今年4月にキリンビバレッジが発売を開始した「大人のキリンレモン」の売り上げが好調だ。「糖類ゼロ」と「回復系アミノ酸オルニチン配合」を特徴とし、その名の通り大人にうれしい品質が支持されている。マーケティング本部 マーケティング部 企画担当兼新商品担当 部長代理の真下淳子氏に聞いた。
グループ横断の健康プロジェクト「キリン プラス-アイ」の第一弾商品
――炭酸飲料市場の概況は。
飲料マーケット全体を見ると前年比マイナスともいえる市場環境のなかで、炭酸飲料は例外的に伸びていて、当社商品も前年比2ケタ程度伸長しています。その要因として考えられるのは、数年前よりゼロ系の炭酸飲料が各社から発売され、大人層の需要が広がっていること。さらに、時代背景もあると思います。ここ数年は不況もあって、ミネラルウオーターやお茶など、水道水で代用できたり家で作れる飲料は買い控えの傾向が進み、逆に自分で作れない炭酸飲料へのニーズは増しています。さらに、時代背景として不況で何かとストレスを抱えやすい中、炭酸のリフレッシュ感が好まれるということもあると思います。
――「大人のキリンレモン」の開発の経緯、オルニチンに着目した理由は。
今年4月、キリングループは、健康をプラスした商品をグループ横断で提案していく健康プロジェクト「キリン プラス-アイ」を開始しました。その第一弾として注目したのが、「回復系アミノ酸オルニチン」です。オルニチンは、グループ会社の協和発酵バイオが商品化に成功したアミノ酸で、体の中でさまざまな働きをすることが確認されています。この成分を配合した商品として、キリンビールはノンアルコール・ビールテイスト飲料、キリン協和フーズはおかゆ、小岩井乳業はヨーグルト、そして当社は、ウコン飲料と、大人ターゲットの炭酸飲料を開発しました。
――商品の内容、ネーミング、パッケージなど、開発の工夫点は。
「日常的に飲める」「健康的に見える」といったことにポイントを置き、さまざまな飲料カテゴリーでの商品化を検討した中で、透明炭酸に着目。味覚開発などで試行錯誤を重ね、開発に2年近くを要しました。健康成分を起点とした商品なので、当初は「オルニチン」という素材名を使ったネーミングも検討していましたが、“大人設計”であることをストレートに表現したネーミングとして、ターゲットに据えていた団塊ジュニア世代になじみが深く「子供の頃からおいしく飲んでいた」との声も多いロングセラーブランドを活用し、「大人のキリンレモン」としました。
パッケージも、原色づかいの多かったこれまでの炭酸飲料とは一線を画し、大人っぽさや健康的でナチュラルな雰囲気を打ち出しました。また当社では今回の発売を契機に、炭酸飲料全体の活動テーマとして健康価値の付加を掲げ、「からだよろこぶ。元気炭酸」のスローガンのもと商品展開しています。「大人のキリンレモン」をはじめ、「キリンレモン」や「Mets」のキャップにも「元気炭酸」のキャッチコピーを明示しています。
ヒットにつながるネーミングの妙
――コミュニケーション戦略は。
まず、新聞広告で「キリン プラス-アイ」の商品ラインアップを紹介。グループ横断の健康プロジェクトが始まったことを幅広い層にアピールしました。商品のイメージキャラクターにはEXILEのTAKAHIROさん、MAKIDAIさんを起用し、テレビCM、交通広告、駅広告などを展開。店頭では、「キリン プラス-アイ」の商品をまとめた売り場を設けたり、他社商品も含めて「オルニチン」に着目した商品を集めたりして紹介しました。また、グラスやクリアファイルといったオリジナルグッズを作り、販促キャンペーンも非常に好評でした。
――新聞広告の位置づけ、期待することは。
情報を正確に伝えたい時や、企業の意志や宣言を広く知らしめるのに適したメディアだと思います。また、流通関係者や「大人」の読者を獲得しているので、特に今回のような健康系の商品のアピールには向いていたと思います。
――購買層は。
ターゲットの30-40代男性の支持を得たのをはじめ、女性の支持も高く量販店でも非常に好評です。それだけでなく炭酸飲料が好きな中高生や20代にも広く受け入れられていて、当初の想定以上に購買層は広がっています。
――ヒットの理由をどのように分析されていますか。
この商品に関しては、「大人の」というフレーズに反応した消費者が多く、ネーミングが奏功したと考えています。健康ブームの中で「オルニチン効果」に注目が集まり、新聞、テレビ、雑誌などさまざまなメディアで取りあげられたことも好材料となりました。何より、「飲んでみたらおいしかった」「大人味の健康炭酸飲料ができてうれしい」「炭酸飲料なのにぬるくなってもおいしい」など、味の支持をいただけたことが大きかったですね。ブログをはじめ口コミの盛り上がりもチェックしていましたが、「久々に炭酸を飲んでみたらおいしかった」「はまっている」といった書き込みが数々見られました。発売後、「大人の」で始まる商品が各社から発売されるようになり、ちょっとした「大人ブーム」の火付け役になれたこともうれしかったです。
――今後の展望は。
炭酸飲料は夏がもっとも動く時期なので、夏のプロモーションを充実させていくつもりです。また、健康商品や大人向け商品のさらなる可能性も含めて、成功体験を次の商品開発に生かしていきたいと考えています。