ドイツの名門オーケストラ「ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団」が今年3月、東京、大阪を始めとした全国5カ所で、コンサートを開催した。この日本公演(朝日新聞社主催)を特別協賛したBMWグループジャパンのBMWマーケティングディビジョン マーケティング・コミュニケーション&イベント ゼネラルマネージャーの権田真司氏に聞いた。
知的、ダイナミック、イノベーティブ……
さらに強いブランド育成を目指す
――BMWグループは、企業経営において、文化活動や文化事業へのスポンサー活動を非常に重視しているそうですね。
社会的な存在である企業としてはもちろん、BMWのブランドを育成するというマーケティングの意味でも文化活動や文化事業へのスポンサー活動は重要ととらえ、取り組んできました。私の立場からは、主にマーケティング的な視点からお話しさせていただきます。
BMWブランドは、ダイナミックでスポーティーな車のイメージから、アクティブにチャレンジをしているような人たち、また、知的で文化的な人たちに訴求していきたい。ですから、そうした人たちが興味を抱くような文化事業やスポーツなどに協賛することは、結果としてブランドを強くするものと考えています。その核になるのが、「アート」「技術とデザイン」「音楽」の3つです。
「アート」は、車体に現代アートの巨匠がペインティングする「BMWアートカーコレクション」を1975年にスタートし、現在までに17台の作品が生まれています。コレクション30周年を迎えた2006年からアートカーの世界巡業も始め、08年には東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで展示会を開きました。「技術とデザイン」については、ドイツ・ミュンヘンの本社に、BMWの歴史と技術力が分かるミュージアムを併設しています。08年にはお客さまに納車するデリバリーセンターを「BMW Welt」(ビー・エム・ダブリュー・ヴェルト、「世界」の意)としてリニューアルし、BMWの最新の技術などを体感できるような展示をしています。建物自体も著名な建築家の設計で、技術とデザインが高度に融合している様をお客さまにアピールしています。
そして「音楽」ですが、BMW発祥の地、ドイツは、クラシック音楽の大国でもあります。クラシックコンサートや、BMWをはじめとするプレミアムカーのオーナーの趣味として上位に上がるジャズ関連を中心に、協賛活動を行っています。
――3月の「ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団」日本公演を特別協賛されました。経緯、概要などを聞かせてください。
ミュンヘンはBMW発祥の地ということもあって、すでに5回ほど協賛を続けてきました。こうしたクラシックコンサートは、BMWのお客様と同じように知的で社会的地位が高く、裕福な来場者が多いので、協賛することでそういった方々にBMWのブランドイメージを訴求しながら、マーケティング的には販売につなげたい、というねらいがあります。さらに今回のスポンサー活動は、昨年3月にフルモデルチェンジした「BMW7シリーズ」を、発売1年後にフォローする意味合いもありました。
当日販売したプログラムにはこの7シリーズの広告を載せたほか、実物の車をコンサート会場に展示しました。また、ミュンヘン・フィルとしては日本で初めて弦楽四重奏を組んでいただき、弊社1階にあるBMW Group Studio(ビー・エム・ダブリュー・グループ・ステュディオ)で2回、プライベートなコンサートを開催。コンサートチケットと弦楽四重奏コンサートの招待券、指揮をとったティーレマン氏のサイン入りDVDをプレゼントするキャンペーンを、HP上で展開しました。
50台以上の成約に結びつく
新聞社主催事業への協賛で新たなネットワークづくり
――反響はいかがでしたか。
コンサート会場で音楽や車に関するアンケートをしたところ、多くの来場者に回答していただき、興味、関心の高さを感じました。ホームページでのプレゼントキャンペーンでは、コンサートチケットおよびBMW Group Studio(ビー・エム・ダブリュー・グループ・ステュディオ)でのコンサートに各5千件、計1万件もの応募があり、その反響に驚いています。今年でティーレマン氏の契約が切れるので、ミュンヘン・ フィルとティーレマン氏との組み合わせで来日するのが今回で最後、ということも人気の後押しになったのかもしれません。
そして、実はコンサート来場者や応募者の中から50台以上の売り上げにつながったのです。すべてが7シリーズではありませんが、マーケティング的に見ても非常に高い効果があったと手応えを感じています。
――新聞社が主催する文化事業について、どのような印象をお持ちですか。
企業が主催や協賛をすると、ややもすれば世間には営利目的の印象を与えがちですが、マスコミである新聞社が主催することで、そうした印象はかなり中和されるのではないかと思います。また、マスコミは様々なネットワークを持っています。私たちだとどうしても自動車関係のネットワークに偏りがちで、なかなか広がらないのですが、新聞社が主催する文化事業に協賛することで、これまでBMWとしては接点がとれなかったような業界の方々にネットワークを広げることができる。そういったネットワークを共有させていただけることは、スポンサーする側にとって非常にメリットがあると感じています。
さらに今回の協賛では、朝日新聞に掲載されたミュンヘン・フィルの特集記事の中に、BMWの紹介を入れていただきました。通常、公共性を重んじる新聞記事でスポンサー企業を取り上げるのは難しいと思うのですが、当社はミュンヘンが発祥ということで関連性がつきやすかったのかな、と。広告は企業からの一方的な情報発信ですが、記事だと客観性や信頼性が増し、読者に届きやすい。とてもありがたかったです。
――文化活動について、今後の展望をお聞かせください。
グループ全体としては、ドイツの本社の方針にのっとった形で、冒頭でふれた「アート」「技術とデザイン」「音楽」のジャンルにおいて、スポンサーやサポート活動を進めていく考えです。また、弊社にあるBMW Group Studio(ビー・エム・ダブリュー・グループ・ステュディオ)を活用し、車の展示だけではない情報発信をしていければと思っています。