「震災からの復興」をテーマに掲げた、今年度の「三井物産環境基金」

 三井物産は、環境問題に関する様々な活動・研究に対し、助成プログラム「三井物産環境基金」を通じ支援を行っている。今年度は東日本大震災の発生を受け、「震災からの復興」をテーマに掲げた。同社 環境・社会貢献部 理事 部長の青木雄一氏に、その概要や助成状況などについて聞いた。

地球環境問題を軸に据え、 NPOや大学による震災への復興活動・研究を助成

――「三井物産環境基金」の今年度のテーマを「震災からの復興」にした経緯は。

青木雄一氏 青木雄一氏

 「三井物産環境基金」は、地球環境問題の解決に向けた様々な活動を支援することで、「経済と環境が調和する持続可能な社会を実現しよう」と2005年にスタートしました。今年度も6億円の助成金の枠を設け、例年通り募集の準備をしていたところ、東日本大震災が起きました。「企業の助成活動のあり方として、これまでと同じ内容でいいのだろうか」。こんな議論がすぐに持ち上がり、4月初旬には震災復興にかかわる活動や研究を支援する「復興助成」を行うことを決定しました。

――助成の内容や今回の募集のしかたは。

 今回の復興助成においても、従来通り、NPOなどの活動に対する「活動助成」と、大学などの研究に関する「研究助成」に分けて募集しました。テーマは「震災からの復興」ですが、三井物産環境基金が標榜(ひょうぼう)する「環境問題への対応」や「持続可能な社会の構築」といった軸は維持しました。

 被災地の復興のためには、迅速かつ現場の状況に柔軟に対応できる助成であることが重要です。これまでの募集は、春と秋の年2回に分けていましたが、今年は7月末までの募集期間中に締め切りを3回設け、応募のあった案件から順次選定することにしました。また、当社の募集前に活動がスタートしているNPOなどからの応募も可能にし、応募以前に支出された経費も一定期間さかのぼって助成できる仕組みにしました。

 この基金は助成金額が比較的大きいため、これまで応募にあたっては、詳細な申請書類をお願いしています。しかし、今回は活動や研究をしている方たちが被災地に入っているケースが多く、必ずしも申請書をじっくりと書ける状況にありません。そこで、NPOを支援する中間NPOの協力も仰ぎ、事務局スタッフが仙台や郡山、遠野などに足を運んで、NPOの応募のサポートも行いました。

――応募状況は。

 ①5月末 ②6月末 ③7月末と3回の締め切りを設けたところ、 応募数は、①152 ②110③366件で、計628件に上りました。当初考えていたよりもかなり多い数で、反響の大きさを感じています。助成案件数と金額は、①28件/約3億8,300万円 ②22件/2億7,300万円でした。(③については、9月下旬に発表予定)

――選定作業はいかがでしたか。

 社外の有識者・研究者らに選んでいただくのですが、今回は応募数が多かったことに加え、例年とは別の審査基準も設けなければならなかったため、大変な作業になりました。しかし、2005年から6年間にわたり活動を続けてきた経験や実績があったことや、助成先のNPO・大学の人たちを集めた交流会を年1回開催するなどネットワークを築いてきたこともあり、新しいテーマにも対応することができたと思います。

助成後も現場の状況を見ながらサポート

――朝日新聞朝刊に広告を掲載しましたが、その狙いは。

 5月5日に募集告知を行い、7月30日と9月4日には助成が決まった活動や研究の内容を報告する紙面を掲載しました。2005年の環境基金立ち上げ当初は、認知を広げるべく新聞広告で募集していましたが、最近ではホームページのみでした。しかし今回は、募集開始が震災直後でインターネットを活用できない団体もあると思われたことや、より多くの方に基金の存在を知ってもらうために、幅広く広報できる全国紙の朝日新聞に出稿しました。予想を上回る応募数があり、新聞広告の効果の大きさを感じました。

2011年5月5日付 朝刊 三井物産 2011年5月5日付 朝刊
2011年7月25日付 朝刊 三井物産 2011年7月25日付 朝刊
2011年9月4日付 朝刊 三井物産 2011年9月4日付 朝刊

――今後の活動について聞かせてください。

 これまでは、助成期間終了時に「活動がどの程度成果があったのか」「課題は何か」といった評価を行い、各団体にフィードバックしてきました。今回はさらに進捗(しんちょく)状況をモニタリングするなどして、課題がある場合にはサポートする態勢も整えたいと思います。被災地の状況は東京にいるだけではわかりません。「助成して終わり」ではなく、なるべく現場に足を運び、現状を私たちの目で確認しながら、状況に応じた支援を続けていきたいと思っています。

 また当社では、本業を通じた様々な被災地支援プログラムも進めています。大きな成果があった活動や研究の中には、今後、本業の支援プログラムへ移行することで、さらに大きく展開できるケースもあるかもしれません。そのためにも、私たちはしっかりとサポートしていきたいと考えています。