告を見て共感してもらい、最終的にはポカリスエットのブランドに落とし込めるように、「そんなあなたの水分補給に。POCARI SWEAT」という共通コピーを配置。通勤電車の中でこの広告を見て、「電車を降りたらポカリスエットを飲もう」と感じてもらえるようなクリエーティブを目指しました。
――反響はいかがでしたか。
社内外から予想を超える反響がありました。改めて新聞は本当にたくさんの人が見る媒体なんだ、と痛感しましたね。ポカリスエットについては、今回のようにちょっとひねったコミュニケーションは初めてでした。そんなこともあって、反響がとても多かったことは、とてもうれしい驚きでした。
今回の小型広告はフェイスブックにも再掲し、さらに幅広い層の方々にも見ていただける展開を図りました。こちらでも非常に反響があり、「いいね!」をたくさん押してもらいました。この取り組みのおかげで、かなりファンが増えたようです。非常に興味深かったのが、2~3行の短いコピーでも、それぞれの立場によって感じ方が違うということが、フェイスブックのコメントからわかりました。通常、特に新聞広告の場合、どうしてもこちらからの一方通行になってしまうのですが、フェイスブックと組み合わせることで消費者の皆さんの反応をビビッドに感じることができました。今回ターゲットとした層と、フェイスブックの中心利用層である30~40代のビジネスパーソンとが重なって親和性が高かったのではないかと見ています。
習慣で読む、連続して読む、だからこそ「期待感」が生まれる
――シリーズ広告に期待する効果とは。
基本的に「毎日読む」新聞だからこそ、習慣性、連続性による効果が期待できます。今回も、次にどんなコピーが出てくるのかを毎日期待していただけたという手ごたえがありました。
今回は2面に掲載し続けましたが、この面はターゲットであるビジネスパーソンがよく読むということである上に、今夏は、猛暑や節電に関する記事が多く見られました。ニュースに関連させて受け止めていただけたのではないでしょうか。
――今後のコミュニケーションの方向性について聞かせてください。
ポカリスエットは健康飲料であり、スポーツ時だけではなく、仕事、お風呂上がり、寝起きなど、発汗状態にある様々なときに飲んでいただきたいと考えています。そのため、当社では今後はさらに飲用シーンを広げる提案をしていきたいと思っています。
時代の流れから、ソーシャルメディアへの取り組みが欠かせませんが、ソーシャルメディアのみ、もしくはマスメディア広告を何か単体で展開するだけでは、なかなか効果的なコミュニケーションが図れないように思います。それぞれの特性を生かした最適な組み合わせを今後も模索していきたいです。