三菱商事は2009年1月から2010年2月にわたり、企業広告「わたしたちの原点。」シリーズを「朝日新聞グローブ(GLOBE)」6面に掲載した。広報部ブランドコミュニケーションチーム 広告・制作企画担当主任の竹田玲子氏に広告出稿の狙いなどを聞いた。
原点を見つめ直すメッセージを社内外に
――「わたしたちの原点。」シリーズは、「GLOBE」に広告スペースができた当初から続く「レギュラー広告」のひとつです。出稿の背景を教えてください。
理由は大きく2つあります。まずは、朝日新聞が新聞メディアとして新しい挑戦に取り組んだことへの共感です。三菱商事としても、リスクを恐れず挑戦する姿勢を常に大事にしており、弊社社長の小島も「チャレンジ精神は商社の原点」だと日頃から社員に話しています。本シリーズ広告では、このチャレンジ精神を含めた、弊社の原点にある想(おも)いや姿勢をうたっており、朝日新聞の新たな挑戦である「GLOBE」を活用することで、効果的なメッセージ発信につながるのではと考えました。
もうひとつは、まさに「GLOBE」という名前が示すように、世界の現場で起こっていることを臨場感豊かに伝えるメディアだということです。海外のニュースをただ報じるだけでなく、世界と日本をつなぐ様々な問題を取り上げ、明日につながる視点を養う手助けにもなっています。そこに総合商社である我々と一致した想いを感じました。
――第5号まで掲載が続いたシリーズ1は、青空や子ども、動物など親しみやすいビジュアルを用い、企業理念をやわらかいキャッチコピーに込めた、さわやかな印象のある表現でした。
シリーズの開始当時は世界的な不況の真っただ中で、社会全体にも、弊社の現場にも閉塞(へいそく)感が生まれていた時期でした。改めて三菱商事で働く社員一人ひとりが原点を見つめ直し、アイデンティティーを取り戻すきっかけになるメッセージ、そしてとかく後ろ向きの発想になりがちだった社会に対しても、「元気」や「希望」を感じていただけるような広告を発信していこうと考えました。
読者の反響も好評で、特に犬の写真を使った第4弾については「メッセージに勇気づけられた」「部屋に飾りたいのでポスターはないか」といった声をいただきました。社員の声としては、「センスがいい」「いまの三菱商事に必要な広告だ」という評価がある一方で、「理念だけでなく、より具体的な取り組みを紹介してもいいのではないか」という意見もありました。
「わたしたちの原点。」シリーズ1
「GLOBE」ブランドの多面的な展開に期待
――そういった社内の意見を反映して次の段階に進んだのが、三菱商事の具体的な取り組みを紹介した「わたしたちの原点。」のシリーズ2ですね。
シリーズ2では、「事業を通じた環境配慮や地域貢献」をテーマとし、ますます重要性が高まる、再生可能エネルギーへの取り組みなどを中心に構成しました。また、総合商社である弊社は、あらゆる産業分野でグローバルに活動していますので、世界のなるべく多様な地域を取り上げました。ビジュアルの面では、弊社の社員だけではなく、現場のスタッフや事業のパートナー、地域の人々、子どもたちの笑顔やいきいきとした姿を紹介することにこだわりました。私たちの仕事は、パートナーとのチームワークがなくては成り立たないものですし、地域の人々の笑顔が、私たちの仕事の原動力となるからです。
またシリーズ2では、より幅広い層の方々にリーチできるよう、弊社のウェブサイトとの連動も重視しました。紙面広告では毎回、2つの取り組みをジグソーパズルのピースのようなデザインで紹介しましたが、ウェブではそれらのピースが組み合わさって地球のカタチとなり、それぞれの取り組みをムービーやスライドを使って、より詳しく紹介しています。
「わたしたちの原点。」シリーズ2
――これまでの広告展開を通じて、「GLOBE」という媒体をどう評価していますか。
「GLOBE」は、オールカラーで発色の良い紙を使用していますし、斬新な紙面デザインとこれまでにない広告スペースは、弊社も含め、広告のクリエーティブがとても生かされる紙面だと感じています。
また、弊社としては、今後も最適かつ多様なチャネルを組み合わせることで効果的なコミュニケーションを図っていきたいと考えています。「GLOBE」も、例えばウェブサイトをさらに充実させたり、イベントなどを組み合わせたり、「GLOBE」ブランドを多面的に展開していけば、朝日新聞の読者以外のファンも増え、広告コミュニケーションとしての展開の可能性も大きく広がるのではないでしょうか。そんな潜在的な力を持ったメディアだと思っています。