三菱電機は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」プロジェクトを中核に、環境関連の広範な技術・製品を紹介した二連版30段の企業広告を、3月21日付朝日新聞朝刊に掲載した。宣伝部次長兼コーポレートコミュニケーショングループ マネージャー兼 B to Cコミュニケーショングループ マネージャーの丸山亨氏に聞いた。
観測データが示す「事実」から、読者が自分で考える広告
――広告出稿の背景は。
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)は、環境省・国立環境研究所・宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で推進するプロジェクトで、 2009年1月23日に打ち上げ、以来、地球の周りを巡りながら、温室効果ガスの濃度分布を宇宙から観測しています。三菱電機は、宇宙衛星に関してこれまでに300機以上の打ち上げに携わった実績があり、このプロジェクトにもさまざまな技術で貢献させていただいています。
三菱電機は昨年、「家庭から宇宙まで、エコチェンジ。」という環境ステートメントを策定しました。弊社の環境活動の独自性は、家庭からオフィス、工場、社会インフラ、そして宇宙と、幅広い事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献しているということです。中でも宇宙事業はその象徴的な取り組みで、最新の解析結果(2009年6月~7月)が発表されるタイミングに合わせ、我々の環境対策への取り組みを広く社会に伝えたいと思いました。
――広告紙面では30段のワイドなスペースを生かし、地球の陸域全体の二酸化炭素濃度の分布状況が一目で分かるマップを大きく取りあげました。
この広告は、三菱電機の環境技術力を伝える広告であると同時に、広告をご覧になった読者一人ひとりが、温暖化問題など地球環境全般について自由に考えていただける構成にしています。マップは当局が公表したデータをそのまま掲載したもので、それに対する当社の解釈や意見はそこに加えていません。
また同時に、「いぶき」の活動が環境問題にどう貢献しているかを分かりやすく伝える紙面にしたいとも思いました。以前であれば「宇宙の仕事をしている」ということは、そのまま高い技術力がある企業というイメージに結びつきました。ところが最近は、それだけでは生活者へのインパクトは少ないという意見もあります。「いぶき」プロジェクトの意義を社会に伝え、特に若い世代に宇宙への関心をもっていただくことが、三菱電機の技術アピールにもつながります。そのために今回は宇宙衛星そのものを大きく扱うより、衛星が私たちに伝えてくる情報の価値を伝えることにしました。
新聞の説得力と信頼感を生かし、ニュースを広告にする
――紙面の下スペースでは、家庭用エアコンや太陽光システム、省エネに貢献するパワーデバイス(電力用半導体)など、さまざまな事業が紹介されています。
宇宙事業は三菱電機の真骨頂といえる部門ですが、その他の分野でも幅広く、かつトップレベルの環境性能を誇る製品があることを具体的にお伝えしています。例えばパワーデバイスは電力の効率利用の重要なカギを握る製品で、当社がエアコンから産業系まで、相当な強みをもつ分野です。太陽光システムも現在多くの企業が参入している分野ですが、当社の製品は熱電力変換効率に優れ、これも環境関連事業では代表選手のひとつです。
――広告媒体として新聞を使われた理由は。
新聞のメディア特性とは、説得力と信頼感だと以前から私は思っています。三菱電機が自信をもって世の中のお役にたてる商品や技術を紙面で紹介することで、社会から私たちへの理解や信頼を得られます。
特に今回の広告は、当社と朝日新聞とのコラボレーションがあってこそ実現したものだと思っています。国の公的な観測データを広告に使わせていただくためには、この企画のもつ社会性、公共性を各方面にご理解いただくことが必要でした。また、観測データのニュース性を生かすには、データの発表から間を置かずに広告に掲載して伝えることが必要でした。それが共に可能になったのは、朝日新聞とうまく連携できたからだと思っています。
――反響をどう受け止めていますか。
掲載後に行ったアンケートでは、「すごい技術ですね」「改めて地球環境について考えさせられました」といった好意的なご意見ばかりで、マイナスの評価は皆無でした。掲載時期が春休み中ということもあり、親子で紙面を見ていただけたご家族も多かったのではと思います。読者が観測データを受け止めて、ご自身で考えていただくという意味で、これは読者の知的関心に期待した広告でもあり、そういう意味でも情報リテラシーの高い新聞読者にフィットした企画でした。
当社が技術広告を展開する理由には、炊飯器やエアコンなど生活者の身近にある三菱電機の製品に対する信頼感を高める目的もあります。三菱電機と聞いて、お客様に思い浮かぶイメージをより豊かに、明確にするという意味で、「人工衛星の技術に携わっている企業」といった独自性を伝えることは、商品広告だけでは打ち出せない差別化になります。
朝日新聞にはこれまでも大きな紙面スペースを生かした企業広告を、先進技術という視点から掲載してきましたが、今後は当社の環境への取り組みを知っていだたく活動を一歩進め、例えば「この製品はCO2を何%削減できます」といったような、お客様の利益に落とし込んだコミュニケーションを深めたいと思います。そうした技術に関するネタは、まだまだたくさんありますから。
◇媒体資料「朝日新聞にみる環境広告」はこちらから:
http://adv.asahi.com/modules/media_kit/index.php/kankyo_tokyo.html