ソニーは、9月15日に名古屋で開催された「国際生物多様性フォーラム」に特別協賛し、同社の生物多様性への取り組みを来場者に向けて伝えた。また生物多様性問題についての編集特集シリーズ「いきものがたり」の紙面に、ソニーの中長期的な環境計画「Road to Zero」について多面的に紹介するシリーズ広告を掲載している。環境推進センター 環境戦略部 担当部長の神保精一氏に聞いた。
「環境負荷ゼロ」を目指すソニーの取り組みを紹介
――「国際生物多様性フォーラム」は、基調講演に環境NGO「コンサベーション・インターナショナル」会長で著名な霊長類学者のラッセル・ミッターマイヤー氏を迎え、里山、森林、サンゴの保護など多様なテーマについてパネリストたちが意見を述べ合う場となりました。特別協賛企業としてかかわった経緯は。
本フォーラムは、開催のほぼ1カ月後に、COP10が同じ会場(名古屋国際会議場)で開催されるタイミングで開かれ、生活者レベルで生物多様性への意識喚起を目指したものでした。地域を盛り上げ、さらにそれを全国に発信しようという新聞社の姿勢に共感しましたし、内容も非常に価値のあるものでした。
企業活動は、水や木材、植物など、さまざまな生態系を利用して成り立っているものです。同時に、私たちの活動が生態系に影響を及ぼします。生物多様性の保全は持続的な企業活動にとって不可欠なものという私たちの認識が、今回の特別協賛の大きな背景です。
当社は今年4月に、新しい環境計画「Road to Zero」を発表しました。これは2050年までにグループの事業活動および製品のライフサイクルを通して、「環境負荷ゼロ」を達成するという長期的ビジョンを掲げたものです。その内容を直接社会に伝える場としても、環境の専門家やビジネスピープルに限らない一般生活者、自治体の関係者といった様々なステークホルダーが参加する今回のフォーラムはまたとない機会でした。
――フォーラムでは、どのようなメッセージを発信しましたか。
当日は環境推進センター長の高松和子が、二つのことについてお話をさせていただきました。一つは、「Road to Zero」の考え方や長期的なロードマップについてです。この環境計画は、気候変動だけに留まらず、資源循環、化学物質管理、生物多様性を加えた四つの視点をもって総合的に「環境負荷ゼロ」を実現していこうというものです。例えば「製品1台あたりの年間消費電力量を2015年度までに30%削減する(2008年度比)」「製品1台あたりの質量を2015年度までに10%減らすこと(2008年度比)」など、技術開発から製品のリサイクルまで、商品のライフサイクルのステージごとに目標を定めました。
二つ目は、フォーラムのテーマである生物多様性に関するソニーの具体的な取り組みです。例えばアメリカにおけるCD等の生産拠点であるピットマン工場では、2006年から敷地の一部を自然保護区にする協定をニュージャージー州と結び、約4万8,500平方メートルの地域を野生生物のために開放しています。ここでは最近、コヨーテの生息も確認されました。
また愛知県額田郡幸田町にある製造事業所「ソニーイーエムシーエス東海テック」幸田サイトは、1972年の創立当初から当社のファウンダーのひとりである盛田昭夫の理念の下に緑地の造成や拡大を推進しています。1998年からは工場敷地内の自然林を「ソニーの森」として整備し、展望台やアスレチックなどを設置した、地域の方々の憩いの場になっています。
一般生活者層に、環境活動を伝える重要性
――新聞社が主催するフォーラムのような場を、ソニーの環境広報活動においてどのように位置づけていますか。
環境コミュニケーションの一番の特徴は、いろいろなステークホルダーとコミュニケーションをとることが重要ということです。これまで様々なメディアや手法を利用してきた中で、それぞれのステークホルダーによってソニーの環境活動に対する評価が異なることが分かりました。特にポイントは、環境に対する意識はあっても主体的にウェブや環境報告書などの情報にアクセスするまではいかない、ごく一般的な生活者層です。
いわゆる白物家電をもたないソニーの場合、独自の製品でも環境活動をコミュニケーションしていくものの、企業活動全般としての環境活動をお伝えすることも大切です。その際に新聞メディア、あるいはそれが仲介者となって生活者と企業を直接つなぐフォーラムのような場が有効なツールのひとつだと考えています。
――採録記事の掲載と合わせて、生物多様性の編集特集「いきものがたり」の記事横にシリーズ広告を展開されています。
このシリーズ広告は、製品ライフサイクル全体からソニーの環境活動を紹介し、「Road to Zero」について知っていただくためのキャンペーン展開です。先に「国際生物多様性フォーラム」の採録が掲載されたことで、スムーズなスタートが切れました。
しっかりとした取材に基づく生物多様性の記事の横に掲載されることで、環境に関心をお持ちの読者に習慣的にご覧いただける企画を目指しています。ただし、あまり文字を多くせず、誰もが気軽に読めるようなクリエーティブを目指しました。どのくらいの文字量のバランスが適切か、スタート前はかなり議論がありましたが、高松センター長が「多くの方にソニーの取り組みを知っていただくことがまず大切」と判断し、写真を大きく扱い、キャッチコピーで目を引くといった親しみやすい紙面になりました。
フォーラムへの特別協賛を通じ、幅広い世代での環境への高い意識を肌で感じることができたのも貴重な財産です。例えば休憩時間に、私たちが用意した何の飾りもない報告用のパネルの前までいらして、熱心にメモを取られている方もいらっしゃいました。そういう姿を間近で見ますと、私たちがやるべきことへの思いを新たにします。
編集特集「いきものがたり」に、シリーズで広告掲載